第39話 夢:(8/10)
次々と海の生き物達が海から空へと落ちていく。
『ウガアアアアアアアアアアアア!?』
巨大な人魚姿の南方は無数のクラゲ人間達と共に落ちていく。
「う、うわああああああああああ!?」
ショウ達も例外なく落ちていった。
ショウはナオミの手を掴み、何とかハグレずに住んでいるが成す統べなく自由落下をし続けていく。彼等の天井には銀色の波打つ青い海が広がり、下には白い雲に燦々と上へ伸びる陽光が射した水色の空が下半球のように映し出されていた。
「ナオちゃん! いったい何をしたの!? もしかして、これが君の能力なのか!?」
「……うん」
ショウと目が合ったナオミはニコリと笑い一言呟く。
「やりすぎちゃった」
「やりすぎちゃったじゃないよ! それじゃあ、早く止めてって!」
「なんか私の力がさっきから制御出来ないの」
「え……」
「力が暴走しちゃってるみたい」
「暴走!?」
今までにない現象である。
部外者の能力が、夢の世界観事態を塗り替えるなんてことは初めてであった。
『クソッ!! オ前等ノセイダナ! 早ク止メロ!』
南方は落ちながらも、巨大で透明なジェルを彼等へと打ち込んでくる。
「無駄よ」
ナオミは冷静にジェルへと手をかざすと、例の如くジェルは反射され南方へと打ち返される。
『グワッ!? 汚ネェ!?』
避ける手段のない南方は、自分の生み出した粘液物質を自ら被ることとなる。苦しむ様子はなく、汚物を振り払うようにぬぐい取っていた。
「ウフフ、無様ね」
嬉しそうに妖艶な笑みを浮かべるナオミ。ショウの右手に文字を浮かべる。その文字はカイトから受け継いだ[閃光]の力だ。
「南方、アナタの負けだ! 僕達は攻撃を防ぐ手段も、攻撃を行う手段も持っている!」
そういうとショウの周りには、見せつけるように幾つかの光の球体が浮かび上がる。
「アナタは避けられない! 今後一切エリちゃんの夢に入ってこないなら攻撃はしない。だけどだ、もしそれが出来ないのなら!」
銃を構えるように、ショウは人差し指を南方に向けた。
「アナタを全力叩きのめす!」
黙って聞き続けた南方は、さらに黙り込み。
やがて……
『……ンアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!』
突然目が血走り、雄叫びを轟かせる。
「な、何だ!?」
「……耳が痛い」
すると彼の背中から純白羽毛の二枚の羽が皮膚を突き破り、大きな翼を広げた。
『調子ニ乗リヤガッテ! ソノ娘ノ能力ハ、カナリ厄介ダ。ダカラ逃ゲヨウカト思ッタガ気が変ワッタ。俺ヲコケニシタテメェラ二人ハヤッパリユルサネェ!! 二人仲良ク血祭リニシテヤルヨ!』
南方は翼を大きく羽ばたかせ、落下する二人へと突撃していく。とっさにショウは光の球を何発も打ち込む。しかし、巨体とは思えない程の俊敏な機動力に半分以上の球を回避され、着弾した球も腕で防がれてしまう。
「うっ! 急に早く……」
『ンアアアアアコロオオオオオオス!!』
南方は大きな手で二人に掴みかかる。ナオミが手を前に突きだし見えない壁のような物を作り出しかのように、南方の進撃を阻止した。
『出テコイ! 籠モッテルジャネェゾオラ!』
ナオミの力に阻まれながらも壁にへばりつくように、何度も殴りかかる南方。何度も拳が弾き返されるも、憎悪を纏った剣幕で諦めずに殴りかかる。
それに対して二人は無傷でいるが、攻撃を跳ね返す度にナオミの表情に陰が落ちる。徐々に消耗しているようで額から汗が見え始めた。
「ダメだ。もう一度……」
南方を引き剥がす為、もう一度右手を構える。
しかし、その時――
『ギャアアアアアアアア!?』
南方の断末魔と共に彼の脇腹から爆炎が舞い上がる。白目をむき黒い煙と共に、南方は空へ墜落していく。
「こ、今度はなんだ!?」
ショウが、周囲を見回すと声をかけられる。
「おう! ジャップボーイ! まさかこんなところで会うとはな!」
「水瀬君! 良かった無事みたいね……その子は新しい部外者かしら?」
聞き覚えのある声にショウは振り向く。
そこには耳をプロペラみたい回転させ、ゆったりと近づいてくるウサテレの姿があった。
「デー……ブラウンさん! ユリエさん!」
ショウは飛んでくる彼等に手を振った。




