第104話 そんな話もあったなって話
軽キャンの機能で家が出るとは。
最高じゃないですか。
平和だし、空気もおいしいし、環境が良いよね。
今日は何して遊ぼっかなぁ。
家が出来て、二日がたった。
新居は、快適そのもの。
家具は全部そろってるし、キッチンには大型の冷蔵庫、電子レンジ、ガスレンジ完備。
大きな風呂はちゃんとお湯が出るし、最高だぜ。
全員分の個室はあるし大きなベッドで快適に就寝が出来る。
……その、夫婦で仲良く語り合う夜の生活も快適で最高だぜ!
「いやぁ、家が出来て生活水準がワンランク上がったな」
毎日キャンプだと、レジャーじゃなく単なる生活になってしまうからな。
愛する嫁さんや仲間に囲まれた平和な生活。
最高じゃないか。
「ずっと、こんな生活が続いたら良いな」
この生活に大満足。
ただ……何か忘れている気がする。
「なんだっけ?」
……駄目だ。
思い出せない。
まぁ、困ってる事もないし……今が良ければ良いんじゃないか?
「よかった、解決!」
さぁーて、今日は何して遊ぼっかなぁ。
「フフフン、フフン」
ご機嫌で部屋を出る俺。
今日もいい天き――
「思い出したぁああああ!!」
鼻歌でご機嫌じゃないよ、俺!
「冒険者として、Sランクを目指していたんだった……」
(完全に忘れてた)
「こうしちゃいられない!」
俺は速やかに全員をリビングに集合させた。
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「何よ、みんなを集めて?」
キャスカ、不満そうに言うんじゃない。
本当に困ったやつだぜ。
俺は軽くスルーして、言いにくいが本題に入るぞ。
「……みんな、Sランクの冒険者を目指す件だが」
リーダーの俺が行動もせずに遊び呆けてたから、みんな冒険者の件不安だったろうな……
「あ」(レイラ)
「ん」(プロム)
「そんな話も前にあったわね」(キャスカ)
「そうでしたね」(ルファス)
「今日の晩御飯は何ですか?」(ウィズ)
カイバン、フィリーも含め、軽キャンクラブのみんながざわざわ言いだした。
……うん。
(……全員忘れてたな。
冒険者として俺なんかよりよっぽどキャリアがあるウィズの残念な発言は、どうかと思うが)
「みんな、完全に忘れてたね……
ええーい!
嘆かわしいぞ。
それでも軽キャンクラブのメンバーか?!
初心を忘れてどうする!」
「あんたも忘れてたんでしょ」
鋭いな、キャスカ。
「ああ、完全に忘れてた」
「よく、人に注意出来るわね。
でもさ、どうすんの?
Sランクって言ったって何やればいいのよ?」
キャスカが聞いてきたが、良い質問だ。
「俺も、知らん!
どうするんだ?」
聞き返したら、キャスカが口をパクパクさせて呆れている。
「知らないで、Sランクがどうのって言ってたの?」
「あのな、キャスカ。
知らないものを知ったふりしても仕方ないだろ?」
知ってる人間に聞けばいいんだから大丈夫。
ウィズたちが俺たちに合流する前に冒険者として活躍してたんだから、聞けば済むことだ。
「しかし、いまさら冒険者稼業ってもなぁ」
バンが腕組みして……乗り気じゃなさそうだな。
「そうですよ。安定した暮らしが出来てるんですし……」
カイも同調なのか。
色んな意見があるから仕方ないのかもしれませんが、
「嘆かわしい!
人間、上を目指さないと成長しませんよ!」
名言製造機こと俺がみんなに言った!
だが、反応はいまいちだ。
(ああ、もう。
まったく俺の言葉が響かなかったようだ。
でも、目標もなくダラダラ生きてどうする?
サラリーマン時代の俺みたいになるから、頑張ろうぜ)
「あれ、私達、ランクなんだっけ?」
レイラ……正気か?
「情けないぞレイラ。
自分のパーティのランクを知らないなんて……
俺達は……
うん。
キャスカ、教えてあげなさい」
俺は華麗にキャスカに振って、答える栄誉を与えた。
「……」
キャスカが無言で目を見開いて俺に抗議してきた。
気まずいので視線を外す。
僕、任せたんで。
「えっと、Cランクですよ」
ルファスがギルドカードを掲げた。
Cランクだっけ?
いや、そうだった気がする。
(そのカードに書いてあるのか?
……そういえばそんなの貰ったな。
手元に無いけど。
とりあえず、ルファスに乗っかろう)
「そうだ、ルファス」
キリッとして答えたが、キャスカが俺を睨んでいる。
そんな事より、俺のは?
……俺のカードどこにやったっけ?
「レイラ、ギルドカードってどうした?」
「ヒロシが無くすといけないからって、私のカード、プロムのと一緒に渡したわよ……」
レイラが不安そうな表情になる。
いや、不安になって当然だよな!
「……」
(……無くした?)
変な汗が大量に出る。
(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい)
俺は部屋を飛び出し、軽キャンへ走った。
「大事なものなら軽キャンの中だろ!」
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「ほらね、あった!」
ダッシュボードの中にカードが三枚入っていた。
「良かった」
泣きそうになりながらダッシュで戻る。
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「はぁ、はぁ……あ、あったよ!」
ギルドカードを見せると、レイラ達がすごく不安そうな顔をしていたが、あったんだから大丈夫だって!
「しっかし、俺達ってまだCランクだったのか?」
バンがカードを見ながらしみじみ言う。
「元はAランクまで上がったもんなお前ら」
軽キャンクラブに加入したから低いランクからになったのに放置してて申し訳ない。
全員確実に昔より強くなってるんだから、高難易度の仕事バンバンこなしていきゃ、すぐにランクなんて上がるだろう。
「とりあえず、じゃんじゃん依頼をこなして、まずはBランクに!
兎に角、仕事がなけりゃ話にならない。
街に向かうぞ!」
みんな、さっきまでやる気なかったのに、街に行くと聞いたら急にやる気満々。
さすが軽キャンクラブのメンバーだぜ!
目標が決まったらやる気スイッチが入るんだよな。
「すぐに行きましょう!」
キャスカの言葉に女性陣が盛り上がる。
……女性陣?
「……まさか買い物に行きたいだけじゃないよな?」
呟いたが、そんな訳ないな。
小声で良かった。
聞こえてやる気無くされても困るからな。
「よーし!
出発するから、みんな、家から出て」
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みんなが家から出ていくのを確認した俺は、地下室へ行き軽キャンに乗り込み、変形解除!
ドン!!
家が消え、軽キャンが残った。
ルファスの運転技術向上のためってのもあるので、軽キャンとキャンピングカーで出発することにした。
「そんじゃ、メンバー紹介いってみよう!」
■軽キャンピングカー
四名乗車
俺、レイラ、プロム、ミロース
■キャンピングカー(キャンピングトレーラー付)
八名乗車
ルファス、キャスカ兄妹、ウィズ、ユリス夫妻、
カイ、フィリー夫妻、バン、ライカ夫妻
全員乗車は完了だ!
魔導通信開始!
俺
「ルファス、調子はどうだ?」
ルファス
『いつでも行けますよ! 通信状況も良いです』
俺
「魔導通信は常時通話モードにしといてね」
ルファス
『了解ですヒロシさん!
分からない事があったら質問します』
俺
「任せとけー!
ゆっくり行くから、俺の軽キャンについてくるんだぞ」
ブロロローー……
小さな俺の軽キャンが走り出し、後ろからルファスの大きなキャンピングカーがついてくる。
(でっかいのとちっちゃいの……親子みたいだな)
俺
「そういや並んで走るの初めてだよな!
ルファス、運転大丈夫?」
ルファス
『安心してください!
だいぶ練習したので大丈夫だと思います』
サイドミラーを見ると、ルファスのキャンピングカーがふらふらしている。
緊張してるのかな?
長丁場だから、そんな緊張してたら持たないぞ。
俺
「ルファス、落ち着いて。
長い道のりだから肩の力抜いていこうな」
ルファス
『は、はい』
俺の言葉で落ち着いたのか、ふらつきが少し収まったみたいで良かった。
俺達は街を目指し運転を続ける。
ブロロローー……
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昼過ぎ。
ドラゴンの里を出て二時間ほど走ったので休憩を入れる事にした。
ルファスは初心者だし、もっと早めに休憩でも良かったかもな。
ブロロローー……
俺の軽キャンが広場に停まると、続けてルファスも横に停車。
「ああぁーー!」
車外に出て体を伸ばす。
みんなも出てきて、思い思いに休憩に入る。
「久々の運転、すっごい楽しい!」
俺としたことが、嫁さん達といちゃつかずに運転に集中していたよ。
「さてと……」
軽キャンの冷蔵庫から缶コーヒーを二つ持ってルファスの元へ。
「疲れたか?」
「大丈夫、まだ行けますよ」
ルファスは頭を下げて俺の差し出した缶コーヒーを受け取った。
甘いコーヒーが体に染みる。
タバコとの相性はバッチリだ。
「疲れたり無理だと思ったらすぐ言えよ。
お前、無理するタイプだから」
「ありがとうございます。
……無理したら逆に周りに迷惑がかかる、でしたね」
ルファスが笑う。
前にルファスに注意で言った言葉、覚えててくれたんだ。
「ああ、そういうことだ。
ルファス、わかってんじゃん」
俺達はコーヒーを飲みながら、みんなの様子を見て回る。
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休憩後、再出発。
舗装されてない道は俺でも怖い。
細い道もあったが、ルファスは必死に運転して乗り切った。
(ホントに上達したな、ルファス)
少し暗くなってきたので、車中泊ポイントを探しながら運転。
ブロロローー……
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水辺の良い感じの場所を発見。
「みんな、今日はここでキャンプして車中泊ね!」
魔導通信で伝えて駐車。
ライカとユリスが「家は出さないの?」と聞いてきたが、今日は車中泊と決めている。
(なぜって? 楽しいからだよ!)
外での晩御飯、焚火、夜の静けさ、非日常。
最高だ。
焚火の炎を見ながら酒を飲む。
最愛の妻達がそばにいる。
(……ホントに最高だ)
男連中は奥さんと良い雰囲気になっていた。
焚火の炎、夜の静けさ、満天の星空――そりゃそうなる。
「ほら、見てごらんレイラ。星が綺麗だよ。
プロムもミロースも見てごらん。
ん? どうしたミロース? 何?」
ミロースが見ている先には、ルファスのキャンピングトレーラー。
……ユッサユッサ揺れてるし。
「……」
(せっかくロマンチックな雰囲気が台無しじゃないか!)
流石にイラっときたが、
(いや、落ち着け……見なきゃいいんだよ)
「ミロース、そっちを見ない。ほら、星空を……」
ユッサユッサ
「だから星を見なよ、ミロース」
ユッサユッサ
「な、綺麗だろ?」
ユッサユッサ
ユッサユッサ
ユッサユッサ
ユッサユッサ
ユッサユッサ
ユッサユッサ
ユッサユッサ
ユッサユッサ
「気になるわっ!!」
キャンピングカーの中で何をしてるんだか……
いや、考えるな、俺。
一度気になったらダメだ。
ユッサユッサが気になってしまう。
良い雰囲気だったのに……
俺はレイラ、プロム、ミロースを連れて軽キャンに戻ることにした。
明日も早いし、もう寝よう。
ポップアップルーフを上げて、二階に俺とミロース、一階にレイラとプロム。
(なんだか疲れたし、今日は早めに寝よう)
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朝になり、簡単に朝ごはんを済ませて出発。
久々の車中泊、楽しかったな。
(またやりたい。ソロも良いな……寂しいかもしれないけど、自分のペースでやれるし)
そんなことを考えながら運転を続ける。
森の雰囲気が変わってきた。
向こうが明るく……
「ルファス! もうすぐ森を抜けるぞ」
言ってる最中に森を抜けた。
草原が広がっている。
見晴らしが良くて運転してても気分が良いね。
『ヒロシさん、もうそろそろ街ありますかね?』
「さすがにまだじゃないか?
焦んないで、ゆっくり行こうぜ」
『ヒロシさん、運転楽しいです!』
ルファス……
「だよな!
お前が運転好きになってくれて良かった!
たまには一緒に運転して出かけような」
(運転できる人間が一人じゃないって思うと、なんか嬉しい)
軽キャンとキャンピングカーが仲良く連なり草原を駆け抜ける。
ところで――
(街、この方角で合ってるよな……?)
「いや、俺だから大丈夫だ!」
自分に言い聞かせた俺は、自信満々で運転するのであった。
冒険者でSランクを目指してたことをすっかり忘れてた。
まあ、すでにその実力があるんだから、Sランクと名乗って良いようなものだけど、あくまで自称だから、意味が無いな。
カードの存在も忘れてたし、そういう隙が良いのかも!
俺が完璧超人すぎて読者が委縮してしまう防止になっているのと、ほっとけないって母性本能を刺激するところになってるんだもの。




