第109話 レイラとお出かけ
今日は、レイラとのお出かけだ。
レイラ、プロム、ミロースと三人の嫁さんがいるから、二人きりで出かける事が滅多にない。
寂しい思いをさせて悪い夫だ、俺は。
少しだけでも、楽しい時間を過ごしてもらえたらいい。
あの街の事も気になるが、レイラが一番だからついでだ。
軽キャンクラブの拠点である家――
ベッドで目覚めた俺は、二日酔いでガンガンする頭を押さえながら食堂へ向かった。
ガタッ
「あー、気持ち悪……」
椅子に座り、テーブルに頭を伏せてぐったりする。
もう二度と飲みすぎないぞ。
「……いや、これ何回目の誓いだ?」
死んだ魚のような目でボーッとしていると――
トンッ。
目の前に小瓶が置かれた。
「はい、飲んで」
レイラだ。
回復薬を置いてくれた。
「サンキュー」
飲み干すと――
(おっ!?)
二日酔いが一瞬で消えた。
万能すぎるだろ回復薬。
もう医療の概念が崩壊するレベル。
呆れている俺の耳元で、レイラが囁く。
「後でね」
そう言って去っていった。
(……そうだ、二人で出かける約束してたんだよな)
急いで準備しなきゃな。
「よっしゃ、行くか!」
俺は勢いよく立ち上がり、自室へ走った。
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着替えを済ませ玄関へ向かうと――
「ヒロシ様、どこかに行かれるのですか?」
プロムに見つかった。
(やばい、レイラとのデートがバレる!)
「んー、あれだ、秘密。
ちょっと出かけてくる」
しどろもどろで言う俺。
プロムが完全に俺を疑っている目をしている。
「ふーん……ヒロシ様、お急ぎじゃなかったら二人で……」
プロムが密着してきた。
「はうっ!」
ズボン越しに触ってくるな!
理性が……理性が……!
(今日はダメだ! レイラとの日なんだ!
誘惑に負けたら男じゃない!)
「すまん。
本当に用事があるから俺。
プロム、帰ったら、なっ、なっ!」
誘惑を断ち切り、玄関を飛び出した。
外に出ると、今度はミロースが座っていた。
「ヒロシ、どうした?
そんなに慌てて」
次はお前か!
しかも――
「あー、ミロース。
パンツはどうした?」
「はいてないよ、見る?」
(いや、なんでパンツ穿かないんだよ!?
俺の理性を殺す気か!?)
「もう見えてるから!
隠しなさいよ」
ドラゴンでいつも裸の癖が抜けないんだろう。
まあ、服はちゃんと着てくれるようになったが、誘惑が……
俺も興奮するし、そのままでも。
違うだろ!
「テイ!」
俺はミロースを抱え上げ、そのまま家の中へダッシュ。
「こいつにパンツ穿かせて!」
プロムに押し付けて逃げた。
(鉄の意志を持つ男、それが俺……!)
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誘惑を断ち切り、ようやくレイラと合流できた。
「遅かったから心配したよ……で、二人には?」
「大丈夫、気づかれてない!
それじゃぁ、行こうか?」
「うん」
俺が腕を差し出すと、レイラが嬉しそうにしがみついてきた。
(……二人で歩くのって、久しぶりだな)
昨日ネオンを見た場所へ向かう。
だが、昼間だと雰囲気が違いすぎて分からないな。
(この辺だったような……?)
そこへ、白衣に和帽子、岡持ちを持った黒人の少年が歩いていた。
「寿司屋か!?」
俺は走った。
レイラも慌ててついてくる。
「早く帰らないと親方に叱られらー」
(なんて独り言!)
「おい坊主、ちょっと待て!
その格好は、寿司屋か? 出前中なのか?」
「……なんなんですか?
僕、仕事中なんで……」
少年は逃げようとする。
(逃がすか!)
バッ!
前に立ちふさがる俺。
(こいつの親方、日本人の可能性あるんだぞ!
マヨネーズの件もあるし、絶対会わせてもらう!)
「ほうら、少年。
俺達は怪しくない善良な人間だよ」
銅貨三枚をポケットに入れてあげた。
「優しいお兄ちゃん!
おいらについてきな!」
(……金で解決したが、それでいいのか少年)
少年を追いかけると、すぐ近くに店があった。
「アブ寿し?」
看板がかかっている。
暖簾はまだ出ていない。
「邪魔するぜ」
引き戸を開けると、奥から声がした。
「お客さん、すいませんね、まだ開店前なんですよ」
「親方に用があるお客さんですー!」
少年が叫ぶと、奥から親方が出てきた。
アフリカ系の男性だった。
(日本人じゃなかったのか……)
「情報量が多すぎて戸惑うが……
何処で寿司を習った?
日本人を知っているか?」
俺の問いに、親方の表情が変わった。
「飲み物出すから座ってな」
親方は奥へ引っ込んだ。
カウンターに座る俺とレイラ。
「ヒロシ、このレストラン知ってるの?」
「初めてだけど……レイラ寿司食べた事ないもんな」
「お寿司って、ヒロシがたまに作ってくれるアレ?」
(あれはバラちらしだ……)
「本物の寿司はもっと旨いぞ」
「食べてみたい!」
「親方の話がどうであれ、後で食べに来ような」
レイラが嬉しそうに頷く。
コトッ。
親方が飲み物を置いた。
(泥……?
これ飲み物って言っていいのか?
液体であれば何でも飲み物扱いしていい訳じゃないぞ!?)
茶色い液体。
周りが普通に飲んでるので……大丈夫なの?
俺も飲んでみるけど、本当に大丈夫なのかよ。
「……不味っ」
なんだこれ。
味もだが、後でお腹が痛くなるとか不安なんですけど。
「あんた、ニホンジンか?」
親方の言葉に手が止まる。
「ああ、俺は日本人だ」
親方は泥水をゴクゴク飲みながら語り始めた。
よく飲めるな。
「……そうか。
どこから話そうか……
(長いので要約)
・日本→アフリカ行きの飛行機が事故
・乗客が異世界召喚
・その人達が日本を想って、この街を作った
・その中に寿司職人がいた
・現地の人を弟子にとる
・その弟子は日本の親方に感謝している
・初代の遺言「日本人が来たら寿司を振る舞え」
・今まで日本人が来なかった
・俺が日本人と言った
・遺言を果たせるぜ、ハッピー
……と、いう訳だ」
長い話が終わった。
話が長いので途中からレイラは寝ていた。
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親方が寿司を持って戻ってきた。
寿司桶が置かれる。
(見た目は普通の寿司だな……)
飲み物の件もあるので、恐る恐る食べる。
「旨っ……」
普通に美味しい。
歴代の親方達、技術の継承ありがとう。
「おいひーー!」
レイラが頬張って可愛い。
「また来ような。みんなも連れて」
レイラが笑った。
(……日本人達は現地の人達と、頑張ってこの街を作ったんだな)
俺は先人達の苦労を偲びながら、寿司をいただいた。
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街を歩くと――
「ブーーッ!」
ラブホテルがあった。
「どうしたの? 大丈夫ヒロシ?」
「あ、ああ、ちょっとビックリしただけ」
(けしからん!
教育上いかがなものか!
転移してきた日本人は何を考えて……)
「レイラ、後で行ってみような」
レイラはよく分かっていないようだが、気にしない。
俺は純粋に建物の構造が気になるだけだ。
おっと、よだれが。
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「レイラ、今日はレイラの為の日だ。とことん遊ぼう!」
「……ヒロシ、うん!」
レイラが駆け出す。
俺はその背を見て微笑んだ。
(こいつに一番苦労かけてるしな。今日はレイラに尽くそう)
「ヒロシーー! 早くーー!」
「おおーー! 今行く!」
俺はレイラの元へ駆け出した。
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真っ暗になるまで遊び、最高の一日だった。
……ただ、家に帰ったらプロムとミロースに「ズルイ! ズルイ!」と非難されて困ったがな。
そんな一日の話だ。
寿司も食べれたし、レイラとゆっくりイチャイチャ出来て、新婚に戻ったみたいだった。
レイラもプロムもミロースも、みんな大事な俺の奥さんだ。
夫婦4人が、この先も仲良く過ごしていけたらどんなに幸せだろうか。
まずは、今晩から仲良くしていこう。




