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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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102話 訳ありの少年

(目の下のクマはもう無いのに、どうして?!)


 闇の神官呼ばわりされて私は動転しました。


「ち、違うわ……! 人違いよ!」


 私は咄嗟に嘘を吐いて、闇の神官疑惑を否定しました。


「違うんだ……」


 男の子は少し落胆したように肩を落として溜息を吐くと、顔を上げて私に言いました。


「お姉さんが逃げてくれれば、戦わなくてもいいんだけど……」

「え?」


 ――ギギッ。


「……!」


 物音に私が振り向くと、それまで静止していた大男のゴーレムが、再び動き出していました。


「坊やが動かしているの?!」

「うん。逃げて」

「私はニーナを助けに来たの。ニーナを連れて帰れるなら何もしないわ」

「ニーナってあのお姉さん?」

「そうよ」

「……じゃあ、僕はお姉さんをやっつけなきゃ……」

「どうして?」


 男の子は嫌々仕事をしているような、暗い表情でした。

 悪いことをしたいようには見えません。


「命令だから。あのお姉さんを連れていかないと、妹が殺されちゃうから」

「妹ちゃんが攫われたの?!」

「うん」

「坊やはそんなに強いのに逆らえなかったの?!」


 今日相手にした悪人たちの中で、大男のゴーレムが一番強いように思いました。

 こんな強いゴーレムを動かせるなら、悪人たちを倒せる気がします。


「この人形はあいつらのだから。あいつらのことは攻撃が出来ないんだ」

「自由に動かせるんじゃないの?」

「味方には攻撃が出来ない」


 そういう魔法がかかっているのでしょうか。


(人質を取ってこんな子供に悪いことをさせるなんて。悪い人たちだわ)


「それなら私が悪い人たちを倒してあげる!」


 今日、悪人を何人も倒して私は自信がついていました。

 結界魔術と強化魔術を併用してゴーレムと戦って、肉弾戦にも自信を持ちました。


「私が妹ちゃんを助けてあげる」

「強い魔法使いもいるから、お姉さんには無理だよ。闇の神官様なら出来るかもしれないけど……」


(ん?)


 闇の神官は私なので、私なら出来るということになりますよね。


「闇の神官なら勝てそうなの?」

「うん。闇の神官は上級魔法使いも一撃で倒せるから」


(私が倒した男たちの中に、そんなのいたかしら?)


「闇の神官は上級魔法使いを倒したの?」

「知らないの? 闇の神官は賞金首だった上級魔法使いの凶悪犯を倒したんだよ」


(騎士団に届ければ賞金が貰えたっていう、あの話かしら)


 何だか勝てそうな気がして来ました。

 だって、不本意ですが、私が闇の神官ですから。


「私も上級魔法使いを倒したことがあるわ」

「……本当?」


 男の子は疑わしそうな目で私を見ました。


「本当よ」


 ……多分ですけど。

 闇の神官が倒したなら、私が倒しているはずなので。


「強い火魔法を使う奴がいるよ?」


 強い火魔法……。

 ホバート様の獄炎中(ヘルフレア)みたいなものでしょうか。

 結界魔術で防げる気がします。


「大丈夫。防ぐ手立てはあるわ」

「本当?」

「ええ。私が坊やのゴーレムの攻撃を防いだの見たでしょう?」

「……」


 私の言葉に、男の子は考えるような顔をしました。


「あれはお姉さんの馬鹿力じゃないの? 馬鹿力じゃ炎は防げないよ?」

「……」


 馬鹿力と言われてモヤっとした気持ちになりました。

 馬鹿力は、言われてあまり嬉しい言葉ではありません。

 闇の神官と言われるのと同じく、残念な気持ちになる言葉です。


「私は馬鹿力じゃないよ。あれは魔法よ」

「魔法で格闘家になれるの?」

「格闘家になったわけじゃないけど、あの魔法で炎も防げるわ」

「お姉さんが上級魔法使いを倒して、妹を助けてくれるの?」

「ええ、任せて! 妹ちゃんはどこに捕らえられているの?」


 私がそう尋ねると、男の子は酒場を指差しました。

 泡立つ麦酒(エール)が並々と注がれたガラスの大杯(ジョッキ)が描かれた看板を掲げたその酒場は、先程、悪い男たちが出て来た酒場です。


「あの建物の地下牢にいるよ」

「地下牢?!」


 地下牢なんて、私は今までに一度も見たことがありません。

 とても恐ろしい場所のような気がしました。


 それにこの男の子の妹は、この男の子より小さい女の子ということです。

 そんな小さな子を攫って、恐ろしい地下牢に入れるなんて、なんて酷い人たちでしょう。


(やっぱり人攫いは、とても悪い人たちだわ)



 ◆



「慈悲深き女神よ、生命の息吹を注ぎたまえ」


 男の子の妹を助ける約束をした私ですが、眠っているニーナを置き去りには出来ません。

 馬車の中で眠っているニーナに、試しに癒しの魔術をかけてみることにしました。

 これでニーナが目覚めなかったら、馬車の周りに結界で柵を作って、ニーナが誰かに襲われないようにしようと思いました。

 ですが……。


「……!」


 ニーナが目を覚ましました。


「ニーナ、良かった!」

「あ……」


 意識を取り戻したニーナは私を見て、半ば叫ぶようにして言いました。


「アレキサンドライト様! きっと助けてくださると信じておりましたぁ!」


 ニーナのその叫びを聞いて、男の子もまた叫びました。


「や、やっぱり! 闇の神官アレキサンドライト・カルメンシータ様だったの?! 強いからそうじゃないかって思ったんだ!」

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― 新着の感想 ―
ニーナさんの第一声が…… アレキサンドライト=カルメンシータ様、後を引きますねぇw 市民の間では伝説の神官になりつつあるのでは? 光魔法がきかない相手に出会って、ルネちゃんさらに強くなってますね。ニー…
卒業したはずの(名前)アレキサンドライト・カルメンシータ様が復活してしまった•••
妹を人質にされて悪事に手を染めた少年を救うシリアスなシーンのはずなのにこの込み上げる笑いは何… 暗黒微笑?! アレキサンドライト・カルメンシータ様を暗黒微笑微笑で正座待機!!
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