第114話 軽キャン VS クラーケン
軽キャンとクラーケンの夢の対決。
クラーケンと軽キャンは、いつかはどこかで戦わなければならない宿命だったのかもしれない。
そんなもん、あるか!
兎に角、カイを救出せねばならぬ!
クラーケンの手にカイが捕まれている!
ん?
いや、足なのか?
手?足?……
(正解は、どっちなんだ)
「ええーい、どうでも良いだろう!
アホか、俺は。
カイ!今助けてやるからな!」
俺はアクセルを踏み抜いた。
ギュルルルルルーーッ!!
スクリューが水を巻き上げ、軽キャンが水中を弾丸のように突き進む。
周囲の水圧が一気に変わり、車体がギシギシと軋む。
(大丈夫!
これぐらいで壊れる軽キャンじゃねぇぜ!
女神の加護、そして、300万もした軽キャンだからな!)
「ちょっとヒロシ!
あんた、どうするつもりなの?」
「ハハハ、バカだなキャスカ!
相手はあんなデカい!
このまま突っ込めば体のどこかに当たるんだから、このまま突っ込む!
死ねぇぇぇ! イカ野郎!!」
「それって……」
クラーケンが巨大な触手を振り回し、水中をえぐるように叩きつけた。
ゴォォォォッ!!
水圧の衝撃波が走り、軽キャンの車体が大きく揺れる。
「「ぎゃああああああ」」
「大丈夫か、キャスカ、ライカ!
ちゃんとつかまってろ!」
「ヒロシ、前が見にくいぞ」
「何?ミロース」
前を見ると、巻き上がった泡が視界を真っ白に染めていた。
「うおっ、視界が!」
だが、止まれない。
止まるつもりもない!
触手にカイがいるのに、振り回しやがって!
俺の怒りの一撃(体当たり)を受けてみろ!
クラーケンがもう一本の触手を振り下ろしてきた。
「危ねぇぇええ!!」
俺はハンドルを切り、軽キャンを横滑りさせる。
触手が通過した後、激しい水流が渦を巻き、軽キャンの後部が引き込まれかけた。
「ヒロシ、軽キャンが」
「安心しろ。
ミロース、この俺が運転してるんだからな!」
「そうか」
「そうだ」
「そうだ。
じゃないわよ、全然説得力無い!」
「うるさいぞ、キャスカ!」
「ヒロシさん、またクラーケンが!」
アクセルを踏み込み、スクリューを全力回転させて脱出。
軽キャンは水中を跳ねるように加速し、クラーケンの真横へ――
「アホが、このノロマ!」
そのまま胴体へ突っ込む――
「死にさらせぇぇええ!!」
だが、クラーケンがカイを掴んだ触手を軽キャンの前に突き出してきた。
(ずるい!)
「回避ッ!」
俺はハンドルを全力で切り、軽キャンを水中で急旋回させた。
触手が頭上をかすめ、周囲の水が激しく乱れる。
ゴボボボボッ!!
泡の爆発が起こり、車体が揺れた。
「あの野郎、カイを盾にしやがって!」
カイを盾にされないように軽キャンはそのままクラーケンの背後へ回り込む。
だが、背後からイカ野郎の体を貫通したら、その先にカイがいる可能性がある。
「どうするよ……」
俺はアクセルを踏む足を止めた。
ここは一旦、正面に――
「何してんの? 早く行きなさいよ!」
キャスカの声がした瞬間、俺の右足に何かが落ちてきた。
「え?」
次の瞬間、俺の右足が勝手にアクセルを踏み込んだ。
「うおぉぉぉ?! キャスカァァァ?!」
視界のど真ん中に、キャスカの股間って?!
しかも、ハイレグTバックのスクール水着。
(なんでだよ!!)
どうやらキャスカが運転席の後ろから、頭から俺の足にダイブしてきたらしい。
軽キャンが加速を続ける――
ズボォォォォーーッ!!
軽キャンがクラーケンの胴体を貫いた。
黒い体液が水中に広がり、泡が激しく舞う。
(これがキャスカの……)
「って、あれっ?」
俺がキャスカの股間を凝視している間に、軽キャンはすでにクラーケンの体を突き抜けていた。
「やべっ」
急いでブレーキを踏む。
スクリューが逆回転し、軽キャンが減速していく。
「もう、邪魔!
この足のせいで見えにくいんだよ」
俺は視界を塞ぐキャスカの足を左右に押し広げた。
「キャァーーッ!!」
キャスカが叫ぶ。
うるさい。
(今はカイが先だ!)
俺はハンドルを切り、軽キャンを急旋回させた。
胴体を貫かれたクラーケンが、水中でぐらりと揺れている。
その触手の先――
カイがいた。
肉片になってなくて良かった。
ぐったりしているが、軽キャンは当たっていないようで本当に良かった!
触手が力なく開き、カイが解放される。
「カッ、カイーー!!」
俺は軽キャンをカイの体の真下に滑り込ませた。
ドスン。
軽い衝撃。
どうやら、うまくキャッチできたらしい。
背後では、クラーケンがゆっくりと沈んでいく。
「よし! このまま浮上するぞ!」
カイを天井に乗せたまま、軽キャンは海面へ向かって上昇していく――
何とか、クラーケンを倒し、カイを救出出来た。
……カイ、生きてるよな?
ブンブン振り回されてたし、水中だったし……




