第83話 軽キャンクラブの平和な日々
滞在期間も長くなってきて、秩序やルールが自然に出来上がっていった。
まあ、そんな決め決めなもんじゃないが、暗黙のルールみたいなもんだ。
ドラゴンの里、入口付近――
俺たち軽キャンクラブが滞在しているこの場所は、森に囲まれた静かな広場だ。
朝は鳥の声が響き、昼は木漏れ日が揺れ、夜は虫の声が心地よい。
ドラゴンの里の近くとは思えないほど、のどかで平和な空気が流れている。
ここに、俺たちはそれぞれの『家』を持っている。
キャンピングカーにはルファスとキャスカ。
軽キャンピングカーには俺とレイラとプロム。
キャンピングトレーラー1にはウィズとバン。
キャンピングトレーラー2にはカイとフィリー。
キャンピングトレーラー3には前川。
こうして並べてみると、なんだかんだで大所帯だ。
最初は「車中泊で旅するだけ」のつもりだったのに、気づけば村みたいになっている。
この配置は、滞在中の住居として割り振ったものだ。
清掃や管理は各自が担当し、責任を持って自分の車両を維持する。
ルファスが「軽キャンと交換してほしい」と言ってきたこともあったが、俺は軽キャンが大好きなので断った。
「デカいキャンピングカーの運転に慣れてくれ」
そう言ったら、ルファスは「努力します」と真顔で返してきた。
真面目か。
そして今は、プライバシー確保のため、車両同士を少し離して配置してある。
……だって、夜、大きな声出せないから。
うん、プライベートって大事だよね!
あ、そういえばカイとフィリーがくっついた。
まあ、予想通りだ。
……どうでもいいけど。
ただ、残ったウィズとバンが可哀想なので「暇になったら女の子探してやる」と二人に伝えた。
なぜか二人の俺への扱いが良くなったが、現金な奴らだ。
なんだかんだで日が過ぎる毎にルファスの運転もだいぶ上達してきたので、軽キャンと交換と言わなくなっていった。
キャスカは身長が足りないから、運転はもう少し先でいい。
焦る必要なんてない、ゆっくりでいいんだ。
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「勇者アキラ! 行くぞ!」
ウィズの叫び声が聞こえた。
またやってるのか。
「また、返り討ちにしてやるよ!」
前川が不敵に笑っている。
バドミントンだ。
あいつら、毎日やってるな。
……前川の野郎、学生時代にバドミントンで国体に出たらしい。
あの野郎、その事を隠してやがった。
学生の頃はクラスで上手い方だった俺が、前川をギャフンと言わせようと勝負したのに……
結局、1点も取れなかった。
いや、正確には、1点入った。
……前川がお情けで、わざとミスした1点。
要らない気遣いされて腹を立てて大きい声を出してしまったから、今考えると悪いことをしたと思っている。
国体選手とクラスで上手い方って、最初から勝負になるわけがない。
だから俺はやらなくなった。
その代わり、軽キャンクラブのバドミントン最強の男・ウィズが前川と戦うようになった。
……だが、ウィズが勝ったところを見たことがない。
パワーやスピードは確実にウィズの方が上だと思うんだけど、試合の駆け引きなのかねぇ。
知らんし、どうでもいいが。
今日も運転講習が終わったのを見計らって、ウィズが前川に挑戦したらしい。
どうせ勝てないのに、よくやるよ。
ウィズは楽しそうで大変結構なのだが……俺の可愛いバンが、一人あぶれてるじゃないの!
ルファスはキャスカとイチャイチャ。
カイはフィリーとイチャイチャ。
ウィズは前川とスポ魂。
俺は嫁さんのレイラとプロムとイチャイチャ。
「……孤独死」
バンが危ない!
これは軽キャンクラブの危機だ。
仲間思いの優しい俺は、バンがあぶれている状況に焦っていた。
仲間外れ → 孤独 → 自暴自棄 → 孤独死
まずい!
「(俺を除く)みんな、あんまりイチャつくな!」
俺もモテなかったから、バンには特別優しくしてやりたい。
どうせモテないだろアレ。
何とかなんないだろうかと、この日俺は頭を悩ませた。
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次の日!
夜が明けきらない時間。
俺はレイラとプロムをルファスのキャンピングカーに乗せた。
キャンピングカーに入った瞬間、ルファスが起きてきたのだが……裸だった。
「服を着て寝ないと風邪ひくぞ。
それから、レイラとプロムを頼む」
「は?」
「は?じゃないよ。
出かけるから、レイラとプロムを預かってって言ってるんだよ」
「え? 二人とも大人でしょ」
「お前バカ?
こんなに可愛いレイラとプロムだぞ?
誘拐されたら責任とれるのか?」
「ドラゴンの里に誘拐しに来る人いますかね?
それに、レイラさんとプロムさんを誘拐するなら一個師団は必要でしょう」
「それじゃ頼んだぞ!
俺、忙しいんで、訳の分からない事聞いてる暇ないんだわ」
「は、え?!
ちょっと、ノガミさん、ノガミさーん!」
奥のベッドルームは見ないように心がけ、レイラとプロムを預けて軽キャンに戻る。
俺がこんなにも朝早く走り去った理由――
それは、バンに合う女性を探すためだ!
ホントにお人好しだぜ、俺は。
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夜が明け、森に光が差し込み、気温も上がっていく。
やる気に満ちて出発した俺だが……現在、昼過ぎ。
森をさまよったが、女どころか、人が全くいない。
だんだん、めんどくさくなってきた。
ドラゴンの里の近くに人なんて住むのかよ。
そもそもの話になってきたが……
「なんで、俺が、こんな事しなきゃ……」
誰も頼んでいない、自分が勝手に始めたことなのだが、半泣きになりながら運転する俺。
手ぶらでなど帰れない。
いつしか日が落ちかけ、随分遠くまで来たようだ。
だが、目的を達していない俺は、さらに軽キャンを走らせた。
そして、また数時間探索して……ついに!
「ん? あれは!」
俺は思わず叫び、軽キャンを停めた。
バンが、自暴自棄になって孤独死するのを防ぐため、仲間思いの男、俺が立ち上がった。
数々の困難苦難を乗り越えてバンの嫁さんを探すのだ。
嫁さんがいたら寂しくないだろうからな、任せとけ!




