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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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96話 来訪者

「モルさんの属性は何ですか?」

「私は土属性です」


 今日もカフェハウスに、魔法士さんたちがやって来ています。

 常連になった魔法士のモルさんも来ていて、いつものカウンターの席に座っています。


 モルさんは私に魔法について色々と教えてくれます。


「土魔法なら……モルさんは土を飛ばすんですか?」

「私はそういうことはしません」


 モルさんはふっと得意気に微笑みました。


「子供の泥遊びではあるまいし」

「ではどうやって戦うんですか?」

「土属性は、よほど力が強ければ大地の形を変えて戦うこともありますが、大抵はゴーレムを使います」

「ゴーレムって、泥人形ですか?」

「そうです。戦うときはゴーレムを使います」

「モルさんもゴーレムを持っているんですか?」

「一応持っていますが。私は普段は戦わないので戦闘用ゴーレムは持ち歩いていません。持ち歩いているのは普段使い用のゴーレムです」


(普段使い……?)


 普段使い用のゴーレムって何でしょうか……。

 ホバート様もですが、魔法使いは風変りな人が多い気がします。


「お見せしましょう」


 モルさんはそう言うと、懐からお人形を出しました。

 お酒の瓶くらいの身長の木偶(でく)人形で、顔がちょっと怖いです。


「泥人形じゃないですね」

「泥人形ですよ」

「木製に見えます」

「素材は泥です」


 そういってモルさんはお人形をカウンターに立たせました。


 ――トン。


「ちゃんと立つんですね」


 立つようなバランスのお人形には見えないのですが、お人形はちゃんと二本足で立っています。


「踊りますよ」

「え?!」

「ほら」


 ――カタカタカタ。


 お人形がカウンターの上で、手足を動かしてクネクネと踊り始めました。

 ちょっと不気味です……。


「す、凄いですね……」

「土属性は操作術に長けていますので、こういったことができるのです」



 ◆



「妹よ、兄が来たよ」


 お昼になるとホバート様がいらっしゃいました。


昼食(ランチ)をお持ちしますね。モルさんにも」

「モルモットはまた来ているのか」


 少し不愉快そうな顔をしてそう言ったホバート様は、カウンターの席に座っているモルさんの隣に座りました。

 隣りに座るくらいですから、ホバート様はモルさんのことを嫌いではないのでしょう。


「ボブさん、私のことはモルさんと呼んでいただけると嬉しいです」

「貴様は魔法塔の働き鼠だろう。毎日、昼間からここに居て良いのか?」

「仕事は午後からやることにしています。時間に比例して成果が出るというものでもありませんので」

「そんな仕事があるのか?」

「仕事には魔法を使いますので、魔力を養うことも必要なのです」


(ホバート様とモルさんは、もしかして仲が良いんじゃないかしら?)


 私は昼食のメニューをカウンターに出しながら、ホバート様とモルさんがおしゃべりしている様子を見て思いました。

 言いたいことを言い合っているので、仲が良いのではないかと。


(そういえばホバート様も土属性を持っているんだったわ。同じ属性同士で気が合うのかしら)


 ――チリン。


 入口のドアに付いている(ベル)が鳴りました。


「いらっしゃいませ」


 給仕係のプリスさんが、新しいお客さんを案内しています。


(あれ? 本物の庶民の人かな?)


 お客さんは二人組の男性でした。

 庶民の服装をしているお客さんは珍しくなく、むしろ庶民の服装でなければ入店をお断りしていますが。

 そのお客さんたちは庶民に変装をしている人たちと違って、本物の庶民のように見えました。


(ついに庶民にもカフェハウスの評判が届いたのかしら?)



 ◆



「毛色の違う輩が来たな」


 テーブルの席で歓談しながら光魔法料理を堪能していた魔法士の二人は、入店してきた客を見て訝し気に眉を寄せた。


「あやしい奴……」

「悪い虫ですかな」

「そうかもしれん。ルネさんを見ている」



 ◆



 ――チリン。


 入口のドアに付いている(ベル)が鳴り、また新しいお客さんが来ました。

 最近のカフェハウスは繁盛しているので、どんどんお客さんが来るのです。

 でも、そのお客さんは……。


(騎士様?!)


 それは第二騎士団のエリオット様とダレス様でした。

 真顔のエリオット様の後ろで、ダレス様が苦笑いをしています。


「申し訳ありません、身分を示す服装でのご入店はご遠慮ください」


 給仕係のキャリーさんがそう説明すると、エリオット様は生真面目な顔のままで言いました。


「いや、我々は客ではない。先日、この店の前で魔法による争いがあり、火柱が立ったと聞いた。念のため店主に事情を聞きに来た」


(ホバート様の魔法のことだわ)


 エリオット様の話を聞いていたのか、昼食をとっていたホバート様がカトラリーを置いて立ち上がりました。


「それなら私が説明しよう」

「スタイン公爵令息にご協力いただけるのは幸いですが、まずは店主に話を聞きたいのです」


「解りました。奥のお部屋にどうぞ」


 私はカウンターから出ると、エリオット様たちを案内しました。

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