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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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95話 闇ギルド

「お父様、聞いてください!」

「メレディス、その剣幕はなんだ」

「ホバート様に婚約破棄をされた真の理由が解ったのです!」


 メレディスは下町の茶房カフェハウスで見たことを、父バーナム子爵に伝えた。


「ホバート様は下町の娘に浮気していたのです!」

「浮気か……」


 バーナム子爵はメレディスの訴えに微妙な顔をした。


「まあ、よくあることだな」

「良くありません! 相手は下町の娘なのですよ!」

「美人なのか?」

「ぜんぜん美人じゃありません。ちんちくりんです!」


 メレディスは妬みに顔を歪めて、バーナム子爵に訴えた。


「お父様、あの娘をどうにかしてください! 平民の分際で貴族の婚約者を奪うなんて、身の程知らずですわ! 罰を与えてやって!」

「ふむ……」


 バーナム子爵はゆったりとした口調でメレディスを諭した。


「メレディス、まずは落ち着きなさい」

「落ち着いていられるものですか! 私が平民にコケにされたんですのよ!」

「お前の婚約破棄と平民の娘は関係ないだろう。スタイン公爵令息が平民が気に入ったなら愛人にするはずだ」

「ホバート様はお気に召したら平民でも結婚します!」


 メレディスはホバートに好意を向けられていたことがあるので、ホバートの性格をある程度は解っていた。

 ホバートは気に入ったものには一直線だった。


「公爵家の息子が平民と結婚するものか」

「お父様! 子爵家の娘である私が、ホバート様とどうして婚約が出来たと思っているのです」

「ふむ……」


 貴族とはいえ、下位の子爵家の娘が、公爵家の跡取り息子と結婚することは通常なら有り得ない。

 メレディスとホバートの婚約は、メレディスが熱心にホバートに好意を向けたことが功を奏した結果ではあるが、最終的にはホバートの希望により実現したものだった。


「たしかにお前とスタイン公爵令息の婚約は、先方の希望で実現したことだ。しかし貴族と平民は結婚ができない。これは貴族法で決められている」


「平民でも貴族の養女になれば、貴族と結婚できます。公爵家の力を持ってすれば、平民を伯爵家あたりの養女にすることも可能ではありませんか」

「そこまでするとは思えんが?」

「ホバート様ならやります! それにスタイン公爵はホバート様には甘いんですのよ!」


 メレディスは眉を吊り上げて、バーナム子爵に言った。


「あの娘がホバート様に横恋慕して、私の婚約を壊したのです! ちんちくりんのくせに! 公爵夫人の座を狙って、いやらしい手を使ったに決まっています!」


 まくしたてるメレディスに、バーナム子爵は思案気な顔をした。


「……平民にコケにされて、スタイン公爵家との婚約を壊されたのは問題だな」

「貴族の婚約者に手を出すなんて、厚かましいにも程がありますわ!」

「どこの平民娘だ?」

「下町の娘ですわ。カフェハウスという茶房にいます」


 メレディスは憤怒の形相で父に言った。


「でもその茶房にはホバート様が通っていらっしゃるので、迂闊に手が出せません。お父様、何とかしてあの娘をこらしめて! 平民の分際でホバート様とイチャイチャして、調子に乗って……許せませんわ!」

「見たのか?」

「ええ、見ました。今日、その店で迷惑客が騒動を起こしていたのですが、ホバート様はあの娘を庇っていました」

「その娘の名は?」

「知りません!」



 ◆



 ――王都の裏通り。


 薄暗く、すえた臭いの漂うその通りは、善良な王都民たちが避けて通る危険な路だ。


 その通りに一台の馬車が現れ、とある建物の前で停まった。


 その建物の入口には、泡立つ麦酒(エール)が並々と注がれたガラス杯(ジョッキ)の絵が描かれた看板が掲げられていた。

 よくある酒場の看板だ。


 しかし蛇の道は蛇。

 知る者であれば、それがどんな商いをしている店なのかを知っている。


 その酒場の看板を掲げる建物の前に停まった馬車から一人の男が降りた。

 男はフード付きの外套を着ていて、顔を隠すようにフードを目深にかぶっていた。

 それはバーナム子爵の忠実な従者だった。


 バーナム子爵の従者は、迷うことなく酒場の看板を掲げた店に入った。



 ◆



 酒場の看板を掲げた店の中は、寂れた酒場の様相で、数人のガラの悪い男たちが酒を飲んでいた。

 しかし酒場の奥には、秘密の商談ができる場所があった。


 バーナム子爵の従者はカウンターに歩み寄ると、カウンターの内に居る老人に話しかけた。


「ギルドに仕事を頼みたい」

「まいどあり。奥の部屋へどうぞ」



 ◆



 店の奥には、商談が出来る小部屋があった。


「ある平民の娘を攫って欲しい」


 バーナム子爵の従者は、その小部屋で秘密の商談をした。


「これは前金だ」


 ――ジャラ。


 バーナム子爵の従者は、金貨の入った袋をテーブルの上に置いた。


「攫うことが難しければ殺してもかまわん。だが生きたまま連れて来れなかった場合は、礼金は少し減らさせて貰う」


「解りました。なるべく生きたままお連れします」


 老人はずるそうに笑うと詳細を尋ねた。


「標的の名前は?」

「わからん。だが下町のカフェハウスという店で働いている娘だ。スタイン公爵家のご令息がご執心の娘だ」

「ははあ……。スタイン公爵令息が下町をうろついている話は知っていますです。つい最近、スタイン公爵令息が下町で喧嘩をおっぱじめて、火柱が立ったそうですな」

「そうなのか?」

「ちょいと話題になっておりました。炎眼が目を光らせているから、あの辺りじゃ悪さは出来ないってね。平民娘を攫うくらいのことは訳ありませんが、スタイン公爵が絡んでいるなら話は別です。これは危険な仕事だ。腕利きを投入せにゃなりません。礼金が少々足りませんぞ。二倍で如何です?」

「欲張り過ぎではないか?」

「下手したらスタイン公爵と魔法合戦することになる。公爵とやり合える腕利きは値が張りますんで」

「解った。二倍だ」

「まいどあり」


 老人は満足気にニンマリと笑った。


「この商談、闇ギルドが引き受けました」

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― 新着の感想 ―
あーらら、バカな娘……
ボブ兄さんがいなくてもうじゃうじゃ護衛を連れた貴族と魔法士がいるしなによりルネも冒険者だからね
⚪︎⚪︎が危ないと反射に言いそうになったけど合っていても外れていても続きが書きにくくなるやつだ…! しかし反射的に言いたくなるということはちゃんと読者の視線誘導ができている証拠…! なので書いてもいい…
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