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裏方聖女は逃げ出した!~ブラック職場やめます!お洒落なカフェハウスの店長になったので、今更戻れと言われてももう遅い!  作者: 柚屋志宇
第4章 闇のカフェ

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101話 結界魔術と強化魔術の威力

「どうして此処にいやがる」


 馬車から出て来た男は、私の顔を見て舌打ちしました。


(地味なほうの女って何?)


 失礼なことを言われた気がして、私は容赦なく光魔法を放ちました。


「眠れ」


 ――ドサッ!


 男を倒すと、私は扉が開かれている馬車の中に目をやりました。

 ニーナがぐったりして座席に座っています。


「ニーナ!」


 馬車の中にはニーナの他に、ニーナを攫った大男と、途中で大男に攫われた男の子と、そしてもう一人悪い顔をした男が居ました。


「あの地味女をやれ!」


 悪い顔をした男がそう言うと、馬車の中から大男が飛び出しました。


「……っ!」


 こちらに向かって来た大男から、私は腕で顔を庇うようにして身構えました。


(私には結界と強化があるから大丈夫なはず!)


 大男が腕を振りかぶって私に殴り掛かりました。


 ――バキン!


 固い物体がぶつかったような衝撃を受け止め、私は足をふんばりました。


「!」


 私が纏っている結界に勢いよくぶつかった大男の腕が、ひしゃげて弾け飛びました。


(う、腕が!)


 大男の腕が無残に千切れたのを目の当たりにして、私の心は瞬時に重い罪悪感に押しつぶされましたが……。


(血が出ない?)


 大男は血の一滴も流していません。

 腕が千切れたというのに。

 痛がる素振りもなく、何も感じていないかのようです。


(何かの魔術?)


「……!」


 私が考える暇もないまま、大男は一歩下がると態勢を立て直し、今度は私に突進して来ました。


(やれる!)


 私は両腕で顔を庇うようにして再び身構えました。

 大男の一度目の攻撃を、結界魔術と強化魔術で防いだ成功体験によって、私の自信は膨れ上がっていました。


 ――ガシャーン!


 先程よりも重い、固い大石がぶつかったような衝撃。


「あ……」


 大男が目深にかぶっていた黒マントのフードが、ずり落ちました。

 そこにあったのは人間の顔ではなく、ひび割れて半分崩れおちた仮面。

 壊れた仮面の下には泥のような茶色の何か……。


(!)


 魔法士のモルさんに教わった知識が、私の頭の中に閃きました。


 ――戦うときはゴーレムを使います。


(土魔法のゴーレム? だから安眠の術が効かなかった?!)


 大男がゴーレムなら術者がいるはずです。


(あの男!)


 馬車の中にいる悪い顔の男が怪しいと思いました。

 その男の他には、攫われたニーナと、ついでに攫われた男の子しかいないので、その男で間違いないと思いました。


 ――ガシャーン!


 再び私に向かって来たゴーレムらしき大男の体当たりに、私も地を蹴って体当たりで応戦しました。

 大男の体は、私に弾き飛ばされました。


(今だ!)


 馬車と私との間にいた大男が弾け飛んだので、馬車の中にいる悪い顔の男が見えました。


「な、なんで地味女が!」


 まるで化け物でも見るような目で私を見て、悪い男は馬車の中で狼狽えています。


 私は失礼で悪い顔の男に向かって光魔法を放ちました。


「眠れ」


 私の安眠の術を受けた悪い顔の男は、馬車の座席に崩れ落ちました。


 ――タン!


 私は馬車の中に乗り込みました。

 馬車の中には、座席に沈んでいる悪い顔の男と、怯えた顔をして固まったまま私を見ている男の子と、そして目を閉じてぐったりしているニーナがいます。


「ニーナ!」


 私はニーナに呼びかけました。

 ニーナからは香木の香りがしました。


(眠り袋で眠らされているの? 目覚めさせるにはどうすれば……)


 眠っている人を起こす魔法は知りません。

 何か応用できるものがないか、私が一瞬考えていると。


「おい、何をモタモタしてやがる!」


 馬車の外から、野太い男の声がしました。


「あ! 御者がやられてる!」

「なんだと?!」


 馬車が停まっている場所のすぐ近くにある、酒場の看板を掲げている建物から、わらわらと人相の悪い男たちが出て来ました。


(あの店が人攫いの隠れ家だったの?)


 ニーナを攫った人攫いの馬車が停まった此処は、人攫いの隠れ家の前だったと考えるのが自然です


(悪い人たちだもの。仕方ないよね?)


 私は馬車から飛び出しました。


「な、なんだ?」

「獲物の女?」

「トッドはどうした?」


 小さく混乱している男たちに向けて、私は光魔法を放ちました。


「眠れ」


 ――ドサッ!

 ――バタン!


「ああっ!」


 酒場から出て来ようとしていた男が、私に倒された男たちを見て叫びました。


「誰か来てくれ! やられてる!」


 すると酒場からドヤドヤと男たちが出て来ました。


「なんだなんだ?」

「あっ!」

「誰にやられた?!」

「ガキの人形がある。ヴェンタス先生はどうした?!」

「この女? 例の獲物か?」


 倒れている男たちを見て、酒場から出て来た男たちは周囲を警戒しました。

 男たちに向けて、私は広範囲に光魔法を放ちました。


「眠れ」


 ――ドサッ!

 ――ドサドサッ!


 男たちはまとめて全員倒れました。


「ふう……」


 悪い人は全員倒しました。

 後はニーナと、巻き添えになった男の子を連れて帰るだけです。


(馬車は運転できないから、ニーナを担ぐしかないよね。身体強化してるからニーナを担いで帰れるよね)


 私がそう考えを巡らせていると……。


「ねえ……」


 馬車の中から、男の子がのっそりと出て来ました。

 大男についでに攫われた男の子です。


「坊や、もう大丈夫だよ。もう怖くないよ」


 男の子は顔色を悪くしていたので、怯えているのだろうと思い、私は安心させるようにして言いました。


「ちゃんとお家まで送ってあげるからね。お家の場所、解る?」


 私は男の子を家まで送ってあげるつもりで、そう尋ねました。


「……」


 男の子は暗い瞳で、じいっと私の顔を見ました。

 そして、ぼそりと言いました。


「お姉さんは、闇の神官様?」

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― 新着の感想 ―
ルネの大捕物楽しすぎる
この子なんだろうなー……
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