第21話 夢:(3/11)
「世界が闇に包まれる時、異世界より大地を照らす光の勇者現れる……と、古文書に記載がありますね……」
貴族風の身なりをした父がいつの間にやら現れており、この世界の歴史が記されているという古文書を王宮で働く者達の前で読み上げていた。
エリザベーヌが言っていた通り、彼は大臣という立場の人間らしい。
そして答えは出たとばかりに、高らかと声を上げる。
「つまり! この少年! 一条カイトが、魔王サウスの放った強力な魔王群を振り払い、この世界を包む闇を照らす光だと言うことであるッ!」
大臣の言葉に玉座に集まった城の者達は、一気に歓声を上げた。
「俺の名前は、一条カイト! 日本から来た小三の元サッカー部だ! 異世界転生したばっかりだけど、水瀬……確かエイザベーヌだったっけ?とにかく俺の同級生がさらわれちまったんだ! 仕方ねえから、俺の光の力を操るチート魔法で魔王をぶったおしに行ってくるよ! みんなよろしくな!」
「なんと異世界の勇者よ!? 危険をかえりみず王女の命を救って抱けると申しているのですか!?」
「当たり前だろ! アイツとは親友なんだからな!」
歓声に臆しないカイト。その年齢にそぐわぬ威風堂々たる振る舞いに、さらに大きな歓声が沸き上がる。
その様子を間近で見たショーンだが、彼はあまりの展開の早さと危機感の無さに目が点になっていた。
ノリノリの城内にノリノリの大臣は、笑顔のまま近くの兵士に声をかける。
「それではさっそく、旅の準備を致しましょうか。お前達、勇者様が一人で旅に出られるように準備を!」
「「ハッ!」」
「ちょ、ちょっと待ってよ!? 一人って、カイト君一人で魔王城に行くの!?」
聞き流せない発言に、ようやくショーンが言葉を挟む。それに対して大臣は、キョトンとした表情を見せる。
「はい、そうですが何か?」
「何かじゃないよ! だって彼はまだ小学三年生、つまりエリちゃんと同じ9歳なんだよ!」
「はい、存じ上げておりますが?」
「存じ上げてないよ! 危ないでしょ! 子供一人で、あの南方……相手は話しによると犯罪者なんだよ! そんな奴の所に一人でなんて……」
「おい! ショーンとか言ったな! そこのお前!」
今度はショーンと大臣の間に、カイトが割り込んでくる。
カイトはショーンをキッと睨みつけ、高らかと言ってのける。
「俺は子供じゃねぇ!!」
「子供だよ!!」
そろそろショーンの頭が痛くなってきた所で、大臣が笑いつつ説明をする。
「ショーン王子、その思いやりの気持ちは非常に素晴らしいと思います。ただ、少々心配が過ぎるのではないでしょうか?」
「……と、言うと?」
すると大臣は一つ頷き、自信満々に答えてくる。
「カイト様は異世界から来た存在、そしてこの世界には存在し得ない光を操る魔法を持っているのです」
「……うん」
「つまりチート! この世界において最強の力! 負ける要素は皆無と言うことです!」
そこまで聞いたショーンは、深い溜め息を漏らす。
「もう分かったよ……僕も彼に着いていく」
城の従者達はざわめくが、気にせず話を続ける。
「僕もエリちゃんのことが心配で居ても立ってもいられないんだ。カイト君一人に行かせる訳にもいかなしね。女王不在の国を誰が納めるのですかとか言わないでくれよ?」
「なんて素晴らしい! 自ら死地へ赴くなんてさすがショーン様でございます! それでは二人旅の準備を致しますね!」
「そこは、少しぐらい止める姿勢を見せても良いんじゃない!? え? 大丈夫? この国は本当に王族不在のままで良いの? それに二人旅って……お着きの兵士とか付けないの?」
「はい、たぶん何とかなりますからご安心を!いざと言う時は、私めが昇任し、王としてこの国を統治致しますから! アッハッハッハッハ!」
ショーンはどうせ夢だからと思い、考えることを止めた。
「アンタの名前、ショーンって言うだっけか? 俺の名前は一条カイト! これからよろしくな!」
「あ、う、うん……ショーンじゃないんだけど、よろしくね」
とりあえず、カイトと自己紹介を交わす。
話が無理矢理まとまった所でショーンは気合いを入れ直し、表情を変える。
「……よし! いろいろ納得いかないけど、とにかくエリちゃんさえ救えればいいや! それじゃあ、大臣! 長旅になりそうだし移動用の馬車を用意してくれないか?」
「いえ、魔王城はこの国の城門から歩いて一時間もしない所にありますので、必要ではないかと」
「は!? 一時間!?」
目玉が飛び出しそうなショーンを尻目に、大臣は窓の外を指さす。
指し示した先には黒く目で見えるほど禍々しいオーラを放った大きな城が、森を挟みデカデカと鎮座していた。




