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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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98話 襲撃

「ルネさん、保存魔法をお願いします」

「はーい」


 今日も無事にカフェハウスの営業を終えました。

 営業が終わった後の私の仕事は、厨房係のジェシカさんの指示で、保存する食品たちに結界魔術をかけて保存をすることです


「保存!」


 ――パアァァー!


 光魔法の輝きが、料理や野菜や果物たちを包みました。


 結界魔術を発動する聖句は「保存」ではないのですが。

 私は結界魔術を使うことに慣れているので、やろうと思えば無詠唱でも発動できます。


 でも声を上げたほうが集中がしやすかったり、タイミングが掴みやすかったりするので、最近は結界魔術を使うときには「保存」と言うことが習慣になっていました。

 魔法を発動する感覚さえ掴めてしまえば、お決まりの聖句を唱えなくても、好きな言葉や無詠唱でも出来るのです。


「保存魔法、良いなぁ」


 厨房の雑用係のベティさんが、私に羨望の眼差しを向けました。


「食品を保存する魔法なんて、料理人だったら絶対に欲しい魔法ですよ。氷冷箱(アイス・ボックス)が無くても保存が出来るなんて……便利すぎる!」


 氷冷箱(アイス・ボックス)というのは、箱の中に入れたものを氷の魔石の力で冷やせる魔道具です。

 氷冷箱に入れておけば、冷たい温度で保管が出来るので食品が長持ちします。


 でも氷冷箱はとても良いお値段の魔道具です。

 さらに定期的に氷魔法を充填しなければならず、氷魔法は水魔法の上位魔術なので維持費も結構かかると聞きました。


「私も光魔法か水魔法の上位魔術が使えたら良かったのになぁ」


 願望を口にしたベティさんに、ジェシカさんが冷静な顔で言いました。


「光魔法や水魔法が使えなくても、料理の腕を上げて稼げるようになれば大きい氷冷箱が買えるよ」

「たしかにそうですけどぉ……」


「公爵家の厨房には、やっぱり氷冷箱があるんですか?」


 私がそう尋ねると、ベティさんが即座に答えました。


「ありますよ。すんごい大きいのが三つ」

「三つも?!」

「魔道具でも調理器具でも、公爵家には最新式のものが何でも揃っていますよ」

「凄いんですね」

「ルネさんの保存魔法のほうが凄いと思います」

「そうですか?」

「氷冷箱ではお料理をそのままの状態で保存することは出来ないですから。保存魔法は最強ですよ」



 ◆



「では、お先に失礼しますね」

「お疲れ様でした」


 厨房係のジェシカさんとベティさんは、今日の仕事を終えて先に帰りました。


 給仕係のキャリーさんとプリスさんもカフェハウスの仕事は終えていますが、彼女たちは私とニーナの護衛でもあるので、私とニーナが仕事を終えるのを待ってくれています。

 私とニーナの帰り道の護衛も、彼女たちがスタイン公爵夫人に指示されている仕事なのです。


「ニーナ、こっちは終わったよ」


 厨房の仕事が終わったことを、私は事務室で仕事をしているニーナに伝えました。


「こっちももうすぐ終わるよ」


 事務室ではニーナが算盤(アバカス)の玉をパチパチと弾いて、今日の売り上げを計算してくれています。


「今日の売上も良い感じだよ」


 ニーナは計算の終わった伝票をまとめると良い笑顔を浮かべました。



 ◆



「ホバート様、通報されてたの?!」

「うん。火魔法を見た人が第二騎士団に通報したらしいよ。それでホバート様はエリオット様に注意されてた」


 私たちはカフェハウスの今日の仕事を終えると、おしゃべりをしながら裏口から店の外に出ました。


 ――カチャ。


 私は裏口のドアに鍵をかけました。


「それでホバート様はどうしたの?」

「気を付けるって言ってたよ。自信満々な顔で」

「それって……本当に気を付ける気があるのかしら?」


 私とニーナはおしゃべりをしながら、建物の隙間の細い路地を通って、店の表の通りに出ました。

 護衛のキャリーさんとプリスさんも一緒です。


 すると……。


「……!」


 表の通りには人相の悪い男たちが三人いて、私たちに近付いて来ました。


 私たちの護衛をしているキャリーさんとプリスさんが、すっと、私たちの前に出ました。


「何の用ですか」


 キャリーさんがそう問いかけると、男はニヤニヤ笑いを浮かべて答えました。


「そこのお嬢さんにちょいと用事があってね」


 男たちの一人がそう答えるや否や。


 ――ピーッ!


 プリスさんがかまえていた呼子笛(ホイッスル)を吹きました。


「それが仲間を呼ぶ合図か」


 男は面白そうに笑いながら、呼子笛を吹いたプリスさんに言いました。


「だが、残念ながら、他の護衛はもういないぜ。みんな、おねんねしてるよ」


 キャリーさんとプリスさんが表情を硬くしました。


 男たちはそれぞれがポケットに手を入れました。


「お前たちも寝ちまいな」


 男の一人がポケットから何かを出すと、それを私たちに投げつけました。


突風(ガスト)!」


 プリスさんがそう叫び、魔術を繰り出しました。


 ――びゅううう!


 突風が巻き起こり、男が投げたものを弾き飛ばしました。


 弾き飛ばされたものは小袋のようなもので、ポトリと石畳に落ちると、小麦粉をフウっと吹いたときのように白い煙をまき散らしました。


(眠り袋?!)

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