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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第3章 約束とカフェハウス

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50話 稼ぎ時

「順調に背が伸びてるね。先月より伸びてるよ……」


 ニーナは私の身長を計ってそう言うと、考えるような顔をしました。


「ニーナ、どうしたの?」

「うん……。アリー、体の調子はどう?」

「調子良いよ」

「製薬の仕事を増やせそう?」

「全然大丈夫。もっと出来るよ」


 私がそう答えると、ニーナは再び難しい顔をして考え込みましたが、やがて顔を上げると言いました。


「ポーション飢饉の今が、稼ぎ時だと思うんだ」

「私もそう思う!」

「今がバブルの頂点だよ。直にこんなには売れなくなる」

「そうなの?」


 私が問いかけると、ニーナはしかつめらしい顔で説明を始めました。


「今は、急に神殿のポーションの生産量が減ったから混乱しているんだよ。突然、供給がなくなったから、みんな対応できていないだけ。でも時間が経てばみんな対応を始める。大きい商会はもう薬師を大勢雇い始めているよ」


「他にも上級ポーションを作れる薬師がいるの?」


 私が作る上級ポーションは珍しい品だと言われていたので、意外でした。

 でもニーナの答えは、私の予想外のものでした。


「上級ポーションは大量の魔力があれば作れる。薬師が数人がかりでやれば作れるんだよ。それをやると薬師を雇う人件費が割高になるから、小さい薬屋でそれをやっている店はないけど。需要があって高く売れるなら、大きい商会は体制を整えて量産を始めると思う。神殿だって巫女を増やして、もっとポーションの生産量を上げるかもしれない」


 私はニーナの分析に感心しました。

 慧眼のニーナはさらに未来を語りました。


「今年は魔獣被害がすごく増えているから、上級ポーションの需要が高いのよ。でもこの先もずっと魔獣被害が多いとは限らない。魔獣をたくさん駆除したら、そのうち被害は減っていくと思う。だから……」


 ニーナは私を見据えて言いました。


「稼ぎたいなら、今が稼ぎ時なんだよ。他の薬屋がまだ体制を整えていない今しかない。アリーの体の負担じゃなければ、今できるだけ製薬しまくったほうが良い。この先こんなチャンスは無いかもしれないから」


「ニーナ、私、やるよ。早くお店を持ちたいから、たくさん稼ぎたい」

「でも無理は駄目だよ。体を壊したら元も子もないからね」

「無理じゃないよ。もっとやれるよ」

「本当に大丈夫?」

「うん」


 私が頷くと、ニーナも頷きました。


「じゃあ一緒にお婆ちゃんに頼んでみよう」



 ◆



「ローナさん、私はもっと製薬できます。もっと作らせてください」


 私はローナさんにお願いをしました。

 ニーナも私に加勢してくれました。


「お婆ちゃん、今が稼ぎ時だよね。アリーは先月より背も伸びているし大丈夫だよ。もっと上級ポーションを作ってもらおうよ」


 今、上級ポーションは飛ぶように売れていました。

 注文が多いので予約制ですが、予約もどんどん増えています。


 この店で売っている上級ポーションの評判が広まっているのか、上級ポーションを買いに来るお客さんは日に日に増えていました。

 貴族の使い走り風のお客さんもちらほら来ています。


 ホバート様がくださった『スタイン公爵家御用達』の看板の効果もあるのかもしれません。


「ローナさん、私は一日十回だって製薬できます」


 私がそう言うと、ローナさんは呆れたような顔をしました。


「それはやりすぎだよ」

「神殿にいたころは毎日もっと魔力を使っていました」

「それで魔力欠乏になったんだろう? 同じ間違いを起こす気かい?」

「製薬は全然疲れないから大丈夫です」


 私はローナさんとしばし押し問答をしました。


「お婆ちゃん、アリーはもっとやれるよ」


 ニーナも私を援護してくれました。


「私がアリーの調子をちゃんと見ていて、無理をしているようだったらすぐに止めさせるから」

「そうだねえ……」


 ローナさんは確認するように私を見ると言いました。


「解った。体の調子を見ながらやるんだよ。疲れたらすぐ中止すると約束できるかい?」

「はい!」



 ◆



 私は更に上級ポーションの生産数を増やしました。


「出来た!」


 私はその日、五回の製薬をしました。


「凄いよ、アリー。今日はもう金貨三十枚は稼いでるよ」

「山分けだから十五枚だよ」

「これなら冬になる前に、カフェのお店がやれるかもしれない」


 ニーナは勝利を確信したような顔で言いました。


「うちの薬屋も大儲けだから、薬師をもう一人雇えるわ」

「え? 薬師を増やすの?」


 私が質問すると、ニーナは当然だとでも言うように頷きました。


「だってアリーがお店を始めて、私もアリーのお店を手伝ったら、お婆ちゃんの手伝いがいなくなっちゃうでしょう。だから手伝いの薬師を雇わなきゃ」

「そっか……。私の我儘で迷惑かけちゃうね……」

「全然迷惑じゃないよ」


 ニーナは嬉々として言いました。


「アリーのおかげでうちも大儲けだから。薬師の一人や二人、余裕で雇えるよ」

「そう?」

「薬師の一カ月の給金は最低で金貨一枚。よほど腕が良ければ金貨三枚くらいかな。今のうちの売り上げなら余裕だよ」


 ニーナはそう言うと、少し皮肉っぽく笑いました。


「アリーの一カ月の給金は、金貨一枚でしょう。どんだけ安いのよ」

「でも上級ポーションの売り上げは山分けだから、私も稼いでるよ」

「当然よ。アリーは毎日、金貨をざくざく稼いでいるんだから。……そろそろ物件を探し初めても良いかもね」

「物件?」


 私が問い返すと、ニーナは野望に瞳を輝かせました。


「貸しに出している建物を探すのよ。お店が出来るような建物。この調子なら、すぐにお店を持てるよ!」

「……!」


 知恵者で慧眼なニーナがそう言うなら、きっとそうなるに違いありません。

 明るい未来を確信して、私の心は浮き立ちました。


(カフェのお店ができる!)

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― 新着の感想 ―
普通ならここで詐欺られてしまうけれど、ニーナだから安心。
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