第84話 バンとライカ、運命の出会い
よっしゃー!
流石、俺。
凄いぞ、俺。
バンの野郎、喜ぶだろうなぁ!
軽キャンが猛スピードで森の中を疾走する。
ラリーカー選手権のように、木々の間を縫うように走り抜け、アクセルを踏むたびに車体が軽く跳ねた。
森の闇は深く、ヘッドライトが照らす範囲以外は何も見えない。
だが俺は迷わなかった。
今日という日は、バンの人生を変える日になる――そんな確信があった。
ドラゴンの里に戻ってきた頃には、すっかり夜も更けていた。
森の静けさの中、軽キャンのエンジン音だけが響く。
俺は軽キャンをキャンピングトレーラー1の前に停め、勢いよくドアを開けた。
「バン! 女の子連れてきたぞ!」
叫びながらドアを開け放つ。
「ん? あ〜……」
ウィズが寝ぼけて変な声を出したが、当然無視だ。
寝ているバンの胸ぐらを掴み、そのままビンタして起こす。
バチンッ!
「はへ? なんれすか?」
「こっちゃこい」
寝ぼけた声を出すバンの胸ぐらを掴んだまま、俺はずるずると外へ引きずり出した。
寝ぼけ眼のバン。
フフフ……驚けよ。
俺は満面の笑みで言った。
「バンの嫁さん連れてきたぞ」
「……は?」
バンが意味の分からない顔をしている。
だが、嬉しすぎて理解が追いついていないのだろう。
俺はそう解釈した。
「バン、ゴブリンの娘が、お前と結婚しても良いって言ってくれたんだ」
俺が誇らしげに言うと、バンの顔が曇った。
「あの、ノガミさん? 今、ゴブ? ゴブリンって……」
ゴチャゴチャ言い出したので、ビンタして黙らせた。
バチンッ!
「てめぇ! 俺が貴様のために女連れてきてやったんだ、ありがたく思え!」
拒否は認めない。
バンは泣きそうになり、メソメソと涙をこぼした。
俺は気を取り直し、軽キャンの方へ向き直る。
「ライカ、出てきていいぞ」
軽キャンの扉が開いた。
「あの、こまってるみたい。
私で……ホントに、その人は良いんですか?」
緑の肌、小柄で、個性的で可愛らしい顔をした娘――ライカが降りてきた。
俺の好みだ。
愛人にしたいくらいだ。
……そうだな、するか?
バンも嫌そうだったし――
「それなんだが、ライカ……」
俺が口を開いた瞬間、バンが見たことのない速さでライカの元へ駆け寄った。
「ライカ、幸せにするよ」
バンがライカの手を握り、真剣な目で言った。
俺もライカも固まる。
なんじゃコイツ!
「バ、バンも気に入ったようで良かった……
大事な事を確認するからな。
ゴブリンだからってライカをいじめたりしたら俺は許さん。
ちゃんと愛せないならライカを村に戻す。
本当に彼女で良いのか、バン?」
俺は確認した。
こんなに可愛いライカを、種族で差別するようなら一緒にならない方がいい。
「いじめる訳ないじゃないですか!
俺は、彼女を一生守ります!」
バンの言葉に、俺は嬉しくなった。
だよな。
俺の仲間が、そんな些細な事で差別するような人間な訳が無い。
ライカはキョトンとしていたが、やがて小さく頷いた。
「あなたと、けっこんしたら、美味しいものが沢山食べれるって聞いたよ。
よろしくお願いします」
そう言ってペコリと頭を下げた。
戸惑うバンが俺を見る。
「お互い異存はないみたいだな。
今日はもう遅いから、明日ライカとまた来る」
それだけ言うと俺とライカは足早に軽キャンへ戻った。
お前の愛で、ライカに愛してもらえるよう頑張れバン。
軽キャンを走らせると、バンが呆然と立ち尽くし、俺たちを見送っていた。
俺はルファスのキャンピングカーに軽キャンを横付けし、レイラとプロムを迎えに行った。
ついでに、ライカをキャンピングカーに泊めてほしいと頼む。
……あと、厳重に「手を出すな」と釘を刺しておいた。
レイラとプロムを乗せ、俺たちの停車エリアへ向かう。
車窓から、まだバンが呆然と立っているのが見えた。
早く寝ろよ、と思いつつ軽キャンを走らせた。
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次の日、俺たちは遅くに起きた。
夜更かしして、寝るのが遅くなったからな。
さて、ライカだ。
俺はライカの元へ歩いて向かった。
いきなり結婚と言われても困るだろう。
とりあえず付き合わせて、合わないようなら諦めればいい。
そんなことを考えながら歩いていると、
向こうでバンが一生懸命、ドラゴンの里をライカに案内しているのが見えた。
「あいつ……」
俺は思った。
バカだな。
俺が気に病む必要なんてなかった。
バンとライカ。
二人のことは、二人に任せればいい。
俺は「頑張れよ」と小さく呟き、軽キャンへ戻ることにした。
バンとライカを見たら、レイラとプロムに「愛してる」って伝えたくなった。
昨日の続きの話もしたいしな。
本日も、平和なり。
俺は見上げた空に向かってそう言った。
良い感じにマッチングが出来たようで俺も嬉しいや。
二人には幸せになってもらいたいものだ。
俺も嫁さんをもっと、もーっと愛さないといけませんよ!




