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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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82話 元巫女との再会

 カフェハウスの一日の営業が終わりました。


 従業員が増えたので後片付けも明日の準備もさくさくと進み、暗くなる前に一日の仕事を終えることができました。


「皆さんのおかげで仕事がはかどりました。ありがとうございました」


 私は従業員たちにお礼を言いました。

 みんな笑顔で答えてくれました。


「どういたしまして。給金分の仕事ですのでお気になさらず。公爵家からは護衛費も貰っておりますので」

「ニーナさんの光魔法料理が(まかない)だなんて、役得な仕事ですよ」


 給仕係のキャリーさんとプリスさんがにこにこの笑顔でそう言うと、厨房係のジェシカさんとベティさんもそれに同意しました。


「ええ、とても楽しい仕事で私も感謝しております」

「公爵家の厨房はこんなものじゃないですからね。割の良い仕事ですよ」


「やっぱり公爵家の厨房の仕事って大変なんですか?」


 ニーナが質問すると、厨房の雑用担当のベティさんは大きく頷いて答えました。


「まずお皿の枚数が違います。公爵家は使用人たちの賄の分もありますから、毎日何百枚もお皿を使っています。晩餐会なんて開かれた日には、もう、厨房は戦場みたいな忙しさですよ」


(お皿が何百枚かぁ。公爵家の厨房ってやっぱり凄いのね)



 ◆



「ただいま戻りました」

「ただいまお婆ちゃん」


 私とニーナが薬屋に戻ると、ローナさんはまだ薬屋の売り場にいました。

 薬屋の営業は終えていましたが、女性と話し中でした。


(お客さんかな?)


 ローナさんが話している女性を見て、私は一瞬そう思いました。

 でも次の瞬間、気付きました。


(ポリーさん?!)


 それはかつて神殿の薬草園にいた平民の巫女の一人、ポリーさんでした。

 私が神殿を出るより、もっと前に、巫女を辞めて神殿を出た人です。


「お帰り。ちょうど良かった」


 ローナさんは、私とニーナを振り向いて言いました。


「紹介するよ。明日からこの店で薬師として働いてくれるポリーだ」


 ローナさんはポリーさんを私たちに紹介すると、ポリーさんにも私たちを紹介しました。


「私の孫娘のニーナと、薬師のルネだ」


「……!」


 ポリーさんは私に目を留めて一瞬微妙な表情を浮かべましたが、すぐに自己紹介を始めました。


「ポリーです。よろしくお願いします」

「ニーナです。こちらこそ、よろしくお願いします」


「ルネです。よろしくお願いします」


 私がそう言うと、ポリーさんはまた微妙な表情をしました。


「あの、ルネさん? もしかして会ったことがあるかしら?」

「はい。神殿で」

「あっ!」


 ポリーさんは、はっと気付いた顔をして小さく声を上げました。


「ルネ?!!」


 ポリーさんはもう一度、今度は先程より大きな声を上げました。


「ルネ?! ルネなの?!」

「はい。お久しぶりです」

「背が伸びてて解らなかったわ。大人っぽくなったわね!」

「そ、そうですか?」


 背丈はニーナが計ってくれているので、伸びていることは知っていましたが。

 自分の顔は毎日見ているので、成長している実感はあまりありませんでした。


「私、大人っぽくなりました……?」

「うんうん、神殿で会ったときは子供だったのに。成長したね。すっかり娘らしくなっちゃって」

「……!」


 娘らしくなったと言われて、私は嬉しくなりました。

 気分がふわふわとしてきました。


「ロビニア横丁の天才薬師ってルネのことだったのね」

「え、天才薬師?」

「そうよ。突然、彗星のごとく現れた天才薬師。そっかぁ、ルネかぁ。ルネなら納得よ。天才だもん」

「そ、そんな大げさな……」


 ポリーさんが私を褒めすぎるので、私は雲の上にいるような幸福な浮遊感の中に漂いました。


 私とポリーさんのやり取りを見てキョトンとしていたニーナが、私に問い掛けました。


「ルネ、ポリーさんと知り合いだったの?」

「うん。神殿で同じ巫女だった人だよ」

「え、神殿の巫女?! じゃあやっぱり光魔法使いで、上級ポーションも作れちゃうんだ? すごい! 即戦力だね!」


 ニーナが感心するようにそう言うと、ポリーさんは即座にそれを否定しました。


「まさか! 光魔法は使えますがルネと同じことは出来ませんよ」

「同じ巫女だったのに?」

「ルネはたしかに巫女でしたが、実力は聖女クラスでしたよ」


 ポリーさんはそう言い、ふっと、冷めた笑みを浮かべました。


「ルネを見て、私は巫女を辞めたんです」


 ポリーさんは肩を窄めてみせました。


「ルネほどの実力があっても聖女になれないんですよ? ルネみたいな天才でも聖女になれないんだから、私なんか永遠に聖女になれないって思い知りました。神殿なんて結局、貴族の身分がないと出世は出来ないんですよね。いくら実力があっても平民は巫女止まりで、良いように使い潰されるだけなんです。だからさっさと辞めました」

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― 新着の感想 ―
神殿に聖女ベルタみたいな人がどれ位いるかで退職者の数が変わってきそうですね。 どうなるのかなぁ。
あー、ルネの出奔を皮切りにして何も知らずに使われる事に満足していた平民巫女が知恵付けちゃったのね。そりゃ才能あるって連れてこられても得られる物に手が届かないって気付いたら辞めるよねえ… 神殿の風紀や制…
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