第25話 夢:(7/11)
「ファースト、セカンド、サード。この三つの意味は、俺様達が簡易的に夢の構成要素を指し示した略称の言葉だ。略さず言ったらFirst person、Second person、Third personって意味だ」
「英語か! 俺、全然わかんねぇや!」
「えっと……一人称とかって意味でしたっけ?」
子供等の反応に、オーケーオーケーと余裕を見せるデーブ。
「意味はあってるぜ。一人称、二人称、三人称って意味さ。これは夢を見ている本人から見た夢の構成を表しているのさ……つまり現状で説明するならば、水瀬エリが見ている夢の物質区分を表しているんだよ」
「エリちゃんの夢の構成要素か……」
「それじゃあ、一から順に説明していくぜ」
まず、デーブは指を一本立てる。
「First person、一人称だ。これは言葉の意味通り、夢を見ている本人自身の意味を指す。俺様達の研究結果によると大概の場合、夢を見ている本人自身は俺様達からでも見えるように可視化されるんだ。今回も水瀬エリが俺様達からも観測できているからな」
「まとめると、ファーストって意味は本人ってこと。今回の本人はエリちゃんのことを指しているということですね」
「ああ、そうだ! そして、この世界の最重要要素でもある。コイツが傷ついたりでもしたら現実世界の本人に何が起こるか分からない」
「え!? ほ、本当ですか!? やっぱりこんな所で立ち話をしている場合じゃ……」
「大丈夫だ。それも計画した上でこの場でお前と話しているんだぜ。安心して情報を聞いてな」
「い、いやでも、エリちゃんは今さらわれて……」
「だから大丈夫! 本人の様態はこっちで管理できているんだ。それとも、この話はここで終わりにしておくか?」
「……」
ショーンは押し黙る。それを見たデーブは頷き、次に二本目の指を立てた。
「次はSecond person、二人称だ。これは本人が作り出した夢の物質を指し示す言葉として使ってる」
「どういう意味だよおっさん」
口をポカンと開いたカイトに、デーブは反応する。
「おっさんじゃねぇ! デーブ様だ! いいか、この夢の中に作り出された物質全てだ。そこらへんに生えてる草や木、転がってる石っころ、そこら辺にいたモンスターやその他生き物。本人が作り出した夢の物質のことだ」
さっきのゴブリンや城、城下町、はたまた前の夢の密林や恐竜達も、元を辿ればエリが作り出した夢の物体である。それを改めて感じ取ったショーンは頷く。
「前にここがエリちゃんの夢の世界だって言っていましたね。つまりこの世界そのものが貴方達の言うセカンド……夢物質であるってことで良いでしょうか?」
「おう! そういうことさ! かなり大雑把な括りにしてあるけどな。何分この夢物質はほとんど解明できていないんだ。だからこれに関しては全て憶測とかでしか説明できない。だから今回は割愛するぞ」
そして、デーブが三本目の指を立てる。
「それじゃあこれが最後の要素Third person、三人称。俺様達のことだ」
「僕達?」
「俺達?」
少年達は首を傾げる。
「ああ、ドリーム・コネクターの研究を進めている中で俺様達、主に俺様が見つけた要素の一つだ。なんと夢の中に他人の意識が入り込むことを発見したのさ!」
「……それって!」
ショーンが話そうとした時、さっきからデーブの隣で黙っていたユリエが前に出てくる。
「ここからは私が話して良いかしら? 水瀬君が前に言っていたわよね? 確か……シンクロニティだったかしら?」
「は、はい! 他の人と同じ夢を見た現象のことです! 何か大きな意味があるって奴です」
「大きな意味……本当にそうかどうか分からないけど、この部外者の出没現象は、他の数人の被験者の実験でも確認しているわ。そして、夢の中に部外者が登場する条件としてある共通点があることが分かっているの」
「条件……ですか?」
彼の返事にユリエは頷く。
「精神的な披露や負荷に対して、他者の力を無意識に借りたいと願うことによって、願われた者の意識がそのまま夢の中で具現化するのよ」
「えっと……ようするに、辛くて助けに来てほしいと願った時、夢の中に願われた本人が呼び出されるってことですか?」
それを横で聞いていたデーブは笑い出す。
「ああ、そうなんだ! もはやオカルトじみている話なんだが、これが何十回かの実験において高確率で発生した事象なんだぜ。被験者の夢に出てきた部外者本人にインタビューしてみたら、多少曖昧ながらも同じ夢を見たって意見が多数結果として出ているんだ。確定していないが、俺様達の予想ではこの現象事態人間の第六感に関連する言わば本能の一部ではないかって推測しているんだぜ」
説明を変わるように、次はユリエが話を繋ぐ。
「ええそうね、このドリーム・コネクターって技術で、今まで表に出てこなかった人間の隠された能力の片鱗と可能性を発見することが出来たのはかなり凄いことよ。だからこの弱小研究チームが学会から注目され初め、資金提供されている大きな要因ね。この技術の前任者は本当に凄いわ……」
「……そのドリーム・コネクターっていうのは、貴方達が作ったんですよね?」
「ええ……まあ、大本の技術はこの研究施設の前の人、キャメル・マヒルダ博士が残していった物よ。それを応用して作り直したのが夢と電子を繋ぐこのドリーム・コネクターってわけ」
ユリエの説明に、デーブが意義を申し立てる。
「ちょっと待ってくれよミス・ユリエ! マヒルダ博士の技術なんて、あのオンボロパソコンに入っていたほんのちょびっとの破損データだぜ! それをここまで実用的に発展させたのは、この天才エンジニアであり、FPSランカーで最高にクールなデーブ様なんだぜ! そんな他人のパクリをしたみたいな言い方はしゃくに障るぜ!」
「はいはい分かったわよ。でも、全てが私達の技術ではないのは確か。これを人類の平和の為にと作ったマヒルダ博士の意志を私は受け継ぎたいと思っているわ。それが科学者として、責任者としての私の意志よ」
つい、二人で話し込んでしまったことに気づいたユリエは、無言で見つめていた少年達に気づき、慌てて体制を元に戻す。
「ごめんなさい、話が脱線したわね。とにかく、部外者って物質もまだ完璧には解明されていないの。だから貴方達から少しで情報がほしい訳なのよ。これで、一通りファーストからサードまでの話は終わったかしら?」
「はいはい! 質問!」
ユリエが話し終わると、突然カイトが手を上げる。
「何かしら、カイト君?」
「話の内容、さっぱり分かんないんだけどさ。要するに俺やショーンの兄貴は、助けを求めてる水瀬に呼ばれてこの世界に転生してきたってことなんだよな?」
「転生? ……えっと、言葉はたぶん違うと思うけど強ち間違ってはいないわ。ええ、たぶん今までのパターン通りだとその通りよ」
そう聞くと、カイトの目がどことなく輝く。
「そっか……水瀬が助けてほしいって思ってるのか~なら仕方ねぇな!」
嬉しそうに大きな鼻息を飛ばし、くるりと彼は魔王城に体を向ける。
「よっしゃ! それじゃあ、とっとと王女様を救いに行こうぜ野郎共!」
「な、なんか嬉しそうねカイト君……いきなりどうしたの?」
戸惑うユリエに、ショーンは微笑ましそう彼のことを遠い目で見つめる。
「カイト君は、どうやら現実世界でエリちゃんのことが気になっているみたいでして……」
「あら、そうだったの! それじゃあ頑張んないとねカイト君! 応援してるわ!」
「は、はぁ!? な、なな、何言ってんだよお前等! べ、別にあんな奴気になってねぇし!」
顔を赤くして怒鳴り散らすカイトは、再び魔王城へ向き直る。
「ア、アイツは……俺の大切な唯一の親友なんだ……だから……」
「……カイト君?」
「何でもねぇ! さっさと着いて来ねえと置いていくからな!」
そのままズンズンと歩いていくカイト。ショーンとウサテレは顔を見合わせ、彼の後を追っていく。
そんな中で、デーブがニヤツきながら口笛を鳴らす。
「ったく、キッズの癖していっちょ前に発情しやがって! 最近のクソガキはマセてやがるぜ! ハッハー!」
「うるせえよ! 童貞デブ!」
「はぁああああ!? 今聞こえたぞ! デブって! しかも童貞って! 許さねえぞゴラァ! 俺様の繊細な部分に触れちまったテメェは即消滅だゴラァ! マジでブッ殺してやらあ!!」
騒ぎながらも彼等一行は、魔王城へと歩みを進めるのであった。
……
「ようやく、ここまで着いたね」
時間が飛んで、現在魔王城の最上階にある魔王の玉座のある部屋の前に二人と一羽が居る。
ここまでの道のり、幾多もの過酷な試練を皆の力を合わせ(主にカイトの能力を使い、後ろでショーン達は傍観していた)ようやく魔王サウスの居る玉座の間へとたどり着いたのだ。
「準備は良いかクソキッズ? ションベンは出してきたか? 好きな子の前で漏らすんじゃねぞ? 漏らしたら爆笑してやるぜ」
「うるせ! 漏らさねぇよ! お前こそ人の心配してないで糖……」
カイトがデーブに何かを言い続けようとした時、ユリエが言葉を遮った。
「さ、さあ! 皆早く入りましょ! エリちゃんが心配よ!」
「おう、そうだな! 待ってろ水瀬!」
「じゃ、じゃあ開けるよ!」
皆の支度が整った所で、ショーンは両開きの扉をゆっくり開いた。




