第94話 ウィズ、地獄のモテ改造計画
ここで決めてください、ウィズさん。
早く帰りたいし、俺たちも出来るだけ協力しようぜ、ミロース!
オーガの村を、ぶらぶら歩きながら、年頃の娘さんをチェックする。
「ウィズどうだ? 気に入った娘さんいたか?」
俺はニコニコしながら聞いた。
「いや、突然すぎて……」
キョロキョロしながら、ウィズが答える。
村の中、女性をジロジロ見て歩く俺とウィズ。
「あの娘さんは?」
「あの娘さんもなかなか」
ウロウロ、ウロウロ。
ウロウロ、ウロウロ。
「あの娘さんもいいね」
「ムラムラきますね」
ウロウロ、ウロウロ。
ウロウロ、ウロウロ。
完全に不審者であった。
「ヒロシ、休憩しないか?」
村民の視線に耐えきれなくなったミロースが言った。
「そう?
それじゃ……
あそこでいいな。
ウィズ、ミロース、あの店に入ろう」
喉が乾いていた事もあり、俺達は近くの食堂に入った。
店内は、時間帯のせいか俺達以外に客がいない。
外の様子を伺える窓辺の席に着き、よく分からない地酒を頼む。
「ウィズは外を見て、気に入った娘がいたら教えろ」
ウィズに任務を与え、俺とミロースは『ウィズの嫁さん獲得作戦会議』を開く。
「では会議を始めるが……
ウィズは顔は悪くないよな? むしろ良い方だろ?」
「でも、バカだぞ」
ミロース、辛辣だな。
「まあ、そうなんだが……
うーん。
それなら、悪いところが気にならないくらい良いところを伸ばすのはどうだ?」
「長所を伸ばすのか?
いいんじゃないか」
「よし、決まりだ」
めんどくさいし、会議終了!
俺は地酒を一気に飲み干し、二人を連れて店を出た。
向かう先は――
服屋!
ウィズのカッコ良さを伸ばす為に、見た目を良くする。
バァーーン!
俺は店のドアを勢いよく開けた。
「邪魔するぜ!
……なっ!」
ヒィッ!
立派な口髭の厳つい鬼がそこにいた。
「す、すいません」
俺はちびりそうになったが、必死に踏みとどまった。
「あら、お客さん?
人間のお客さんって、めずらしいわね」
厳つい鬼さんは、見た目とは裏腹に気さくに話しかけてくれた。
いきなり殴られる事もなさそうだし、大丈夫そうだ。
普通の店員さんのようで安心した。
それじゃ、さっさと用件を済ましてしまおう。
「モテる服をくれ!」
俺の注文に、鬼さんの目の色が変わった。
「凄いアバウトな要求ね。
……こちらのセンスでって事よね?
わかったわ。私にまかせなさい!」
「え?」
俺を奥へとグイグイ引っ張っていこうとしやがる!
怖いだろう!
「いや、俺じゃないって!
あっち、あっちの男です」
何されるか分からないし、力が強いし。
俺は慌ててウィズを指差す。
「あ~ら、ごめんなさい。
あなた、可愛いから」
俺にウインクしたけど、コイツ何考えてるんだ?
「……そこの彼ね」
鬼さんがウィズを見た。
「そう。
ウィズをかっこよくして、モテモテ男に頼むぞ」
「やってみるわ」
ウィズを連れて鬼さんは奥へ消えた。
「……着替えだよな?」
しばらくして着替えたウィズが戻ってきた。
いや、服屋だから間違いでは無いのだが、ホッとした。
貴族のような出で立ち……か。
「うん、悪くない」
確かに悪くないのだが……ただ、
「少し、インパクトにかけるわね」
基本裸のミロースが指摘した。
そう、そこだ。
「ミロースが言うように、俺も思った。
清潔感もあるし、大人っぽくて良いんだけどな。
……ウィズらしさが消えた感があるよな」
俺も続けて感想を述べた。
俺たち二人に言われて、鬼さんの表情が変わったのが分かる。
「二人とも……
中々、厳しいわね。
……俄然やる気が出たわ!!」
鬼さんのハートに火が付いた。
「ミロース!
俺たちも出来るだけ協力しようぜ!」
「わかった!
かっこよくなるように頑張る!」
そこから、鬼さんは俺とミロースの度重なるダメ出しにめげず、ウィズのコーディネートを懸命に繰り返した。
俺とミロースもどんどんアイデアを出していった。
ひとつの目標に向かい、種族を超え皆が協力しあう。
そして店の中が、不思議な一体感に包まれていくのが鈍感な俺にも分かった。
・
・
・
「こんなものか」
俺は肩で息をしながら言った。
「そ、そうね。
これ以上のコーディネートは無いと言えるわね」
鬼さんが俺たちのアイデアをまとめてくれたな。
「ヒロシ、疲れた」
お疲れ、ミロース。
みんな、やりきった感があるし、実際出し切った。
ウィズがポーズをキメてくれてる。
ウィズの男らしさを強調するため、胸元を大胆に開けたジャケット。
肩には世紀末感を出すトゲトゲ付き肩パット。
ウイズのワイルドな一面が良く表現されている。
それに合わせるため、鬼さん愛用のこん棒を持たせる事に。
鬼さんのセンス……脱帽だぜ。
更にワイルドを演出する為、思い切ってズボンなし。
下着は褌。見せる下着で男らしさアピール!
あまりワイルド過ぎるのも女性が引く、とのミロースの意見を採用した革靴。
たしかに。
革靴がある事によって、フォーマルな雰囲気も伝わる。
少年の心も欲しいわね、との鬼さんの意見から、虫かごと虫取り網を持たせたが、アイテム一つで変わるものだ。
……後は、この鳥の羽がついた鍔の大きい帽子を斜めにかぶらせてジゴロ感を出せば、完成だ。
「みんな……
こんな自分の為に……
みんなの頑張り、無駄にはしねぇよ」
ウィズは感極まっていた。
気にするな。
俺たちがやりたいからやった。
それだけの事だ。
「ありがとうございます!」
大きくお辞儀したウィズに、俺も思わずグッときちゃったね。
うん。
「……しかし、どうしてこうなった?」
ウィズを見て、とんでもない事をしでかしてしまったんじゃないのかと思った。
「ナンパやってみようかな」
ウィズがヤル気満々で、そんな罰ゲームみたいなことを言い出した。
あの笑顔……何も言えない。
「行ってきます!」
ウィズが店を飛び出していっちゃった。
ぎゃぁー!
ひぃぃぃっ!
きゃーー!
……悲鳴のような声が聞こえた。
恐る恐る外を見る。
ウィズが、こん棒を振り回しながら女を追いかけ回している姿が見えた。
「あっ!」
今度は網で捕まえようとしてる!
……必死だな。
「酷いな……」
思わず声が漏れた。
「うん、失敗ね」
ミロースがハッキリと言った。
……頑張ったんだけどな。
暫くすると、誰かにぶん殴られたウィズが戻ってきた。
「……すいません、ダメでした。
網が、もう少し大きければ……」
鼻血を出しながら、自らの敗因を分析して言った。
「……」
何も言えない。
「うん、取り合えず、食堂に戻ろう」
俺はそう言い、鬼さんにお礼を言って店を出た。
なんか、村の中がざわついている。
ウィズが変な恰好をしているからだ!
服屋で着替えさせて来るべきだったと焦って周りを確認したのだが……
「早く急げ!」
「女子供は家の中に避難させろ!」
「男は武器を持て!」
村人は俺達に興味が無いようだ。
なんだか慌ただしく動き回っているし、なんだ?どうした?
「何が、あったんだ!」
ウィズが真剣な顔で言った。
「プーー!」
思わず吹き出した。
……お前、その格好で真剣な顔すんな。
ワザと?
ワザとなのか?
え?!
しかし、この騒ぎが何なのか、気になる。
村に何が起こった?
「ウィズ、行ってみようぜ」
俺達も人の流れに乗って向かった先、広場に人だかりが出来ていた。
人だかりの中心に、なんだ?
誰か……人か?
「すいません、ちょっと通してくださいな」
俺達は近くで見ようと、人混みを掻き分けて進む。
「!」
中心では、オーガの男たちが呻き声をあげながら倒れていた。
「何やってんだよ!」
救助活動もせずにオーガたちは、何を上を見ているんだ?
見上げた俺の目に入ってきたのは……
まさか!
「なんで、お前が?!」
俺はそいつを睨んで思わず叫んだ。
頑張った結果、とんでもないことになってしまったが、良かれと思ってやった結果だ。
そんな事より、何故お前が、ここに?!




