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第71話 グラナス高原決戦③

稀代のネゴシエーターとして読者にその名を轟かせている俺ヒロシ。

戦うだけが全てじゃない。

話し合うことが何より大切だと俺は思うんだよね。

 昇る太陽は、まるで昨夜の惨劇を知らぬかのように神々しく、冷えた大地を照らし出した。

 血の匂いが残る戦場でも、日の出は容赦なく訪れる。


 戦争二日目。


 俺たちは軽キャンの横で朝食を囲み、昨日の確認と今日の予定を話し合っていた。


 メニューは、ベーコンエッグにパンとバター、そしてオニオンスープ。

 戦場の朝とは思えないほど、いい匂いが漂っている。


「ダメもとで、捕虜と交換で撤退してもらえるか、きいてくるから」


 俺はパンに半熟の黄身をつけてモシャモシャ食いながら言った。


「フリチンのまま連れてくの?」


 レイラがバターを塗りながら聞いてくる。


「流石にダメだろ?

 あの姿見せたら、ああなりたくないって抵抗してくるに決まってる」


 ベーコンをかじりながら答えた。


「交渉がダメだった時、あの大軍相手にどうする?」


 ウィズがパンのお代わりをもらいながら言った。


「まぁ、ゆっくりやるさ」


 俺はニヤニヤしながらオニオンスープをすする。


 そこで、ふと思い出した。


「そういやレイラ。

 昨日の松明、流石だな」


 レイラは一瞬だけ手を止める。


「本陣付近の松明を全部撃ち落とせって無茶苦茶な作戦ちゃんと実行したからね」


「俺は、出来る作戦しか立てないよ。

 レイラなら余裕で出来るってわかってるから頼んだんだよ。

 実際、余裕で出来たじゃん」


「もう。

 でも、ちゃんと実行したご褒美に今度デートしてよね」


「……考えとく」


 プロムの殺し屋のような視線があるので、即答は控えた。



 日が高くなってきた頃、俺は軽キャンでヴァルファの陣へ乗り付けた。


 もちろん車からは出ない。

 暗殺なんかされたら嫌だからね。


「ラガス王国の使者だけど、責任者いる?」


 近くの兵士に声をかけ、今の指揮官のところへ案内させる。



 ヴァルファ帝国軍、本陣前の広場。


 軽キャンと、ヴァルファの将軍たちが向かい合う。


「だからさ、昨日の捕虜返すから、帰ってくんないかなぁ?」


 俺は何度も同じことを言っているが、連中は頑なに首を縦に振らない。


「何度言われても答えは変わらない。

 ラガス王国が降伏するまで、撤退はない」


 向こうも相当イラついてきているみたいだが、全く双方の歩み寄りがない以上、埒が明かない。

 結論はでたな。


「そうか、交渉決裂だな」


 そんじゃ、プランB。


 俺はアクセルを軽く踏み、立ち並ぶ偉そうな奴らを次々と撥ね飛ばしてヴァルファの陣を後にした。


 ――この瞬間、ヴァルファ軍の士気は完全に崩壊した。



ラガス王国の陣ーー


「交渉決裂だが、向こうの偉い奴らを倒してきたから、今なら勝てるんじゃね?」


「は? え?

 何を言っ、いや……


 カイト、全軍に告げよ!

 わが軍は、これよりヴァルファ帝国軍へ全軍による突撃をかけるぞ!」


 俺の報告を受け、ラフィスは即座に全軍突撃を命じた。


 整然と立ち並ぶラガス軍が進軍を開始する。


 対するヴァルファ軍は、指揮官不在で陣形もバラバラ。

 いくら数が多くても、これでは勝負にならないだろう。


 事実、夕方になる頃には、ヴァルファ軍の数はラガス軍より少なくなっていた。



 夜になり、この日の戦闘は終わる。



 そしてその夜――


 残ったヴァルファ兵の半数が逃げ出した。



 翌朝。


 降伏の使者がラガス軍にやってきて、戦争はラガス王国の勝利に終わった。


 だが、ヴァルファ帝国がこの結果を知れば……

 また軍勢を差し向けてくるだろう。


 しかし、直近の危機は去ったのは間違いない。

 そのことによって時間は稼げるだろうから、対策も立てやすいだろう。


「第一段階、終了だな」


 俺は呟くと魔導ブレスレットを口元に寄せた。


「予定より早く終わった、ゼノス、そっちの方は?」


『ノガーミ商会を通じて、お前の言ってた協定を結んだ。

 そちらに向かった軍だが、もうすぐ到着予定だったが……引き返させる』


 報告を聞いて、俺は胸を撫で下ろす。

 ゼノスがうまい事やってくれたみたいだ。


 俺の計画はこうだ。


 ・グラナス高原のヴァルファ軍に対抗するため、ゼノスに援軍要請

 ・ヴァルファ周辺国に相互不可侵協定+連合軍協定を締結

 ・ラガス王国は、独立国として協定に参加


 小国でも数が集まれば巨大な力になる。

 同盟のどこかの国が倒れれば、敵に対抗する力が削がれるんだから他の国にとっての死活問題だろ?

 だから、ヴァルファ帝国って脅威がある限り同盟は大丈夫だろう。


 そうなんだけど、それを各国の責任者に納得させるのが大変だったとグルジットがぼやいてた。

 しかもノガーミ商会はその仲介役として莫大な金を動かしたみたいだ。

 結構シャレにならない金額。

 それなのにノガーミ商会を任せているグルジットは、金の事を何も言わずに頑張ってくれた。

 奴もわかっているからだろうけどね。


 これは投資だ。


 協定国が豊かになれば、商会の取引額も跳ね上がる。

 ノガーミ商会の規模や力の拡大につながる行為なのだ。

 俺も儲かるし、世界が平和にもなる。

 誰も損しない。


 まとめると、俺は素晴らしいって事なんだろう。

 冗談だ。

 まあ、これで、ラガス王国はしばらく安泰だろう。

 王様との約束で生まれた俺の責任って奴も果たせただろう。


 厄介ごとも片付いて安心したし……


「さぁて、帰るか!」


 俺はレイラ、プロム、ウィズ、カイ、バン、フィリーと共に、

 ルファスたちが待つ拠点へ帰る事にした。

 ラフィスには悪いが、現場の処理は任せた。


 軽キャンを走らせながら、俺は考える。


 倒したのは、ルファスとキャスカの祖国の軍だ。


 どう説明するか……

 みんなの顔を見ると、同じように気まずそうだ。


「考えてもしょうがねぇ!

 みんなも最初から解ってた事だろ?」


 俺は自分に言い聞かせるように言い、アクセルを踏み込んだ。


 しばらく走ると、拠点の屋敷が見えてきた――

戦争に勝ったが、仲間の祖国の国に勝ってもなぁ。

どう接すれば正解なのか答えがわからない。

「ヤッホー、勝ったよ!」

ってのも違うしアホ丸出しだ。

お通夜状態で伝えるのも何か違う気がするし、どうしたものやら。

多分、評価やブクマや感想が必要なのだろう。

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