第16話 夢:(10/10)
ショウは、南方と呼ばれた巨人に向かって走り続ける。
『クソガキ! コッチニ来ルンジャネェヨ!』
南方の胸部から熱線が吐かれ、ショウに向かう。
彼は熱線の軌道を読み、事前に射線上から避けていく。
熱線を放つ為には、胸部の頭が開いて撃つ動作が必要らしい。少しばかりの準備時間があるみたいだ。
それなら、撃つタイミングは見ていれば分かるということだった。
『来ルナ!? 来ルナ来ルナ来ルナアアアアア!?』
南方が生み出した恐竜達が、一斉にショウへと押し寄せていく。ショウも走りながら軽々と払いのけて行く。さらに後方から幾多ものニンジンが恐竜達に突き刺さり爆発する。
どうやら、ウサテレことデーブが何だかんだ援護してくれているようであった。
「これなら、行ける!」
そして、南方……巨人の目の前にショウは到着した。
「さあ、追いつめたぞ! 覚悟しろ!」
『フ、フザケルナ! 止メロ……止メロオオオオオオオ!!』
逃げ腰になる南方に、ショウは胸部の死角から一気に近づく。
「終わりだ!」
『ウアアアアアアァァァァァァァ……ナーンチャッテ☆』
南方がペロッと舌を出した途、全身に取り付いた恐竜の頭達が一斉に口を開く。
「なっ!?」
ショウが驚くのも束の間、幾つもの頭達から一斉に熱線が放出された。
『アーッヒャッヒャッヒャッヒャ! マンマトダマサレタナ! 別ニ胸カラダケ光線ガ出ル訳ジャネーンダヨ! 死ネヨオラアアアア!』
辺りが光に包まれていく。
凄まじいエネルギー量に、辺りの地面や溶岩が引きはがされ、粒子となって消えていった。
しばらくすると、巨人を中心にクレーターのような窪みが出来ていた。そこには焼けただれた臭いと、焦げ茶色の地面のみが広がっている。
「……うっ」
地面に倒れ伏せ、意識を取り戻したショウが目を開くと、誰かに抱かれたような暖かく心地の良い感触が自分の体を包み込んでいる事に気づいた。
「生きていたか……ショウ……よかった」
聞き覚えの女性に声に、ショウは目を大きく開く。
「モエカ……さん?」
モエカがショウを抱きかかえ、二人は向かい合うように倒れ込む。
彼女の背中は、酷く焼けただれていた。
「モエカさん何で!?」
ショウはゆっくりと軋む体を起き上がらせようとするが、上手く力が入らない。そんな彼の頬にモエカは優しく手を添えた。
「当然だ……私の方がお姉さん、だからな」
彼女はゆっくりと微笑む。
「何でも一人で……やろうとするな……私は、お前の……パートナー……」
頬を撫でる手から、ゆっくりと力が抜けていく。
モエカは目を閉じ、やがて――
「任せた……ぞ……逃げろ……ショウ……」
「あ……ああ……」
彼女は、眠りにつくように動かなくなった。
ショウは最後まで彼女から目を背けることの出来ず、頬に添えられた彼女の手を無意識に握りしめる。
『オイオイ、モシカシテマダ生キテルノカヨ。本当ニゴキブリミタイナ奴ラダナ』
呆れたように肩を竦め、横に首を振る南方。
そして、恐竜達がショウ達を取り囲むようにワラワラと円を描くように集まりだす。
『サアーテ、コレデオシマイダ! 最後ハ仲良ク少シズツ食イ千切ッテヤルヨ! アバヨ! ヒーヒャッヒャッヒャ!』
南方の下品な笑い声を合図に恐竜達が口を開け、ショウ達に襲い掛かる。檻の中に投げ込まれた肉に群がるように、恐竜はショウ達の身体を食い散らかそうと囲んでいった。
遠くからエリの叫び声が微かに聞こえたが、恐竜達の鼻息と歯を噛み合わせる音で打ち消されていった。
『ヒャーッヒャッヒャッヒャ! ヒャッヒャッヒャ……ヒャッ!?』
勝利の高笑いを決めていた南方は、突然笑いを止めた。
恐竜達が群がる中心、ショウ達が居た所から一筋の光の柱が伸びたのだ。それと同時に三日月型の白い閃光が無作為に、乱雑に恐竜達の周りを鳥籠のように覆い尽くす。
瞬く間に光は消えていく。
そして、中心から恐竜達が千切りとなり、焦げ茶色の地面へ沈んでいった。
『ナ、何ガ起コッテ……』
「単純だよ。全部切ったんだ」
群の中心には横たわるモエカと腰に白い鞘、右手にシンプルな一本線を描いたような形状の片刃の剣を握り締める。
そして、ショウの右手に巻かれた黒い包帯には光り輝く文字で[剣心]と刻まれていた。
『ソノ能力ハ、ソノ死ンダ娘ノ能力ダロ!? 何デ、テメェガソレヲ!?』
「分からないさ。でも……」
ショウは剣を両手で持ち直し、南方を睨みつける。
「これは、僕の罪の証だ。モエカさんが僕達に……生きてほしいと託してくれた力だ。それだけは分かる」
そして彼は中段に剣を構え、肺に溜まった息を吐き出していく。
今まで竹刀すら持ったことがないはずのショウは覇気を纏い、片足を一歩だけ踏み込む。
『何言ッテンダ! ク、クソッ!! モウ一度コレデ終ワリニ……』
南方が言葉の途中、数多もの白い閃光が巨体を走り抜ける。
体に付いた頭達が口を開き、全方位熱線を放出しようとしていた。
しかし遅かったようだ。
恐竜の頭達は、鼻の先から縦真っ二つにされていく。いつの間にか南方の後ろに回り込み、白い剣を鞘に収めるショウ。
その瞬間、巨人の上半身と下半身の間に一筋の頭と胴体の間に一筋の閃光が走った。
『フ、フザケンナ!! コンナガキニ、アッサリトヤラレテ……』
巨人は、徐々にズレていく体と頭を必死に押さえようとするが、体内に溜まった熱線が隙間から漏れ始め、
『ギャアアアアアアアアア!!』
青白い光に覆われ、キノコ雲と共に巨人である南方ダイチは爆発四散した。
……
白く輝く扉が、巨人の撃破と共に彼らの目の前に現れた。これで、この悪夢から覚めることが出来る。
「清白モエカ、日本人でリストアップして! 安否を確認したいの! 場所はたぶん……」
ウサテレの画面内が慌ただしくなっていた。
ウサテレ自身は、動かなくなったモエカの側に座り込み、ウサギの耳を伸ばし、モエカの体へくっつけていた。
「モエカさん! 死んじゃダメ! モエカさん!」
涙声でモエカの体を揺するエリ。モエカは眠ったように反応を返さなかった。
「僕の……せいだ」
巨人を倒したショウは、この結末に呆然と立ち尽くした。
「僕のせいで……モエカさんが」
ショウは自分を攻める。自分の浅はかな行為で犠牲者が出てしまったのだ。
彼は、責任に押しつぶされそうになる。
自分のせいで、
自分のせいで……
自分の……
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