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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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103話 地下牢

「闇の神官様、お願いです。悪い奴らに天罰を下してください!」


 男の子が懇願するように私に言いました。


 闇の神官と呼ばれるのはモヤモヤするのですが。

 今は非常時なので細かいことを言っている場合ではありません。

 不本意ですが、闇の神官と呼ばれているままで行くことにします。


 私の呼び方についてこの子に注意をするのは、この子の妹ちゃんを助け出してからにします。


「悪人には女神様が天罰を下すわ。安心して」


 私は男の子を励ましましたが、ニーナが警戒するような固い表情で私に注意を促しました。


「ルネ、その子供はゴーレムの操縦者よ」

「うん、知ってる」


 私はニーナに説明しました。


「あの子は妹ちゃんを人質に取られて、仕方なく悪い人の命令に従っていたんだよ」


 逆らえない状況で、嫌なことを強制されることがいかに苦しいかを私は知っています。


 神殿にいたころの私の場合は、逆らえないというのは思い込みで、やらされていたことは人助けに繋がることでしたが。

 この男の子は妹を人質に取られているので本当に逆らえず、しかも悪事を行うことを強要されているのです。

 同情を禁じ得ません。


「そうだったの?!」


 ニーナが問いかけるように言うと、男の子は暗い表情で俯きました。


「うん。ごめんなさい」

「そっかぁ。人質かぁ……」


 難しい顔をしたニーナに、私は予定を伝えました。


「ニーナ、妹ちゃんがあの建物の中にいるらしいから、私が助けに行って来るよ。ニーナはここで待っていて」

「え……」


 ニーナは戸惑いを浮かべました。


「ここに一人で置いて行かれるのは心細いわ。私も連れて行って」

「あ、うん」


 確かにそうかも、と思い、私は承諾しました。


 ここは薄暗い裏通りです。

 こういう雰囲気の通りには人攫いが出て来ることを、私は経験から知っていました。

 ニーナを置き去りにするのは危険かもしれません。


「解った。じゃあ私の後ろから着いて来て」


 私はニーナにそう言うと、一緒に馬車から降りました。

 馬車から降りたニーナは、馬車の外にゴロゴロ転がっている男たちを見て目を丸くしました。


「す、凄い。もうこんなに倒しちゃってる。さすがはアレキサンドライト様!」



 ◆



「誰もいない……」


 酒場のドアを開けて中に入ると、誰もいませんでした。

 店内はがらんとしていて殺風景で、店員もいません。


 酒瓶とグラスが、飲みかけのようにテーブルに放置されています。


「此処でお酒を飲んでいた奴らは、闇の神官様がさっき倒しちゃったと思う」


 先程、外に出て来た男たちは、此処でお酒を飲んでいたのですね。


「……あのドアから、地下牢へ行く階段に行ける」


 男の子は店のカウンターの奥にある扉を指差しました。


「でも廊下や階段は、悪い奴に会うかもしれないから気を付けて。一階にはギルドマスターの部屋もある」


 男の子は表情を険しくして言いました。


「此処って何かのギルドなの?」

「うん」

「何のギルド?」

「闇ギルド」

「闇ギルドって何のギルド?」

「犯罪者のギルド」


(犯罪者のギルドなんてあるんだ……?)


 私は男の子とニーナの先頭に立ち、カウンターの奥へと進み、そこにあるドアを開けました。


 ――ギイィ……。


 そっとドアを開けると、廊下や階段を繋ぐ、狭いホールがありました。

 ホールといっても少し広い廊下くらいのホールで、通り抜けの間です。

 私は後ろを振り返り、男の子とニーナに目線で合図をすると階段を目指して進みました。


(地下牢は地下にあるよね。階段を下りれば良いのよね)


 薄暗い階段を下り始めた私に、後ろから男の子が小声で注意を促しました。


「地下牢には見張りがいるよ」

「解った」


(悪そうな人がいたら、片っ端から眠らせちゃえば良いよね)


 階段を下りると、酔っぱらいの男がいて、私たちを胡散臭そうに見ました。


「なんだ、お前たちは?」


 男は酒瓶を持っていて、椅子に座っていました。


「眠れ」


 私が光魔法を放つと、男は白目を剥いて椅子の上に崩れ落ちました。

 同時に、男が持っていた酒瓶が男の手からするりと落ちました。


 ――パリン!


 石畳に落ちた瓶が割れる音に、私は一瞬身をすくめました。


(壊しちゃった……)


 悪いことをした気分になりましたが、すぐに気を取り直しました。


(人攫いが妹ちゃんを攫ったのが悪いんだから。仕方ないよね)


「た、倒したの……?」


 男の子が確認するように私に問い掛けました。


「うん」

「凄いや。一瞬だ……」

「牢屋はあのドアの向こう?」


 眠ってしまった男の向こうにあるドアを差して私がそう尋ねると、男の子は頷きました。

 私は歩を進め、そのドアを開けました。


 廊下があり、鉄格子が見えました。

 鉄格子を覗き込むと……。


 そこには男の子の妹らしき小さな女の子と、女性が二人、肩を寄せ合うようにして居ました。

 彼女たちも人攫いに攫われたのでしょうか。


「お兄ちゃん……?」


 小さな女の子がそう言うと、男の子が鉄格子に駆け寄りました。


「レナ!」


(この鉄格子、壊せるかな?)


「鉄格子を壊せるかやってみます。ちょっと離れていてください」


 私は牢の中の人々にそう声を掛けると、鉄格子を両手でつかみました。

 そして思いっきり引っ張りました。


「えい!」


 ――メリッ!

 ――バキン!


 身体強化された私の腕力で引っ張られ、鉄格子がはめ込まれている周囲の壁が割れました。

 そして鉄格子が枠ごと外れました。


 ――ガコン!


「ひいぃぃ!」

「うあぁぁ!」


 どれが誰の悲鳴なのか解りませんが、みんながそれぞれ悲鳴を上げました。


 私もちょっと吃驚しました。

 鉄格子を引っ張ったら、鉄格子が折れるものと思ったのですが。

 まさか壁が壊れるとは思っていませんでした。

 鉄格子って意外と頑丈なのですね。


「さ、さすがはアレキサンドライト様……!」


 ニーナの呻き声ははっきりと解りました。

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102話 訳ありの少年 >子供「お姉さんが逃げてくれれば、戦わなくてもいいんだけど……」 >ルネ「坊やが動かしているの?!」 >ルネ「慈悲深き女神よ、生命の息吹を注ぎたまえ」 >ニーナが目を覚ましまし…
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