97話 ギアの処遇と嫁探しの再開
交渉も済んだ。
残る問題は……
ライルが待機している軍へ戻ると、すぐに支払いの準備が始まった。
村長ジャックは負傷者とその家族、そして死者の遺族を広場に集めていく。
その間――
オーガ達は、軍人たちに食べ物や土産を売りつけていた。
「……たくましい奴らだな」
命の危機の直後でも商売は忘れないらしい。
これぐらい図太くないとやってけない世界なんだろう。
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やがて、軍からの賠償金支払いが滞りなく完了した。
「間違いないな?
よし、ミロース」
俺が確認すると、ミロースが静かに頷き、服を脱ぎ始めた。
オーガ達もライルも「え?」という顔で見ている。
ミロースの体が光に包まれ――
その姿が巨大な白い影へと変わっていく。
「……ほ、ホワイトドラゴン……!
暴龍ヴァルリオと並び称される伝説の竜……!」
ライルが震える声で呟いた。
ヴァル?
それは知らんけど、ミロースってそんな有名だったのか?
「ライル、皆殺しにされなくて良かったな」
俺は笑って言った。
ミロースは、地面に固定されていたギアの柱を片手で引き抜き、
軍人たちの近くへ「ドン!」と置いた。
「ギア様!」
ライルが駆け寄り、縄を切り、猿轡を外す。
「ライル!
奴らを殺せ!
皆殺しだ!!」
猿轡が外されたとたんにギアが叫んだ。
本当にしょうがない奴だ。
ライルはギアの言葉を無視して、淡々と目隠しを外す。
暗闇から解き放たれた眩しさから慣れてきたギアの視界に、巨大な白い竜――ミロースが映り、
「な、なんで?
……伝説のホワイトドラゴンが……こんな場所に……?」
ギアは混乱し、震えた。
「ギア様。我々の敗北です。
ですが、この村に戦略的価値はありません。
意味のないこの地のことは忘れて、本来の目的地へ急ぎましょう」
ライルの言葉に、ギアは押し黙る。
ただ、俺に向ける憎悪の視線だけは変わらない。
うん、危険だなコイツ。
後でどうにかするか?
「ライル、ちょっといいか?」
俺はライルを呼んだ。
「どうした?」
不満そうに歩いてくるが、ちゃんと来るあたり律儀だ。
「ギナの事なんだけど……アイツ、もう死んでる」
俺は小声で耳打ちした。
「な……! お前……!」
ライルの目が大きく見開かれる。
そりゃ、ギナに合うために向かってるのに死んでるって言われたら混乱するよな。
でも、本当に死んでるし……だから、
「で、ギナを殺したの、お前らの手柄にして帰れ」
「……?」
ライルが理解できず固まる。
ギナが死んだってのも消化しきれてないのに、手柄にして帰れって言われても頭が追い付かないんだろう。
そうは思うけど、こっちにも都合があるんだよ。
「チャングム王国と俺、ちょっと関係あるからさ。
攻められると困るんだよ」
前川達に迷惑かけたくない。
ライルは腕を組み考え込んだ。
悪いとは思うんだけど、ライルはちゃんと話が出来る奴だから死んでほしくない。
「でないと、お前ら全滅させないといけなくなるけど……
俺もそれは嫌なんだよなぁ」
俺はライルの肩に手を回して言った。
ライルは振り返りギアをチラッと見た。
「しかし、ギア様にはなんて……?
あの人、ギナ様死んでるそうですって言っても納得しないぞ」
ライルがもう一度ギアを見て困った顔をする。
だが、納得しないのは想定済みだ。
「だから、殺るんだよ。アイツ」
俺はギアを指差す。
仲間を守るためなら、どうってことない。
俺が手を汚せばいい。それだけの事だ。
ギアはまだ俺を睨んでいる。
その目は、まるで呪い。
目?
やべっ!
ギナの目が危険だったことを思い出し、ギアの目を見ない事にした。
アイツも能力を持っているのか知らんが、兄弟だし、用心に越したことはない。
……視線が合わなくて良かったが、本当に厄介だな。
「うん。
……やっぱ危険」
禍根を残せば、絶対に災いが起こる。
俺たち軽キャンクラブなら余裕で対処できるが、知り合いや関係ない人が巻き添えやターゲットになったら守り切れない。
「いや、しかし……」
ライルが悩む。
そりゃそうだ。
あんなのでも、一応同胞で上司だろうからな。
俺はニッコリ笑った。
「じゃあ殺さないから、置いていけ。
俺達がギアを預かる。
国には「戦いの中でギアとギナが相討ちで死んだ」って言っとけ。
それなら、お前も気分的に楽だろ?
実際、こっちも殺しちゃうのは気分良くないんだ。
だから、殺さないで禍根も残さないで済むなら、それが一番なんだよ。
よし。
決まりな!」
強引だが、そう言ってライルの胸をポンポンと叩いた。
「……」
ライルからの反論は、ない。
それが、返事だ。
軍人が簡単に仲間を裏切れないだろうから、俺の提案に賛同するような事は言えないってことだ。
こっちがくみ取ってやればいい。
ってことで、交渉成立な。
俺はギアに向かって手を振る。
「おーい、ギアー!」
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ライルと軍隊は村を離れ、国へ向かって進んでいった。
なんだかんだ言って、ライルも魔族。
出世のチャンスだと思ったのだろう。
ただ、キャスカの魔法でギナは骨も残ってないので証拠になるようなモノが何一つない。
なので、ギアの髪の毛を少し切ったモノをライルに証拠として使ってくれと渡した。
本国の人間に納得させれるかどうかは、ライルの腕の見せ所だろう。
で、ギアは置いていかれた。
「行ったな」
俺が呟くと、
「そうですね」
ウィズが答える。
「大規模な戦いが起きなくてよかったな」
ミロースの言葉に俺たちは本当にそうだと思った。
「ちょっと、コイツどうするんだ」
感傷的になっていた俺たちに向かって村長のジャックが簀巻きのギアを指差して……なんだか怒ってないか?
いや。
そりゃこんなモン置いて行かれても困るだろうから、しょうがないか。
「ちゃんと持って帰りますから、心配しないで大丈夫です。
それに約束したんで、殺さないです」
俺は嫌そうに言った。
「殺すか殺さんか、そんな事は、興味ないから好きにしたらいい。
村に投棄されても困るから、ちゃんと持って帰ってくれよ」
不法投棄するような輩に見えるか、この俺が!
ありえない、バカバカしい。
「それより村長、このウィズに合う娘さん、この村にいませんかね?」
俺が爽やかに笑うと――
「いや、お前、頭おかしいんじゃないの?
こんなんあった後に女紹介しろとか……」
「……そうですよね」
村長のジャックに言われて、ウィズも納得したように、しょんぼりと返事してた。
絶対に今のタイミングで聞くことでは無かった。
ウィズには申し訳ない事をしてしまったが、済んだ事だ、しょうがない。
「ウィズ、今回は残念だったけど、次は必ず嫁さん見つけてやるからな」
俺はウィズを慰めた。
「さあて。
ギアもなんとかしないといけない。
ウィズの嫁探しも継続。
……なかなか忙しいな」
そんなことを考えている最中――
……その瞬間、俺の脳内で何かが繋がった。
賢い俺は、ふと閃いたのだ。
ニタァァ~~
俺はギアを見て、ニッコリ笑う。
ギアを預かったが、不法投棄もできないのでどうするか悩んだ俺だったが、そこは、読者からひらめきの天才と称賛される俺、ちゃんと思いつきましたよ!




