第100話 ウィズへの聞き取り
大好きなミロースが嫁になってくれた。
とても良い旅になったので気持ちよく帰国しよう。
ってダメだろ!
あぶねぇ。ウィズの嫁さん探しにきてるんだった。
それが、何故俺の嫁さんが出来た?
まあ、祝福すべきことなので何の問題もないから良しとしてだ。
ウィズの野郎、俺たちに黙ってコソコソと何をしてやがるんだ?
次の日の夜・俺の部屋――
「ヒロシ、見ろ。
ウィズがまた出ていく」
ミロースが窓の外を指さした。
「ほんとだ……」
ウィズが、こそこそと宿を抜け出していくのが見えた。
(毎日、毎日。
何処に行ってんだ、アイツ)
昨日の夜も出ていったらしいが、朝、直接ウィズに聞いたらはぐらかされた。
昼間もそわそわしていたし……
(怪しいぜ、ウィズ……)
ミロースを後ろから抱きしめて窓の外を見つめる俺。
ミロースもウィズが走り去った方向を見ている。
「ヒロシ、今日は……」
俺がキスをしたので話の途中になってしまった。
我慢できずに、ごめんなさい。
「もう……。
ウィズのこと、気になるんだろ?」
「まあな。
あいつ、完全に何か隠してる。
ウィズだから、犯罪的な事はしていないのだろうけど。
でも、俺たちにも秘密にしなきゃならない事なのかね?」
ムッとしてる俺に、ミロースは小さく笑った。
「そう拗ねるな。
明日の朝、ちゃんと聞けばいい」
そう言って今度はミロースの方からキスをしてきた。
そして俺の頭を撫でてくれる。
……なんだこの癒し。
「好きだ! ミロース!!」
「わッ! ヒロシ……」
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次の日の朝・食堂――
俺とミロースは、眠そうな顔で階段を降りてくるウィズを待ち構えていた。
ミロースが目で合図してくる。
昨日は、軽く聞いただけだが今日は違う。
(任せろ。尋問には自信がある)
ミロースに頷いて、俺はウィズの前に立ちはだかった。
「ウィズ。昨日の夜、どこ行ってた? 吐け!」
胸ぐらを掴んで言った。
人間、誠意をもって接すれば、心を開くってもんですよ。
「なんて尋問の仕方だ……」
ミロースが引きつった顔で呟く。
「な、なんだよ突然」
ウィズが言い返してきた。
この野郎、生意気にも俺に意見ってか?!
「言え! 言え! 言えー!」
俺がおとなしい内に、さっさと自白しろ、この野郎!
「く、苦しい……!」
ウィズの顔が紫になっていく。
「なんて、強情な奴だ!
そこまで、秘密にしなきゃいけない事なのかよ!」
ぐいぐい締め上げる俺。
ガツッ!
「痛っ!」
俺は殴られてウィズを放した。
頭、もげてないよね?
凄い痛みなんですけど……
見ると、ミロースが椅子を片手に立っていた。
「バカ!
そんなに締めたら、喋れないだろう。
ウィズを殺す気か?」
「椅子で殴る必要あった!?」
俺も死ぬかと思ったぞ。
ミロースに抗議してる間に、起き上がったウィズが走って逃げていった。
「あっ! 逃げやがった!
待てよ、この野郎!」
「追うぞ、ヒロシ!」
ミロースが走り出す。
いや、走るの?!
「いや、頭痛いし……」
頭から血がドクドク出てるし、やる気が失せた。
行くならお一人でどうぞという顔をしている俺。
ミロースが振り返ってこっちを見てるけど、限界だよ俺。
チラッ。
ミロースが俺の制服を少しだけたくし上げ、白い太ももを見せてきた。
(ゴクッ……)
そして続く、小悪魔のような笑み。
「……行きます!」
俺は全力で走り出した。
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村の中――
「はえーな、ミロースもウィズも!」
必死に走る俺。
このまま行くと……村長の家の方だよな?
さらに走ると、ミロースが片膝をついて家の中を伺おうとしていた。
そこにいるのか?
その家って……
「ミロース、ウィズは?」
息を切らしながら聞くと、ミロースが口元に指を当てた。
おっと、声が大きかったか。
声を出さず頭だけ下げた。
「中だ」
ミロースが窓を指さす。
俺はそっと中を覗く。
「……はっ!」
声が出そうになって慌てて口を押さえる。
目の前で、ウィズとユリスが抱き合いキスをしていたからだ。
(なんて破廉恥な!
いや、なんか……青春っぽい……)
隣を見ると、どうだという顔をしてミロースが俺を見上げていた。
俺の角度からだと、ミロースの胸元が……
あ!
立ち上がって、中を覗き込んでいる。
俺の胸元が見えなくなっちゃったよ!
「み、ミロース……」
俺が見つめてるのに、ミロースはウィズたちを見ている。
俺にはミロースしか見えてないのに!
「が、我慢できん!」
「ちょ、ヒロシ!?
ここは人の家の敷地内だぞ!」
俺はミロースを押し倒した。
「や、やめろ……
こんなところで……
恥ずかしい……」
ミロースが顔を赤くしている。
変身するとき外で素っ裸になるよな?
ドラゴンだから余裕で跳ね除けれるだろ?などと、野暮なことは考えない。
何故なら、暗黙の了解。
俺もミロースも、こっちの方が興奮するからだ。
(えへへ、かわいいミロース……)
そこへ――
ガチャ。
「ちょっと、あんた達、人ん家の前で何してるんですか?」
ウィズが窓から顔を出してきた。
固まる俺とミロース。
「……いや、ミロースの肩にゴミがついてて掃ってただけですけど」
「ヒロシの善意の行動ですけど、なにか?」
俺とミロースは平然と答えた。
凄い呆れた表情で俺たちを見るんじゃないよ。
お前たちだって、似たような事してたじゃねぇかと思ったが、藪蛇になりそうなので黙る。
「中に入りませんか?」
ユリスが言ってくれて、正直助かった。
この空気を一回、リセットしよう。
「ミロース、行こう」
俺はミロースの手を引いて玄関へ向かう。
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ユリス宅・リビング――
俺とミロース、ウィズとユリスがテーブルを挟んで座る。
「ウィズ、どういうことだ」
俺がキリッとして聞く。
そして、さらっと、さっきの俺とミロースの件は無かった事にした。
「旦那さんを亡くしたユリスの相談に乗ってたら……へへへ」
ウィズが頭を掻いて照れてやがる。
(へへへ、じゃねーよ!
心配させやがって。
なんで、秘密にしてたんだよ!)
イラっとした俺はウィズを睨んだが、惚気ているバカ野郎は全く気にしていないみたいだ。
まあ、いい。
むしろ、ウィズが好きな女性が出来たって事なら嬉しいことじゃないか。
……だけど、大切なのは、互いの気持ちだ。
「ユリスは、ウィズのこと好きなのか?」
「……はい」
俺が聞くと、ユリスは小さく頷いた。
ウィズで本当に良いのだろうか?
ウィズだぞ?
まあ、人の好みはそれぞれだからな。
ユリスがかなりの美形なので嫉妬込みで、軽くウィズに失礼な事を考えながらウィズを見る。
遊びか?
本気なのか?
ユリスと生涯をともにしたいのか?
「ウィズは?」
ウィズなのに、そんなに真剣な顔で……
いや、茶化すのはやめよう。
お前の気持ちは?
「好きっす! こんな気持ち初めてっす!」
(お前そんな(高校球児みたいな(偏見))キャラだったっけ?
舐めてんの?)
おっと、いかんいかん。
予想外のウィズのキャラ崩壊に突っ込むところだったぜ。
大事なところだ。
おちゃらけ無し!
「責任持って守れるか?」
「守るっす!」
「ユリスは?」
「ウィズを守ります」
俺は二人を見て、うん、と頷いた。
決まりだな。
「じゃあ結婚しろ!
俺とミロースも結婚したから!」
「えっ!?」
ウィズとユリスが驚く。
ミロースは照れながら俺の袖を引っ張った。
俺は、その手を握ってミロースに微笑みかけた。
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通信――
ウィズ
「カイ! みんな! 聞こえるか!」
カイ
『ウィズ、生きてたか!』
ウィズ
「俺、結婚するぞ!」
バン
『おめでとう!』
フィリー
『おめでとう!』
レイラ
『お前、結婚できたの?』
プロム
『用事終わったなら、早くヒロシ様を私たちの元に返してください』
ウィズ
「それと、ヒロシとミロースも結婚するぞ!」
(おいバカやめろー!!)
俺は固まった。
なんでそうなる、ウィズ……
帰ったら俺の口から言うって、さっき言ったよね?
絶対に秘密って言ったことをなんで言うの?
コレだけは何があっても言うなって言ったのに、なんなの?
景色がぐにゃぐにゃに歪んで見える。
ヤバい!意識が……
レイラ
『ヒロシ、聞こえるかな?』
ドキーーンッ!!
ヒロシ
「……あ、ああ。
き、聞こえてるよ」
レイラ
『無事に早く帰ってきてね』
(……優しい声が怖いんですけど)
ヒロシ
「あ、ありがとう。
ケガとかしてないから、大丈夫だよ」
レイラ
『良かった。
五体満足でないと、ちゃんと出来ないから』
(五体満足でないと、何が出来ないんですか?)
プロム
『ミロースは第三婦人ですから、その辺本人にちゃんと理解させてから帰ってきてください』
俺「お、おう……」
(事務的すぎて逆に怖い……)
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・
宿――
ユリスの家にウィズを残し、俺とミロースは宿へ戻った。
(ハハハ、明日帰ったら……俺、死ぬな。ハァ……)
後悔という感情は全くない。
死刑確定のようなものなのに、嬉しさが勝っている。
俺はミロースの手を握る。
「ヒロシ、どうした?」
ミロースにキスをする。
この時間がずっと続けば良いとキスをする。
「ミロース、どうしようもない俺だけど、よろしくな」
「……ヒロシ、私を幸せにするんだぞ」
ミロースが微笑んだ。
「それは、大丈夫。
俺はミロースといるだけで幸せだから、ミロースにも絶対伝わっているハズだ。
だから、俺の幸せに引き寄せられてミロースもずっと幸せだ!」
「なんだ、そんなの。
……まあ、私が幸せなのは、ヒロシの幸せが伝わってるからなのかな」
「……ミロース」
俺は、ミロースのその笑顔を胸に刻んだ。
ウィズ、何故お前はダメだ止めてねって言ったことをやってしまうんだ?
……まあ、遅かれ早かれ言わなきゃいけない事なので、ポジティブに考えよう。
第3婦人と言っても愛情の順じゃねぇし、等しく嫁さんを愛する誠実な男、それが俺だ。
ウィズも素晴らしい奥さんを手に入れたし、本当に良い旅になったな。
……怖くて帰りたくない。




