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第73話 王女の勘違いと、二人の地獄

ヒロシ達がルファスとキャスカを探しに行って2日が過ぎた……

そして、ラガス王国の軽キャンクラブ拠点の家にお客さんがやってきた。

 ヒロシ達が出発して、二日が過ぎた。


 ラガス王国、軽キャンクラブの拠点の家を護衛を伴ったラフィスが訪ねてきた。


「誰かいるか!」


 大きな声でドアを叩くラフィス。


「うるせぇな!

 朝からドンドンと!」


 応対に出たのは一番向かなそうなウィズだった。

 

「ヒロシは?」


 王女であるにも関わらず騎士団に所属するラフィスなので、ウィズのようなガサツな対応にも慣れている。

 気にする素振りも見せずに、聞きたい事を聞く。


「ヒロシか?

 まだ帰ってきてない。

 もう二日帰ってきてないから、難航してるんだろうなぁ。

 多分、まだかかるんじゃないか?」


 ウィズや拠点に残るメンバーもヒロシ達がルファスとキャスカを無事に連れ戻す事を願っていた。


「ヒロシは出かけたまま、まだ戻っていないのか?

 まぁ良い……今日ここに来たのは、捕虜の件だ。どうしたら良い?」


 ラフィスの言葉に、ウィズは首を傾げた。

 捕虜の件とは?

 戦争が終わって投降したヴァルファ帝国の兵士の事なのか、それであれば冒険者に何を聞きたいのか、ただただウィズは混乱する。


「いや、すまんが、本当に意味がわからん。

 普通にヴァルファとの交渉にでも使えば良いのではないか?」


「それはそうなのだが……

 私が言っている捕虜とは、丸太に張り付けた二人なのだが」


 ラフィスが顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。


 そんな事をされても困惑するウィズ。


「いや、ホントに意味がわからない。

 お前は、何が言いたいんだ?」


「その、あのままグラナス高原に……放置しといて良いのか?」


 その瞬間、ウィズの表情が変わった。


(ヒロシが拉致って裸にして大の字で丸太に括りつけたヴァルファ帝国の将の事か!

 ラガス王国軍の本陣に突き立てたまま放置って、この国の奴ら大丈夫か?!)


 あまりのラガス王国の盆暗ぶりに頭がくらくらするウィズ。


「いや、ダメだろ!

 放置ってあのまま?!

 二人とも死ぬぞ!

 すぐ連れてきてやれよ!

 おい、バン! バンー!」


 ウィズはラフィスに言い放つと、直ぐに奥にいるバンへ回復薬を持ってくるよう指示した。


 その様子をぼんやり見ながら、ラフィスがぽつり。


「何か考えがあるのかと思って、放置してた」


「……お前なぁ」


 ウィズは深くため息をついた。



グラナス高原――


 フリチンで丸太に張り付けた状態で放置されたアデロン将軍とロディア将軍は、空腹と寒さで死の縁をさまよっていた。

 この状態で生きている二人は、流石ヴァルファ帝国の将軍職にあった者達。

 常人よりも体力があったのだろう。


「ロ、ロディア……い、生きてるか……?」


 アデロンがカサカサしたかすれ声で呼びかける。


「……」


 返事がない。

 一人にしないでくれと焦るアデロン。


「ロディア! ロディア!」


「……うるさいです。まだ、生きてますよ……」


 小さな声が返ってきた。


「生きていたか……良かった。

 ……しかし、喉が乾いたな……」


「体がカラカラで……もう、おしっこも出ませんよ……」


「……戦争、終わって……るん……だよな?」


「……しりませんよ……」


 二人は体力を使わないよう、静かに目を閉じた。


 ――その三時間後、ラフィスの指示で救出され、二人は死の淵から生還した。




キキーッ!


 軽キャンがヴァルファ帝国の首都モスノフに到着した。


「とうとう、到着してしまったな」


 ここに来るまで、ルファスとキャスカの姿は見つからなかった。

 ヴァルファ帝国に到着する前に二人を見つけたかったのだが、悔やんでもしょうがねぇ。

 今できる最善の行動をするんだ。


 俺はヴァルファ帝国へ到着前に魔導通信でノガーミ商会へ連絡していた。

 ゼノス王国の本店からモスノフ支店にルファスとキャスカ、二人の探索指令を出すよう指示していたのだ。


「レイラ、プロム! このままモスノフ支店に向かうぞ!」


 軽キャンは街中へ滑り込む。


ブロロロローー



 モスノフ支店に着くと、貴賓室に案内され、すぐに支店長ソイラと営業責任者グラスが入ってきた。


「ノガミ様、お久しぶりでございます。ところで……何をされたのですか?」


 ソイラが慌てた様子で俺に聞いてきた。

 探索の進捗を聞きたいのに、いきなり質問かよ。

 

「何したかだと?

 ちょっと最近、ヴァルファ帝国の軍と戦っただけだ」


 ソイラは「あぁ……」とソファに沈んだ。


「相変わらず無茶苦茶な方ですね」


 グラスが呆れたように言ってきたが、平凡な常識人でしかない俺がいつ無茶苦茶したよ。

 いや、言い争いに来たわけじゃない。

 聞き流そう。 


「それでノガミ様……ルファス殿下とキャスカ様とは、どういったご関係で?」


 ……殿下? 様?


「あのな、俺の仲間のルファスとキャスカは、飲んだくれの親父から逃げるためにこの国を出た冒険者だよ。

 殿下とか様とか……お前、俺をおちょくってんのか?

 レイラ、こいつらルファスが貧乏人の倅だからって、そんな嫌味言って、バカにしてると思わないか」


「ほんと、そう!

 ちゃんと私達の言ってるルファス達を探してるのかしら?

 別人を探してるから殿下なんて言ってるんじゃないの?」


 なるほど、そういう事か。

 流石レイラ、賢いぜ。


「ん?」


 レイラがソイラの方に歩いて……どうした?


「お前ヒロシがさ、探せって言ったら、思いっきり探さないと。

 舐めてんの、ヒロシを?

 なあ。

 舐めてんの?」

「いえ」

「ヒロシ舐めてんの?」

「いえ」

「舐めてない?」

「はい」

「ヒロシ、思いっきり探せって言ったんだよ、お前」

「はい」

「これが、お前の思いっきりか?お前の」

「はい」

「舐めてんのかぁ!」

「なめてないっす」

「思いっきりfhgねおい」


 レイラがソイラを思い切りビンタした。

 どこのシューティング合宿かと思ったが、ちょっと怖かったので気配を消し空気になる俺。

 助けて、グラス。


「レイラ様、ソイラ支店長が死にますので、その辺で」


 流石グラス。

 この空気の中、よくぞ割って入った。

 俺の中でグラスの評価が上がった。


「お二人が言うように別人なのですかねぇ。

 うーん……

 そうですかぁ?

 そしたら、ルファス殿下達が城に幽閉されているって情報を掴んだんですが、無駄な情報でしたね。

 でも、本当に別人ですか?」


 しつこいな、ソイラ。

 せっかく評価が上がったのに、残念だよ。


「違うって言ってるだろ。

 ちゃんと、ルファスとキャスカの探索、頼むぞ!

 その代わりに情報が入るまでの間、その幽閉されてるっての調べてやるよ。

 モスノフの中もそうだけど、外からモスノフに入ってきた人間もチェックして見つけたら俺にすぐ知らせろ」


 ったく。

 本当にお人よしだぜ、俺。

 自分のやさしさに、自分で自分に惚れそうになる俺が席を立つ。


「あっ、ノガミ様。そちらの女性は?」


「俺の第二婦人。可愛いだろ」


「だ、第二?!」


「プロムです。

 皆様、よろしくお願いいたします」


 プロムが二人にお辞儀したが、本当に礼儀正しい。

 最高の奥さんだぜ!


「お前な、夫がいる前で、人の奥さんをジッとみるんじゃないよ」


 プロムを抱き寄せると、グラスが羨ましそうに見てくる。


 ……ほう?


 ならばレイラも引き寄せて抱きしめる。


 ソイラとグラスが羨望の眼差し。


 気分が良い。

 行くか。



 遠くに見える城に、ルファスと同じ名前の奴が捕まっているらしい。

 勘違いして探してたから、ルファス達の探索が一からか。

 情報が来るまで少し時間がかかるだろう。


 よし!


「何かの縁だ、助けてやるか」


 ボケっとルファス達を待っててもしょうがないからな、ついでだ、ついで。


 その前に――


 ヒロシはレイラとプロムを見て、少し照れたように笑う。


「レイラ、プロム……ずっとさ、ルファス達のことでバタバタしてただろ? その……俺、もう我慢できない」


 二人は頬を染めて頷いた。


「よぉぉぉぉし!!」


ブオオオォォーー!!


 軽キャンはホテルへ向けて過去最高速度で走り抜けた。


 チェックインを済ませ、部屋に入ると――


 互いの距離が一気に近づき、夜が更けるまで……まあ、愛を語らいあったのだった。

オンとオフを切り替えの達人と読者の畏怖を集める俺。

嫁さんと愛し合えたのは良かったが、モスノフ支店の連中もルファスを殿下だと?

ホントに困りますよ。

キャスカみたいな凶暴な生物がお姫様って、そんな訳があるか。

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