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第86話 ギナ襲来、そして終焉

ロッククライミングは楽しかった。

安全を担保したうえで楽しむレジャーとしては、なかなかのものだった。

安全監視員として働いてくれたドラゴンの二人に御礼を兼ねてバーベキュー大会といこうかい!

 数日が経った、ある日のこと。


 この前のお礼も兼ねて、ミロースとヘリウスをバーベキューに誘い、軽キャンクラブ総出でワイワイやっていた。

 人間の姿をしていてもドラゴンだ。

 自分らと同じぐらいの巨大な肉を軽々と持ち上げ、串というにはあまりにデカい杭を肉にぶっ刺して器用に焼いている姿は、なかなかに迫力がある。

 煙が空へと昇り、香ばしい匂いが森に広がっていた。


 そんな平和な空気の中――

 ズタボロでガリガリの集団が、ふらふらと拠点へ入ってきた。


「なんだ? あいつら……気持ち悪いな」


 服は破れ、顔は土と汗で汚れ、足取りはおぼつかない。

 まるで長い間、森を彷徨っていたような姿だ。


「す、すみません……ドラゴンの里を……知りませんか……」


 震える声でそう言うので、俺は素直に答えた。


「ここがそうだぞ」


 すると、ズタボロの四人が抱き合ってワンワン泣き出した。


 なんだ?

 感動の再会シーンにでも遭遇したのか?


 その中に、一人だけ「あー……うー……」と意味不明な声を出している危なそうな男がいた。

 赤い目をして、焦点が合っていない。


 嫌な予感しかしない。


「フハハハ! 見つけたぞ! ドラゴンの里!」


 その危ない男が突然叫んだ。

 なんなの?

 ズタボロの四人が驚愕の声を上げる。


「アガス将軍が喋った!」


 お前らもなんなの?!

 意味不明だが、どうやら、あーうー言っていた男は『アガス将軍』とのこと。

 いや、知らんよ。


 だが、次の瞬間――


「我が名はギナ! 魔界の王の命により、ドラゴンを使役しに来た。我に従え!」


 だって。


「アガス将軍じゃないのかよ」


 突然叫んだり情緒不安定なのを無視して、ズタボロの四人に聞く。


「あのギナっての、仲間だろ? 色々と大丈夫か?」


 三人は戸惑いながら答えた。


「いや、あの人の名前……アガスですよ」


「なんだよ、自分の名前も良く分かってないのか、アレ」


 呆れてズタボロの四人に言ったが、一人だけ様子がおかしい。

 見覚えのある服を着ている。

 どこかで見た……どこだ……?


 モヤモヤする俺。


「無視をするな!」


 ギナ(アガス)が怒鳴った。


 ギナかアガスが、ややこしい。

 統一をしろ。

 名乗りがブレる奴は信用できん。


「ふふふ……なぜ俺が簡単に正体を明かしたと思う?

 ……もっと言ってやろうか?

 ここのドラゴンを捕獲して兵器にする。

 チャングム王国を使って世界を混乱させ、最後は魔界の王が征服する!」


 聞いてないのにギナ・アガスが笑いながら訳の分からないことを言い出した。

 妄想が激しすぎてついていけない。


「本格的にヤバい人だ!」


 俺たちに緊張が走る。

 楽しいバーベキューが台無しだ。

 早く帰ってくんないかな。


 そして俺は、ズタボロの一人の服装を見て思い出した。


「あっ!

 ……セガル王国のクソ野郎の服装じゃねぇか!」


 ドラゴンをおもちゃにしていた、あの連中の制服だ。


「あ、いや、あの」


 俺が気づいたので、後ずさりしやがってこの野郎。

 性懲りもなく、またドラゴンの里にちょっかい出しにきやがったのか。


「魔界の宝珠の力により、貴様ら全員、我の思うがままに操る!」


 ギナ・アガスが両手を広げ叫ぶ。


「うるさいぞ!」


 ヤバい人を一喝した。


「おい、なにかヤバそうだぞ!」


 は?


 ウィズが言うので見ると、いかにもって感じを醸し出してた。


 来るッ!


 俺たちは身を屈め、何かに備えた。




 ……が。


 何も起きない。


 恐る恐る目を開けると、ギナ・アガスが例のセガル残党に詰め寄っているのが見えた。

 何をして……



ギナ・アガス

「なんで俺の台詞のあと、宝珠出さないの? バカなの?」

セガル残党

「……いや、その……」

ギナ・アガス

「いや、その、じゃないよ? 俺がバカみたいじゃん?」

セガル残党

「……崖で……あの……すいません」

ギナ・アガス

「崖? え、何? どういうこと?」

セガル残党

「いや……その……すみません」

ギナ・アガス

「いやいやいや、意味がわかんない。

 え、何?怖いんですけど」

セガル残党

「すいません……」

ギナ・アガス

「だから、すいませんじゃわからないって!」


 ギナ・アガスが突然大声を出したから、全員ビクッとなった。

 揉めてる?


 大声に萎縮するセガル残党にギナ・アガスは、小声で言い直す。


「大きい声出してゴメンって。

 怖がらなくていいから、怒らない。

 俺怒らないからねー。

 ね、だから教えて?」


 セガル残党はメソメソ泣き出した。


「が、崖で……お、おとしちゃいまじだぁ……」


「ううん、そういうのはいいから。

 宝珠は?

 大事なものだから大切に運ぶように言ってたよね?」


 セガル残党は泣きながら「すいません」を繰り返すだけだった。


「え? 怖い怖い怖い。

 なんなの、コイツ。

 え?

 いや、え?」


 みるみる内にギナ・アガスの顔が真っ赤になる。


 次の瞬間――


ズボッ!


 ギナ・アガスの体から触手が出た!


「うわっ、気持ち悪い!」


 前もそうだけど、なんで触手を出したがるんだ、この世界の人間は。


ドガッ!


 触手が、セガル残党の男を弾き飛ばしやがった。

 男は地面に倒れ、そのまま動かなくなった。


「うわぁっ、酷い!

 お前コレの仲間だろう?

 やっていい事と悪い事もわからなくなってんのか?

 適切な治療を受けたほうが良いぞ!」


「こうなったら、皆まとめて片付けてやる!」


 ギナ・アガスが叫ぶ。


「こうなったらって、どうなったらだよ!

 そして、無視をするな!」


 俺は納得いかないまま叫んだ。

 下手に力の強いヤバいのが暴れたら手が付けられん。


「みんな! 奴から距離をとれ!」


 俺はみんなに指示を出しつつ、後退する。

 レイラとカイの弓、フィリーとキャスカの魔法でアウトレンジから攻撃して倒す――

 そう考えた瞬間。


 俺の足に触手が絡みついた。


「……俺、死ぬ?」


 そう思った瞬間、強烈な勢いで引っ張られる――


「うぎゃあああああああ」


ドガァーーン!!


 巨大なキャンピングカーが俺の前を横切り、ギナ・アガスに突っ込んだ。



「助かっ……たのか?」


 俺の足に絡みついた触手が途中で千切れている。

 目の前にはキャンピングカーが止まっている。

 運転席からルファスが降りてきた。


「機転を利かしてくれて助かった。

 ありがとう、ルファス」


 ルファスが片手を上げて応えてくれる。

 ……で、何してるんだアイツ。

 アレはギナ・アガスだったものの残骸か。

 確認してたんだ。


 残骸?!


「ウゲェエエエーー」


 思わず吐いてしまった。


 周囲が静まり返る。


 ミロースが言った。


「……終わったな」


 ヘリウスも頷く。


 俺はその場にへたり込み、深呼吸した。



 その後。


 なぜかバーベキューが再開されていた。


「みんな、よく食えるな」


 俺と前川は、さっきの出来事を思い出して食欲がなかった。

 ズタボロだった三人は、ちゃっかり食事に参加しているし。

 まあ、汚れたの片付けてくれたから当然の報酬か。



 俺は少し離れた場所で、前川と並んで座っていた。


「なぁ、前川」


「……なんですか」


 前川はまだ顔色が悪い。


「チャングム王国に行くけど、来てくれるな?」


 俺は何となく聞いてみた。


 前川はしばらく考え込み、遠くを見つめながら言った。


「……待ってますよ、ここで」


「いや、参加して道案内しろよ!」


 前川は、ものすごく嫌そうな顔をしていたが、チャングム王国の関係者なので連れて行くのは当然だ。


「そんな顔をするな。

 お前も、モヤモヤするだろ、あの触手野郎とか」


「ま、まあ。

 僕は勇者ですしね!」


 だからなんだと思ったが、


「ああ、流石勇者だぜ!」


 と、前川をその気にさせることにした。

何だったんだ。

情緒不安定な奴が突然押しかけてきて……迷惑極まりない。

一言いいに行かなきゃな。

人として一言物申さないといきませんよ。

それと。

ドラゴンの里にちょっかいを出す奴がまだいたって事実が重要だ。

ミロースに迷惑かけるような奴は許さない。

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