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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第3章 約束とカフェハウス

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55話 カフェハウス

「ホバート様はよほどポーションが大事なのね」


 お店の物件を借りる契約が無事に終わり、ホバート様もお帰りになった後。

 ニーナがしかつめらしい顔をして言いました。


「毎月四本の上級ポーションであの物件が借りられるなんて。破格のお値段だわ」

「お安いの?」

「うん、お安いよ。さすがは公爵家のご令息ね。太っ腹だわ」


 ニーナはわくわく顔で、これからの予定を語りました。


「仕立て屋にフリルのエプロンを注文しようよ」

「フリルのエプロン……!」


 お洒落な茶房の女性給仕たちが着けているフリルのエプロンはとても素敵です。

 あんな可愛いエプロンを着けてカフェのお店ができたら良いなと、憧れていましたが。

 それが現実の話になりつつあります。


「フリルのエプロンを着けるの?!」

「茶房だからね。いいよね?」

「うん、いいよ! 私もフリルのエプロン着けたい!」

「だよね! メニューも考えないとね。あ、その前に、お店の名前を考えないと。アリーのお店なんだから、アリーがお店の名前を考えて」


 ニーナにそう言われて、私は考えを巡らせました。


(カフェが好きなジルさんに気付いてもらえるお店の名前……)


「カフェがあるって解るように、お店の名前にカフェを入れたいんだけど……」


「じゃあ、カフェハウスってどう?」


 頭の回転の速いニーナが、即座に何のひねりもない真っ直ぐな店名を考えてくれました。


「カフェハウス! すごい解りやすい! それ良い!」

「じゃあ、お店の名前はカフェハウスで決まりね」

「やっぱりニーナは天才だよ!」


(カフェハウス!)


 お店をやれる物件の契約をして、お店の名前も決まって。

 夢がだんだん現実に近付いていることを実感して、私の気持ちは高まりました。


「ねえ、ニーナ、相談があるんだけど……」

「何?」

「私、カフェハウスでは本当の名前を名乗りたい」


 ホバート様から戦力があれば貴族に太刀打ちできると教えてもらって以来。

 ずっと考えていたことを、私はニーナに話しました。


「ルネとしてカフェハウスをやりたい」

「え、でも、貴族が『ルネ』を探しているんじゃないの?」

「貴族でも、暴力をふるったり、嫌がる人を無理やり攫ったら犯罪でしょう。だから……」


 ホバート様のお話から、戦える力があれば、貴族の横暴を恐れる必要がないことが解りました。


 貴族が私を探しているから、貴族に見つかったら何か良くないことが起こりそうだという不安は今でもあります。

 でも、それは根拠のない不安で、私の感情です。


 神殿の薬草園にいたとき、私はその根拠のない不安の感情に支配されていました。

 言うことを聞いて従順にしていなければ、何か良くないことが起こるという漠然とした不安の感情により、ずっと我慢をして言いなりになっていました。


 でも我慢をしても、良いことなんか一つもありませんでした。

 不満を飲み込んで我慢すればするほど、私の扱われ方はどんどん悪くなる一方でした。


(貴族でも、暴力で無理やり人を従わせるのは犯罪なんだから……)


 私には光魔法で戦う力があり、勝算があります。

 もし貴族が横暴なことをしてきても、光魔法で倒して、騎士団に通報すれば解決するのです。


「もし私を探す貴族が来て、断っても納得してくれなくて、強引に乱暴なことをしようとしたら……」


 私は決意をニーナに語りました。


「戦うよ!」


「えっ! 戦うの?!」

「うん、戦う!」


 私がそう答えると、ニーナは星のように瞳を煌めかせました。


「アレキサンドライト様の覇道にお供いたします!!」


(ん?)


 ニーナが何か勘違いをしているような気がしたので。

 私は念のために、もう一度ニーナに説明をしました。


「ニーナ、私はアレキサンドライトじゃなくて、本名のルネを名乗りたいの」

「解ってるよ、ルネ! 変な貴族が攻めて来たら、ルネの最強魔法が火を噴くんでしょ!」

「そういうことになるかな」

「悪人なんかぶっ飛ばしちゃって!」

「賛成してくれるの?」

「大賛成よ!」


 知恵者のニーナが私の考えに賛成してくれました。

 賢いニーナが賛成してくれたので、私は自分の考えに自信を持ちました。


「ありがとう、ニーナ!」



 ◆



 私とニーナは、ローナさんと話し合いをしました。


 私たちが茶房をやりたいことは、ローナさんには前々から話はしていましたが。

 ホバート様に物件を借りて、本格的な準備を始めることを説明しました。


「まあ、やりたいなら、やってみれば良いさ」


 ローナさんは、私たちの考えを理解してくれました。


「ありがとうございます」

「お婆ちゃん、ありがとう」


「上級ポーションの製薬は続けてくれるんだろう?」

「はい。製薬は任せてください」


 ローナさんの薬屋は、薬師を募集することになりました。


「新しい薬師が決まるまではお手伝いも続けます」

「無理しないようにね」



 ◆


 私とニーナは茶房を始める準備をしました。


 家具を用意して、調理道具や食器を用意しました。

 家具も食器も安価なものですが、お洒落なものを選んだつもりです。


 調度品はまだあまりありませんが、植物を店内に飾りました。

 もちろん私が光魔法で元気にした植物たちですので、みんな生き生きとした緑色です。


 薬草であるツベルギア草も、可愛いガラスの植木鉢(ポット)に植えて飾りました。

 私はツベルギア草から作った上級ポーションで大儲けをしているので、ツベルギア草は私にとっては幸運の植物なのです。


(ツベルギア草で金運上昇よ!)


 お店の看板を職人さんに頼み、その看板を入口に取り付けてもらいました。


「いよいよ明日から、カフェハウスの開店だね!」


 お店の入口に掲げられた、新品の看板を見上げてニーナが言いました。


「うん、いよいよだね」


 私も、私たちのお店の看板を見上げました。


 ――カフェハウス。


(これを見て、ジルさんが来てくれますように。女神様、どうかご加護を)


 私は心の中で祈念しました。


「さあ、ルネ、明日の準備にとりかかろう!」

「うん!」


 私とニーナは、意気揚々とカフェハウスの開店準備を始めました。


第3章、終わりです。

次話から第4章です。

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― 新着の感想 ―
お店の準備の様子から作者さんのお人柄が伝わってきます。きっとおもてなしもお上手なんでしょうね。 お店があったら行ってみたいです❣️
3章ずっとにっこにこで読んでました はー、よかった、かわいい、よかった、ジルさんに気付いてもらえるといいなぁ…貴族はどうぞ自滅してくださいな!
カフェは庶民にあんまり認知されてないみたいだから名前がカフェハウスで大丈夫なのか心配。
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