表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
107/113

107話 自称兄のお迎え

「伝説降臨!」


 ニーナは私が書いたサインを見て、大いに喜んでくれました。


(ニーナはアレキサンドライト・カルメンシータの名前の良さを解ってくれているものね)


 宝石とお姫様を合体させたアレキサンドライト・カルメンシータという名前は、私が考えた素敵な名前です。

 ニーナもこの名前をとても気に入ってくれているのです。

 ローナさんには不評でしたが……。


(賞金も貰ったし、受取証にサインもしたし……)


「私たちは家に帰れるでしょうか?」


 私はエリオット様に尋ねました。


「ああ、かまわない。馬車で送らせよう」


 エリオット様はそう言いながら、顔を上げて部屋のドアのほうを振り向きました。


「!」


 廊下のほうから、何やら言い合いをしているような騒がしい声がします。

 すぐに部屋の扉がノックされ、騎士が報告を持って来ました。


「失礼します、エリオット様、スタイン公爵のご令息がいらしています。ルネさんとニーナさんを引き取りたいとのことで……」


(ホバート様?!)



 ◆



「妹たち! 無事だったか!」


 私とニーナは、エリオット様に連れられて、騎士団の詰所の玄関ホールへ行きました。

 そこには煌びやかな貴族の装いのホバート様がいました。

 従者さんたちを引き連れています。


「安心するが良い。兄が来たよ」


 最近のホバート様はずっと庶民のボブ兄さんの仮装をしていたので、貴族の出で立ちのホバート様を見るのは久しぶりです。


「エリオット卿、妹たちは今すぐ連れて帰らせて貰う」


 ホバート様はきりっとしたお顔でエリオット様に言いました。


「保釈金が必要なら、いくらでも払ってやる」

「保釈金は必要ありません。取り調べの結果、彼女たちは被害者であることが解りましたので、お帰りいただいてかまいません」

「では遠慮なく、連れ帰らせてもらう」

「彼女たちがそれで了承すればですが」


 エリオット様がそう条件を付けると、ホバート様は自信満々に私とニーナを振り向きました。


「妹たち、この兄が、家まで送ってやろう。異存はないな」


「はい、ホバート様」

「ありがとうございます」


 私たちはスタイン公爵家の馬車で送ってもらうことになりました。

 エリオット様とダレス様が、馬車に乗り込む私たちを見送ってくれました。


「エリオット様、ありがとうございました。あの……アレキサンドライト・カルメンシータのこと……」

「ああ……」


 エリオット様のおかげで、私は偽名で賞金を受け取ることができました。

 私がお礼を言うと、エリオット様はほんの少しだけ笑いました。


「どういたしまして」


(エリオット様が笑った……!)


 微笑みというよりは、苦笑に近い気もしますが。

 美貌のエリオット様が微笑むと、破壊力があります。


「道中、女神様のご加護を」


 エリオット様が祈りの言葉で見送ってくれましたが、ホバート様は自信満々にそれに言い返しました。


「この私が付き添っているのだ。心配などいらぬ」



 ◆



「ホバート様、カフェハウスに寄りたいので、カフェハウスの前で降ろしていただけますか」


 馬車が走り出すと、私はホバート様にそうお願いをしました。


「カフェハウスに寄るのは構わないが、また何かあっては私の沽券に関わる。薬屋まで送らせてもらう。用が済むまで待っていてやる」

「いえ、少し時間がかかると思うので……カフェハウスまでで結構です」

「こんな夜にカフェハウスに何の用事があるのだ?」

「カフェハウスの窓ガラスが壊れてしまったんです。お片付けをして、窓を塞がないといけないのです」


 私がそう説明すると、ホバート様は余裕の笑みを浮かべました。


「それなら心配いらない。もう手配はしている」

「え?!」

「侍女たちから報告を受けて、すでに手配済みだ」

「キャリーさんとプリスさんが?」

「そうだ。妹たちは何の心配もしなくて良い。あの建物の所有者(オーナー)は私だからな。修繕も私が行う」

「修理していただけるのですか!」

「もちろんだ。用事は修繕のことだけか?」

「はい」

「では用事はないな。薬屋まで送ろう」


 ホバート様の親切に、私とニーナはお礼を言いました。


「ありがとうございます」

「ホバート様、ありがとうございます」


「気にするな。大したことではない」


「ルネ、良かったね」

「うん!」


「被害の状況を見たが……」


 ホバート様は少し眉を歪めて言いました。


「ひとまず明日は営業できまい。修繕が終わるまでは休むと良い」


 窓が壊れてしまいましたものね。

 休業は仕方ないです。


「何にせよ、妹たちが無事で良かった。妹たちは世界の宝だ。建物などいくらでも修理できるが、妹たちの代わりはいない」


「ニーナはお料理が上手だから狙われたのでしょうか?」


 私がホバート様にそう質問すると、隣りにいるニーナが皮肉っぽく笑いました。


「私の料理の腕が目当てなら、攫う前に引き抜きに来ると思うよ。……ルネと間違われたんじゃないかなぁ。だって神殿の巫女が来ていたんでしょう?」


 そういえば、そうでした。

 シェイラ様、メレディス様、ナタリア様がカフェハウスに来て、私を見ていました。

 彼女たちの実家が私を探していると、以前ダレス様が教えてくれました。


「ふむ……。メレディスが来ていたな……」


 ホバート様は難しい顔をして、考えを口に出すようにして言いました。


「メレディスが人攫いを雇った可能性はあるな」


 ホバート様の推理にニーナが頷きました。


「きっとそうですよ。人攫いは雇い主から、ルネの年齢だけ聞いていて、顔を知らなかったんだと思います。ルネって十六歳にしては小柄だもの。それで私と間違えたんじゃないかなぁ……」

「人攫いたちは、私を十六歳だと思わなかったってこと?」

「そうだと思うよ。だって巫女たちが来たタイミングだよ。魔術師まで雇って攫おうとするんだから、目当てはルネだったと思うよ」

「……」


 私は十六歳なのに、私を十六歳だと思わなかったらしい人攫いたちに、新たな怒りが湧いて来ました。

 人攫いたちが私の事を「地味女」と言っていたことも思い出してしまいました。


(失礼しちゃうわ)


「私が調べてやろう。黒幕まで必ず捕らえる。後のことは私に任せておけ。妹たちは安心して休んでいるが良い」


 ホバート様は少し悪い顔でニヤリと笑いました。


「スタイン公爵家に盾突いたことを、愚か者たちに一生後悔させてやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
なんかもう、ホバート様の株が上がりっぱなしw 一貫して妹扱いなのが良いんだろうなあ
私は十六歳なのに、私を十六歳だと思わなかったらしい人攫いたちに、新たな怒りが沸いて来ました。 怒りのポイントそこかよ(笑)
突然生えてきた兄が頼もしい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ