第26話 夢:(8/11)
扉が開かれると、中は薄暗い大広間であった。
奥には、黒く禍々しい空気が漂う。
「……お兄様! カイト君!」
広間の中央には、大きな鳥籠のように中に吊された牢がぶら下がっていた。その中には捕らわれの王女エリザベーヌが入れられていたのだ。
「水瀬!!」
「エリちゃん!!」
少年二人は、王女を見つけるなり駆け寄ろうと広間へ入っていく。
「ちょっと貴方達待ちなさい!」
「おっしゃ! 俺様達も中に入ろうか!」
「え!? ちょ、ちょっとブラウン!」
ウサテレの画面に映ったユリエが引き留めるが、デーブは問答無用でウサテレを前進させる。全員が中に入った所で、案の定自動的に扉は閉まり黒い茨のツル達が伸び始め扉を雁字搦めに結びつけた。
少年二人が中央に吊された牢の下に着いた所で、黒い靄が広間に漂い始める。
『ハッハッハッハ! ハーッハッハッハッハ!』
広間全体から聞き覚えのある高笑いがエコーした。
『ヨクココマデ来タナ、勇者達ヨ!』
「この声は……魔王サウス! あ、いや、南方!」
「何処にいる! 早く姿を見せて俺と勝負しろ!」
少年達とウサテレは辺りを伺いながら、いつでも攻撃が出来るように戦闘態勢を取る。
すると、広間を漂っていた靄が玉座に集約していき黒い球体のように渦を巻き始める。完全な球となった黒い固まりは、スライムのように形状を変え体格の大きい男へと変化していった。
『ココマデ来レタ褒美ダ! 死ンデモラオウカ!』
「待ってくれ南方!」
魔王サウスが動きだそうとする最中、ショーンは制止させる。
「貴方は何の目的で、エリちゃんを狙うんだ! アナタは何者なんだ!」
「目的……カ」
彼の言葉に魔王サウスは笑みを浮かべる。その笑みは何か傷つけることを企んだような歪んだ表情であった。
『簡単サ、コノ世界ヲ支配スルコトダ!』
「この世界の設定のことを聞いているんじゃない! 真面目に答えろ南方!」
ヒッヒッヒと面白おかしそうに嘲る。
『俺ハ真面目サ、ココハソコニ居ルロリ幼女ガ創リ出シタ世界ナンダロ?』
「え!?」
魔王サウスの回答に思わず言葉を失った一行。真っ先にその話題に食いついたのはウサテレの中に居るユリエだった。
「南方ダイチ! 貴方はどこまで知ってるの?」
『ヒヒヒ、ダイタイダヨ。タブン今マデノ世界ハ、ソコノロリ幼女ガ防衛本能デ創リ出シタ壁ダ。ダガソレト同時ニ俺トイウ存在ヲモ作リ出シタ。イヤ、俺ガ植エ付ケテヤッタンダ! ソノ《見エナクナッタ目ニナ》! アヒャッヒャッヒャッヒャ!』
魔王サウスの下卑た笑い声が木霊す。エイザベーヌは押し黙っているが、怯えている檻を掴んだ手が震えていた。
「ふざけんな!」
笑い声を振り払うように大声を上げたのはカイトだった。
「お前が水瀬に何をしようとしてるのか知らねぇけど、悪いことをしようとしてることは良く分かった!」
カイトの足に巻かれた黒い包帯、太股の部分に[閃光]の文字が浮かび上がる。それと同時に彼の周りにいくつかの光の小さな球体が浮かび上がった。
「俺がお前から水瀬を守ってやる!」
「カイトくん……」
彼は魔王サウスを睨みつける。だが、サウスは勇敢な彼を嘲る。
『オウオウ、カッコイイ事言ウジャナイ! マルデ主人公ミタイデ尊敬シチャウ!』
サウスの口元は笑ってはいるが、彼の両目はジッと彼等を見つめていた。
『ソウイウ女ノ前デカッコ付ケル奴見ルト、惨メナ姿ニ成ル程グチャグチャニ殺シテヤリタクナルンダヨ。二次元デモ……現実デモナ!』
広間に漂う闇の霧が、更に濃くなっていく。




