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第77話 ドラゴンの里へ向かう決意

前回頑張ると言いつつ、明日、明日と先延ばし。

本当に頑張らないといけないんだけど、何かきっかけがあればなぁ

 戦争だの、ルファスとキャスカの救出だの……色々あった反動か。

 「明日から頑張る」と言い続けた俺たちは、結局だらけきっていた。


 そんな俺たちの元に――珍しい客が来た。


「ホワイトドラゴン。

 あれって、ミロースだよな?」


 屋敷の近くを悠々と飛んでいる。

 ……懐かしいな。

 どうしたんだろう、何か用だろうか?


 ミロースの姿をまた見ることが出来て嬉しくなった俺達が外に出て大きく手を振る。


「おーい、ミロースーー!

 どうしたぁーー? 降りて来いよーー!」


 俺たちに気づいたミロースは屋敷の前に降り立ち、人化して美少女の姿になった。


 やっぱ可愛い……けど、裸ぁ!


 目のやり場に困るだろう。

 それに――


「ミロース、とりあえず中に入りましょうよ」


 辺りを確認しつつミロースにお願いする。

 懐かしさと嬉しさが込み上がる。

 だが、感動の対面などと悠長な事を言ってられないだろう!

 裸の美少女と立ち話は色々アウト。

 こんなところをご近所さんに見られるのは御免だ。



「おお、結構似合ってるじゃないか。

 ちょっと待ってろ、みんなを呼んでくるから」


 家に入らせたミロースに、俺達と同じ制服を渡して着るように言うと、リビングにみんなを集めた。


「カイ、軽キャンから人数分の飲み物、コーラでいいから持ってきて」


 飲み物でも出してやろう。


 カイが軽キャンの冷蔵庫から人数分の冷えたコーラを取ってきてくれた。

 そいつをミロースに渡すと、炭酸に苦戦しながらもゴクゴク旨そうに飲んでる。


「今日は、どうした?

 遊びに来てくれたのか?」


 ミロースはコーラに夢中で、俺の質問は完全にスルーか。

 ま、まあ、飲み物が気に入ったみたいでよかった。


「ゲフッ……私達の里に勇者が現れた」


 ミロースがゲップしながら言った。

 俺の質問が普通に無視されたな。

 まあいい。

 ミロースの里に勇者が現れて大変だったんだろう。


「って、勇者?!」


 転生? 召喚?


 いや、そんな事どっちでもいいんだよ。

 そんな事より、そいつって……



 女勇者か?



 ハハハ、何俺バカな事を。


 いや。

 こういうのって、大体、主人公とイチャイチャする女勇者が出てくる展開だろ?

 ほら、俺ってどう見ても主人公タイプだし。


 ……つまり、そういう事だ。


 困ったなぁ、どうしても美女が俺の周りに集まってきてしまう。

 フェロモンでも俺から出てんのか?


 えへへ、困った困った。


「おっと、よだれが」


 慌ててよだれを拭いた。

 俺の優しくも頼りがいがあるところや、紳士的な俺のイメージが壊れてしまう。


 しかし、女勇者とイチャイチャからの……えへへ。

 とにかく素敵なイベント発生の予感!

 きっとそうだ!


 読者の皆様、お待たせしましたよ!


 俺の目がキラリと光った瞬間、ミロースに言った。


「話を聞こう」


 その女勇者の事をな!


「勇者が私達の里に来たのだが、その勇者はお前達の仲間か?」


「違うよー」


 女勇者が俺の仲間のわけがない。

 だが、今回のイベント次第でどうなるんでしょうねぇ!


「念の為聞くが、その勇者によって、お前らの里に被害とか……無いよな?」


 凄惨とか洒落にならない展開は勘弁だ。

 俺は祈るように聞いた。


「イヤ、毎回挑んできてウザいが、全然大丈夫だ」


 ミロースの言葉に安堵した。


 でも、勇者の癖に弱いの?

 可愛けりゃ、どうでもいいことだ。


 俺は安心してコーラを飲む。


「その勇者と言うのが、ヒロシの軽キャンに似たのに乗ってたから、懐かしくなって遊びに来た」


 ミロースが笑いながら言った。


ブーーッ!


 俺は飲んでいたコーラを盛大に吹き出した!


「ゲホゲホ……何?!」


「もう! ヒロシー、汚いなぁ!」


 レイラが布巾で拭きながら抗議してくる。

 すまん、俺が悪い。


「悪いレイラ。

 ミロース! 軽キャンに似たのって?」


 ミロースの両肩を掴んで揺さぶる。

 俺の他にも車を持ってる人間がいるなんて、しかも軽キャンだと?!

 被るじゃねぇか。


「ん? ああ、ちょっと形違うけど」


 ミロースが揺られながら答えた。


 俺は考える。


【美少女は軽キャンピングカー、もしくはキャンピングカーに乗っている】



【その車輌が強いから本人は弱い】



【なぜその車輌で戦わない?】



【頭が残念だから】



【頭が残念に決まっている】



【騙されやすい】



【ナンパに引っ掛かる】



【俺が声をかける】



【ヒロシ様、抱いて】



【キャンピングカーの中で……】


 ……いや、俺、何言ってんだ、馬鹿馬鹿しい。

 いや……

 でも概ね合ってるよな?


キラーーンッ!


 そういう事ねッ!


 やる気が出た! 凄く出た!


「ミロース! お前の里に行くぞ!」


 俺が雄々しく宣言したのに、みんなキョトンと……もういい、無視だ!


 イチャイチャ出来るなら、俺一人でも行く価値ありだぜ!


 むしろレイラやプロムは置いていった方が都合がいい!


「……いや、待てよ?」


 一人で行って何かあったら困る。

 護衛を連れていくべきだな。


 顔のいいルファスは論外。

 俺の女勇者を取られたらたまったもんじゃない。


 ウィズも不細工ではないので、メンバー外。


 カイもまあまあ顔が整ってるから、念には念をいれて却下だな。


 フィリーはカイがうるさいし、女だからレイラ達に俺と女勇者のイチャイチャを言いつけやがる可能性がある。

 当然論外。


 俺はフィリーをキッと睨む。

 フィリーは意味が分からず不満顔。


 消去法でいくと……バンか。


 俺はバンにニッコリ笑顔を送る。

 バンは意味が分かっていない。

 当然だ、何も言ってない。


「あー、今回はバンと二人でドラゴンの里に行こうと思う。

 みんなは拠点で適当に依頼をこなしてくれ!

 働かざる者食うべからず! 各々頑張ろうぜ」


 俺が張り切って言うと――


 ……みんな、なぜ白々しい顔をしている?


 特にレイラ、プロム……お前ら。


 まるで俺がやましい事を考えているのがバレているようじゃないか!




「それじゃ、準備OKだ! ミロース頼む!」


 軽キャンに乗った俺が叫ぶと、キャミソール姿のミロースがドラゴンの姿に変化していく。

 体が大きくなるにつれ、思った通りキャミソールはビリビリに破けてたな。


 制服を破かれたら困るので脱いでもらったのは正解だった。


 完全にドラゴンとなったミロースが、軽キャンとキャンピングトレーラーを掴んで飛び上がる。


 ん?


 なぜキャンピングトレーラーも持っていくかって?


 みんなが「行く」と言い出したからだよ!


 クッソーー!


 ヒロシはチャンスを逃すまいと、運転席で闘志を燃やしていた。


「ヒロシ、さっきからニヤニヤしてたよね?」

「レイラ様、絶対なんか企んでましたよね」


 助手席のレイラが笑顔で言って、プロムが運転席と助手席の間から顔を出してまで。


 バ、バ、バ、バカだなお前ら……

 汗が止まらん。


 図星だ。


「ほ、ほら、空飛んでる。わー、たのしいなあー」


 俺は外の景色を見る事にした。

 早く着いてくれと願いながら。


 しかし願い叶わず、そこそこ時間がかかったが……

 向こうに見えるのがドラゴンの里らしい。


 雲か霧か、何かで隠された山が見える。


 ミロースが言うんだから間違いない。


 もうすぐ美少女に会える!


 俺は胸をときめかせ、目を潤ませた。



 ミロースが大きく羽ばたき、ゆっくりと下降していき、軽キャンとキャンピングトレーラーを地面に置いてくれた。


 車輌から降りた俺達の前には、巨大な木々が立ち並び、荘厳な雰囲気が漂っていた。


「す、すげぇ……」


 そして俺は発見した。


 キャンピングカー!


 レイラ達、軽キャンクラブのメンバーも、そのデカさに度肝を抜かれている。


 あれは……知ってる。

 数千万はする高級モデルだ。


 キャンピングカーショーや動画サイトで見た記憶がある。

 いかにも“キャンピングカーです”ってやつだ!


 自分の軽キャンと見比べて、ちょっと気後れする。


 だが!

 こんなの所有してるって事は、よっぽどのお嬢様か、やり手の女実業家じゃないか!


 俺はこれから出会う女性に負けてはならぬと自分を奮い立たせる。


 その時――ヒタヒタと近づく人影。


 俺達はまだ気づいていない。


 影はゆっくりと歩み寄り――


ガキンッ!


 後ろで音がした!


 振り向くと、ミロースの足元で誰かが蹲っていた。


「ん?」


 そいつの傍に剣。

 こいつが勇者なのか?


「また、お前か?」


 ミロースがうざそうに言う。


 勇者登場?


 美少女か?

 美熟女か?


 俺はトキメキながら走る。

 ギンギンにやる気満々で走る。


 そう――目の前の、あの……


 ハゲかかったおっさんに向かっ、おっさん?!


「ふざけんな、お前!」


バチーン!


 俺は泣きながら、おっさんに全力ビンタした!


 期待させやがって!


 おっさんはカンフー映画みたいにクルクル回って倒れた。

 俺はフーフー言いながらミロースを見る。


「ミロース……俺に残された僅かな希望のために聞くが……


 ……あそこで倒れてる奴が……勇者じゃないよな?」


 倒れてるおっさんを指差す。


 違うと言ってくれ。


「あいつが、しつこい勇者だ」


 やっぱりかーー!


 俺は心が折れ、がっくり項垂れた。


 軽キャンクラブのメンバーは、意味が分からないという顔で俺を見ていた。


おっさんじゃねぇか。

詐欺だ詐欺。

まあ、誰も女勇者など一言も言ってないんですけどね!

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