68話 作戦会議と仲間の決意
はい、半殺しにされましたっ!
まあ、勘違いだとちゃんと理解してもらえたと思うのだが……
しかし、回復薬(小)があって本当に良かった。
胃が痛いが、みんなに言わないといけないよなぁ。
拠点の食堂を会議室代わりにして、俺は全員を呼び集めた。
レイラから回復薬を飲まされ、身体がようやくまともに動くようになった。
勘違いで半殺しにされてはたまったものじゃないが、まあ……よくある事だ。
いちいち気にしている暇はない。今は、とっとと始めるだけだ。
「ようし、みんな集まったな!」
俺の声に、全員の視線が一斉に向く。
食堂の空気は、いつもの賑やかさとは違い、張り詰めた緊張感に包まれていた。
俺の様子が普段と違うのを、みんなも感じ取っているのだろう。
俺は小さく息を吸い、吐く。
落ち着け。大丈夫だ。俺はやれる。
「みんな……単刀直入に言う。
この国の戦争に介入することになった」
その一言で、場の空気がさらに重く沈んだ。
「戦争って……ヴァルファ帝国相手でしょ?」
キャスカの声は、いつもの軽口とは違い、不安がにじんでいた。
胸がズキンと痛む。
「俺が、勝たせるさ」
言い切った。
曖昧な態度は取れない。
勝たせるつもりがないなら、こんな話はしない。
「みんなの気持ちは解っているつもりだが……俺を信じろ!」
俺は全員を見渡しながら言った。
“信じてください”じゃない。“信じろ”だ。
無茶苦茶なのは百も承知だが、今はそれしか言えない。
仲間たちの表情が揺れる。
そりゃそうだ。
いきなり戦争に介入すると言い出した上に、俺を信じろ、だもんな。
「それから、ルファスとキャスカは、この戦いから除外する」
ウィズたちの表情が一斉に変わる。
だが、これは譲れない。
「ヴァルファ帝国は、ルファスとキャスカの祖国だからな」
巻き込まない。
その一線だけは、絶対に守る。
ルファスとキャスカは俯いたまま、何も言わない。
「私はヒロシに従うから、なにをしたらいい?」
レイラが当然のように言ってくれた。
本当に、心強い。
「私も、ヒロシ様の奥さんですから」
プロムが柔らかく微笑む。
最悪、俺たち夫婦だけでもいい。
だが本音を言えば、冒険者パーティー『軽キャンクラブ』として、この戦いを“仕事”として受けたい。
ボランティアじゃなく、Sランクへ駆け上がるための一歩にしたい。
「よし!」
その時、ウィズが勢いよく立ち上がった。
「カイ、バン、フィリー! お前達も残って、ルファスとキャスカと一緒に留守番だ!」
突然の宣言に、バン、カイ、フィリーが固まる。
「そりゃないぜ、ウィズ!
お前一人じゃ言う事聞かねぇし、勝手に動くし、俺たちがサポートしねぇと役に立たねぇだろ。
ったく、しょうがねぇな……俺もついていってやる」
バンが頭を掻きながら言う。
照れてるのが丸わかりだ。
「ウィズとバンだけ?
アンタ達みたいな筋肉バカだけじゃノガミさんに迷惑かける未来しか見えないからダメですよぉ。
前には出ませんが、私も行きますぅ」
フィリーが呆れたように言う。
「え、フィリー行くなら、俺も行くよ!」
カイが慌てて手を挙げる。
いや、お前……それでいいのか?
「私も――」
キャスカが言いかけたところで、ルファスがそっとその手を掴んだ。
キャスカがルファスを見ると、ルファスは静かに首を振る。
「キャスカ。今は、ノガミさんの気持ちを考えるんだ」
その言葉に、キャスカは唇を噛み、涙を溜めて黙り込んだ。
祖国への思い、自分の無力さ、恐れ……全部が胸に押し寄せているのだろう。
(……ありがとう)
俺は、戦士として共に戦いたい気持ちを抑え、兄としてキャスカを守ろうとしたルファスに、心の中で深く感謝した。
みんなの覚悟は、もう十分に伝わった。
「誰も死なせないし、死ぬの禁止!
後は全部、俺に任せてもらおうか!」
俺の言葉に、全員の視線が再び集まる。
「だが、相手はヴァルファ帝国……勝算はあるのか?」
ウィズが真剣な顔で問う。
真剣な顔もできるんだな……いや、今は茶化す時じゃない。
「みんな、聞いてくれ。
俺が考えている策なのだが……」
俺は考えていた作戦を伝えた。
それを叩き台に、夜通しの議論が始まる。
地図を広げ、兵力を確認し、敵の動きを予測し、何度も何度も作戦を練り直す。
誰一人として、途中で席を立つ者はいなかった。
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会議が終わり、静まり返った食堂に俺は一人残った。
テーブルの上には、飲みかけの酒瓶と、散らばったメモ用紙。
窓の外には、雲ひとつない夜空と、丸い月。
「あとは……当日やるだけだ……」
策は練った。
だが、心配がないわけじゃない。
あまりにも急だった。
準備期間が短すぎる。
時間が欲しい。
もっと、もっと――
「時間が……!」
俺は酒を一口あおり、月を睨みつけた。
月は、何も答えない。
ただ静かに、冷たく光っているだけだ。
いつもながら、シリアスな展開になったが、時間が本当にないよ。
なんだ、戦争にって。
受けたの俺だけど、もっと準備期間とかあるだろ、普通。
絶賛戦争中の中に参加するって……




