第23話 夢:(5/11)
「うおおおおおお! サンライト・レーザー!!」
「「グオオオオオオオン!?」」
カイトから放たれた無数の閃光は、魔物達を一掃していく。
ゴブリン達をド派手な技で倒して以降、周辺の魔物達が集まってくるようになったのだ。
「砕け散れ! シャイニング・ブレード!!」
「「ウヒョオオオオオオ!?」」
しかしながら、戦っているのはカイト一人である。
共に旅路を進めていたショーンと彼の肩に乗ったウサテレは、カイトの二歩後ろを淡々と歩き進んでいた。
「これで終わりだ! ライトニング・ブラスター!!」
「「ブボボオオオオオオ!?」」
最初は皆で力を合わせて戦っていたのだが、徐々に作業は単調化されていった。結果として遠距離で、かつ広範囲攻撃と威力も中々出せるカイトの力で効率良く倒せることに皆気づいたのだ。
「彼の名前、一条カイト君って言ったかしら?」
「はい」
「凄く強くて助かってるのだけど……私達は本当に戦わなく良いのかしら?」
「えーっと……」
ユリエの質問に、ショーンは困ってしまう。思わず話題の中心であるカイトを見てみるが……
「うおおおおお! 超面白れえええええ! 俺つえええええええええええ!」
爆音と共に、彼のテンションは鰻登りであった。
「たぶん大丈夫だと思います。あんまり離れないように、危なくなったら助けて上げれば良いかと……」
「そ、そうね。目を離さないようにしておきましょうか……そうだ水瀬君! 君に報告があるの!」
何かを思い出したようにユリエは、ショーンに話題を出す。
「この前の恐竜世界の時、一緒に戦った清白モエカさんなのだけど……」
「……え!? モエカさん!?」
モエカの話題を振られるのは当然の流れであったが、いろいろ思考が停止していたショーンにとって彼女の名前は非常に衝撃的だった。彼の驚く様子に、ユリエは笑みを浮かべて頷く。
「ええ、それでその彼女なんだけど無事であることを確認したわ」
それなら、ショーンも知っていた。夢から覚めた直後に彼女と出会っている。ショーンにとってこれは知っている情報である。
だが、ユリエがさらに続けた会話の中に彼は違和感があった。
「清白モエカさん、命に別状はなかったわ。元々退院直後だったから腕に包帯は巻いていたけどね。君と同じく《《夢に関してのことを覚えている反応を見せたわ》》、もちろん君のこともね」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「え? どうしたの水瀬君?」
「今、モエカさんが夢の事も……僕のことも覚えているって言ったんですよね?」
「え、ええ、そうよ……まだ日本に居るエージェントがなんとか接触出来てからの情報で、暫定的な物らしいけど……」
ショーンの違和感が大きくなっていく。それと同時に足場がふらつくような不安感がゆっくり押し寄せてくる。その様子を感じ取ったユリエは、恐る恐る彼に尋ねる。
「どうしたの水瀬君?」
「……ユリエさん。聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「な、何かしら? 急に改まって」
「今日は何月の何日か教えてもらえませんか?」
「え? 今日の日付を?」
「はい、お願いします」
唐突な質問にユリエは一瞬戸惑ってしまうが考える素振りを見せ、そして慎重に答えてくれる。
「……今日は1月23日よ」
「……」
「水瀬君、どうして日付なんて聞きたいの?」
「・・・・・・いえ、何か夏休みボケしているみたいで」
「夏休みボケ?」
「な、何でもありません」
ショーンは思わず首を横に振ってしまった。それに対して、ユリエは食いついてくる。
「水瀬君、あなた何か今隠してない?」
「か、隠してませんよ」
「いいえ、何で日付のこと聞いたの? 詳しく教えてほしいの」
「別に深い意味は……」
「水瀬エリちゃんに関わることだとしたら? それでも教えてくれない?」
エリを引き合いに出してくるユリエ。それに対してショーンは軽く奥歯を噛む。あまり信用ならない相手に対して話したくない思いと、妹の何かに関わってる可能性を引き合いに出され、彼の中に葛藤が生まれる。悩んだ後にショーンは話すことにした。
「僕は、今8月だと思っています」
「……え?」
「でも、さっきカイト君に話を聞いた時、彼はエリちゃんと同じ学校に通ってる同級生なのですが、すでに1月の冬休みが終わっていて、エリちゃんが学校に半年来ていないと言っていました」
「それって……」
「つまり、僕と貴方達の認識に半年程の時差があるんです。もちろん理由なんて分かりません」
あえて、モエカのことは伏せて話した。
ユリエは笑うことはもちろんせず黙って話を聞き続け、そして頷く。
「そう……分かったわ。ありがとう」
と、簡単な返事を返すだけだった。
「それで、今の話はエリちゃんと何か関係ありましたか?」
「……まだ、何とも言えないわ。でも、君の話は貴重なものだと私は思ってる」
小さくショーンは溜め息を吐く。期待はしていなかったが、有力な情報とは遠いものであったからだ。
追求した所でユリエは情報を言ってはくれなさそうなので、別の質問を投げかけることにする。
「それじゃあまた質問です」
「何かしら?」
「貴方達は、夢の研究をしている機関だってことはこの前聞きました。そして、今はエリちゃんの夢の中を捜索しているそうですね」
「その通りよ」
「それでは根本的なことなのですが、何故エリちゃんの夢を覗いているのですか? 他の人達ではなく僕の妹で、ごく普通の一般人であるエリちゃんを?」
ショーンの問いかけに、またしてもユリエは考え込む素振りを見せる。
「……難しいわ。何て答えたらいいのかしら?」
「包み隠さず話せば良いんじゃないですか?」
「それが出来れば簡単ね。だけどそれがダメなのよ」
「何でですか?」
「それは前にも言ったけど、このウサテレ聞いた音声と見た夢の映像は常時記録されているの。だから、下手に情報を漏洩する訳にはいかないのよ。だから抽象的になってしまうのだけれど、それでも良い?」
良いか悪いか聞かれれば、それは悪いと答える。しかし、ちゃんとは答えてくれないにせよ重要な情報源であるのは確かだった。ユリエは、優しくゆっくりと話していく。
「彼女は今、特殊な病気にかかっているの」
「特殊な病気?」
「ええ、それで私達はその原因を調べる為にと、今後の科学の発展の為の被験者として水瀬エリちゃんが見ている夢を調べることになったのよ」
「ちょっと待って下さい! それって本当に病気なんですか!? エリちゃんそんな風には見えませんよ?」
ユリエは目を背けるが、やがて一瞬だけショーンを見つめ視線を下へ向けた。
「……そうなのかもしれないわね」
「え?」
「病気であることは確かなのだけれど、心の病気って所だと思う」
「心の病気……ですか」
「ええ、たぶんね。憶測の域は越えないのだけれども」
凄く曖昧な発言が多かったが、彼女が答えられるのはここまでのようだ。
「それじゃあ後もう一つ質問を……」
「まだあるの?」
遠慮なくショーンは頷く。
「大丈夫です。これで最後にします。貴方達の言っていた単語の意味を教えて下さい」
「単語?」
「ええ……ファーストとかセカンドとか言ってましたよね?」
そう聞かれたユリエは、また渋い表情を見せる。やがて考えがまとまったのか口を動かしたその時だった。
「そいつは俺様から答えてやるぜ! ジャップボーイ!」
「きゃ!?」
小さな悲鳴と共にユリエを押しのけ、見覚えのありすぎる黒縁メガネにボサボサ頭、ハムのような巨体が姿を表した。
「デーブさん!?」
「今お前、俺のことデブって言ったな!? ああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ウサテレの画面内しばらく嵐のように映像が乱れた。




