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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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73話 神器と魔道具と兵器

「ただいま帰りました」

「ただいま、お婆ちゃん」


 カフェハウスの営業を終えて、私とニーナは薬屋に戻りました。


「お帰り。今日は遅かったね。何かあったのかい?」


 ローナさんの問いに、ニーナが誇らしげな笑顔で答えました。


「今日はお客さんが大勢来たんだよ。すごい売り上げだったんだから」


 魔法士さんたちが大勢来たので、今日のカフェハウスは大繁盛で大忙しでした。

 ホバート様が大量注文をしてくれたこともあり、売り上げも凄かったです。


 カフェハウスの仕入れには、私が製薬で稼いだお金を投じています。

 でも今日のような繁盛が続けばカフェハウスの売り上げだけで回せそうです。


「料理が品切れになっちゃったから、明日の料理の仕込みをしてたんだ」


 魔法士さんたちがたくさんお料理を食べてくれたので、何品もの料理が品切れになりました。


 カフェハウスは夕方には営業を終えますが。

 店を閉めた後に、品切れになった料理の仕込みをしていたら日が暮れていました。


「急いで夕食の用意するね」


 ニーナはそう言うと厨房に向かいました。


「私は製薬をします」


 ローナさんにそう声を掛けて、私は店の奥の工房に向かいました。


 ニーナが夕食の用意をしている間、私は工房で上級ポーションの製薬をするのがカフェハウスを開店してからの日課になっています。



 ◆



「ふうん、魔法士がねえ……」


 夕食のときに、今日のカフェハウスの様子をローナさんに話しました。

 魔法士さんたちがビスケットを一心不乱に食べていた件を話すと、ローナさんは思案気な顔をしました。


「魔法塔では無茶な研究をしている連中もいるらしい。それで魔術回路が疲弊している魔法士が多いのかもしれんね」


「魔法塔では、魔力をたくさん使うのですか?」


 私がそう質問すると、ローナさんは苦笑いをしました。


「そうさね。魔法塔は、魔術の研究をしている場所で、実験もしているからね。実験にのめりこんで、毎日魔力を大量に使っている者もいるかもしれないね」


「そういえば、魔法士さんは開発部って言ってたわ」


 ニーナが思い出したようにそう言うと、ローナさんは考えるような顔をしました。


「開発部……魔道具の開発かね」


 生活を便利にする魔道具なら、私も知っています。

 でも魔道具を誰が作っているかなんて、考えたことがありませんでした。


「お部屋を涼しくする氷の魔石の冷房具(クーラー)や、ポットを温める炎の魔石の熱板(ホットプレート)みたいな魔道具は、魔法塔で作っていたのですか?」


「そういう生活魔道具を開発して売っているのは商会だよ。魔法塔が開発しているのは軍用の魔道具だね」


「軍用? それはどういう物ですか?」

「兵器だよ。戦争に使う武器さ」

「え?!」


 カフェハウスでビスケットを齧っていた、ホバート様いわくハムスターのような魔法士さんたちが、恐ろしい戦争の武器を作っていたなんて。

 私は吃驚してしまいました。


「魔法塔では、そんな恐ろしいものを作っているのですか?!」

「ルネが今更驚くようなことじゃないだろう」


 ローナさんは平然として言いました。


「ルネは神殿の神器に光魔法を充填していたんだろう?」

「はい」

「神殿の神器は、魔獣を倒すための魔法兵器だ。ルネだってずっと兵器に関わる仕事をしていたんだ。似たようなものさ」

「……っ!」

「神殿の神器は、昔は人間同士の戦争にも使われていたんだよ。神器といえば聞こえは良いが、平たく言えば魔法兵器さ」

「……」


 そういえばジルさんも言っていました。


 ――聖女の手伝いをしてたなら知っているよね?

 ――光魔法は魔獣退治に使われているってこと。


 ――魔獣を倒せるんだ。人間だって倒せるんだよ?


 私は解った気分になっていました。

 でも、ちゃんと意味を解っていませんでした。


(神器は兵器だったんだ。そうだよね。魔獣を倒せるんだもの……)


 兵器と聞いて、悪いことをしていたような気持ちになり、私の気分は重くなりました。


「別に悪いことじゃないさ」


 私が暗い顔をしてしまったからでしょうか。

 ローナさんが笑顔で言いました。


「襲って来る奴がいるんだから、戦わなきゃこっちがやられちまう。外敵から国を守るためには軍が必要で、軍を強くするには兵器が必要だ。自分たちの命を守るためなんだから、悪いことじゃない」


「そうですね……」


 ローナさんのその言葉を聞いた私は、聖女セラフィナ様を思い出してしまいました。


 ――ルネがお手伝いしてくれたこの神器が、民たちを魔獣から救うのよ。


 神器に光魔法を込める仕事は、民たちを守るためで、国を守る尊い仕事なのだとセラフィナ様は言っていました。


 セラフィナ様は私に仕事を押し付けるばかりで、さらに自分の失態まで私になすりつけるようになったので、私はセラフィナ様を軽蔑するようになり、神殿を出て決別しましたが……。


「……」


 セラフィナ様の言葉の中には真理を突いていたものがあって、複雑な気持ちになります。


「神器は古代文明の遺物で、数が限られているからね。魔法塔は神器に代わる魔法兵器の開発をしているのさ。まあ、でも……」


 ローナさんは小さく肩をすぼめました。


「今は薬草を必死に育てているかもしれないがね」

「そういえば……」


 私はリロイ様に魔法塔に勧誘されたことを思い出しました。


「魔法塔の薬草園で働かないかと、宮廷魔術師のリロイ様に勧誘されたことがあります。魔法塔ではポーションも作っているのですか?」


「そうさね。魔法士団が使う大抵のものは魔法塔で作っているね。ポーションは神殿から貰っていただろうが、今年は神殿のポーションが足りていないからね。魔法塔でも作っているだろうよ」

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