第4話:この夜に、全ての迷いを捨てろ!
夜がすでに町を包み込んでいた。松明と星明かりだけが空を照らしている。
石と泥の混じった地面の上で、王国軍が集まり、将軍の指示を待っていた。
「よし、皆の者! 今夜は宴だ!」 将軍が意気揚々と叫んだ。
「応!!!」 全軍がそれに応えた。
アストンもその軍勢の中にいた。ここでは階級は問われない。全員が同じ目的のために集まっている。
アシュケラン国を守るために!
彼は微笑んだ。この作戦の一員であることを嬉しく思っているようだ。
アストンは最前列にいるダダンのもとへ歩み寄った。
「どうだ? 準備はできたか?」 アストンは盾と剣を手にしていた。
ダダンは黙ってうなずいた。
「よし。俺は最前列で戦う。」 アストンは装備を整え、振り返った。「ビンガーの隣にいる。ヒカリを頼む。」
彼は群衆の中に消えていった。
ダダンがヒカリの方を振り返った。
ヒカリは体をほぐしながら、これから使う弓を点検している。黒い衣装は相変わらず、その小さな体をすっぽりと覆っていた。
ヒカリが振り返った。「どうした、ダン?」
「いや…」 ダダンはためらった。「防具なしで戦うのか?」
「ああ、ちゃんと着けてるよ。」 ヒカリは手首の部分をまくった。黒い布の下には、鋼の防具が巻かれていた。
「おお…」 ダダンは言葉を失った。
「デモスのところへ行ったほうがいい。槍が必要だろう。」 ヒカリはプラデモスの方を指さした。
「わかった、行ってくる。」
ダダンはプラデモスに向かって歩き出した。途中、数人の兵士に呼び止められた。
「おい! お前は誰だ?」 一人の兵士が叫んだ。「民間人はここにいちゃいけない! 危険だ!」
ダダンは振り返った。「俺は前方部隊の兵站係だ。」
「ほお、デモス様のところの者か?」 兵士は目を大きく見開いた。
「ああ。」 ダダンはそれ以上構わず、歩き続けた。
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プラデモスは他のハンターたちと作戦会議中だった。その表情は普段とは違い、非常に真剣だ。
「デモス様!」 ダダンが後ろから声をかけた。「槍を持ってきました。」
プラデモスが振り返った。「おお、ありがとう、若いの。そこに置いてくれ。」 彼は積み上げられた箱を指さした。
「ちょっとそこにいろ。これを聞け。」
プラデモスは防具なしで立ち上がった。その声ははっきりと響き渡る。
「よし、諸君! 我々が相手にするのは巨大コモドドラゴンだ。一噛みされれば命はない。治療薬も限られている。」
彼は胸元をまくり、ドラゴンに噛まれた傷跡を見せた。
「俺は経験済みだ。だが、我々羽毛トカゲ族は、同族の毒には耐性がある。」 彼は服を戻した。
「だから、俺の指示に従ってほしい。だが、トカゲ族の者たちには指図はしない。」 プラデモスは槍を掲げた。
一人の兵士が立ち上がった。「では、我々人間はどうすれば?」
「我々トカゲ族の後ろにいろ。中距離からの攻撃に備えろ。」 プラデモスは手振りを交えて説明した。
彼は続けた。「ハンターである我々は奇襲をかける!」
プラデモスはダダンを見た。「ダン、わかったな?」
ダダンはプラデモスの目を真っすぐに見つめ、うなずいた。
「そこでしっかり生き延びろ。」 プラデモスは再び軍勢に向き直った。
ダダンは後方の兵站エリアへと向かった。
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「終わったのか?」 ヒカリが馬車の中から尋ねた。
「ああ、とりあえずは。」 ダダンはため息をついた。
ヒカリはその様子を見て、「なら、俺は弓兵のところへ行く。」 馬車を降り、去っていった。
ダダンは馬車の端に座り込んだ。「はあ… どうしてこうなった。ただ働きたかっただけなのに。」 彼はうつむいた。「地球で働くべきだったのか。」
アストンが前線から戻ってきて、彼のそばに立った。
「ダン、大丈夫か?」 彼はダダンの肩に手を置いた。
「あまり… ただの店員のはずだったのに。」
「ダン、思ってたのと違うかもしれない。でもな、ここは退屈しない場所だ。」
ダダンはアストンを見上げた。「どういう意味です?」
「そのうちわかるさ。」 アストンは戦士の列へと戻っていった。
ダダンはただその場に立ち尽くし、アストンの言葉を反芻していた。
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前線の戦士たち
将軍は軍の前に立っていた。
冷たい空気がアシュケランの城門を包み込んでいた。風と小雨が兵士たちを襲い、木々がざわめき、鳥たちはこの出来事を見守るかのように鳴きやんでいた。
「いいか、諸君。これがお前たちの戦いだ…」 将軍は軍を見渡した。
アストンが慌てて演壇に上がった。「ああ、将軍は大げさですね。」 彼は照れ笑いを浮かべた。
「おや、そうか? すまない、つい熱くなってしまって。」 将軍は頭をかいた。
「改めて、俺はアストン。Sランクの冒険者だ。」 アストンは静かに自分の階級を告げた。
「なに? あの店員がSランクだって?」
兵士たちは信じられずに噂しあった。
「俺も噂だと思ってたよ。Sランクがこの街にいるなんて。」
アストンは剣を掲げた。「経験上、コモドドラゴンは厄介で危険な相手だ。だが、現代の技術を持ってすれば、簡単に倒せる。」
彼は叫んだ。「士気を下げるな!」
兵士たちから士気の高い雄たけびが上がった。その声はコモド軍にも届き、一瞬彼らを沈黙させた。
ビーストテイマーは驚いた。「なぜコモドどもが止まる?」 彼は跨るコモドを鞭打った。「おい! 止まるな!」
コモドたちは再び進軍を再開した。大地が再び震え始める。彼らは城門まで数百メートルの距離まで迫っていた。
将軍が素早く前に出た。「おい! 重装歩兵、陣形を整えろ!」
重装歩兵たちは前に出て盾を構えた。その中でもビンガーは一番大きな盾を掲げていた。
「よし!! できる限り耐え抜くぞ!」 ビンガーが気合いを入れて叫んだ。
「アストン、戦士部隊を重装歩兵の後ろに配置しろ!」 将軍が指示を出す。
アストンは微笑んだ。「お任せを、将軍。」
「よし、戦士部隊! この戦場で己の力を示せ!」 アストンは前方へ駆け出し、即座に体勢を整えた。
全部隊が配置についた。重装歩兵は精神を集中させ、いつでも戦えるよう短剣を抜いて構えた。
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遠くで、ヒカリとダダンは最前列の兵士たちの背後に立っていた。
「おや、もう始まったか。」 ヒカリは戦いに慣れた者のような淡々とした口調で言った。
ダダンは彼女を見た。「すぐに行くのか?」
「ああ、すぐに行く。」 ヒカリは弓兵の位置へと歩いていった。
「お前はここで一人か。」 ダダンは弓兵の後ろに立った。
突然、茂みから一匹のコモドドラゴンが飛び出してきた。その目はダダンを獲物としてとらえていた。
「しまった… 皆、ここにコモドがいるぞ!」 ダダンは弓兵の集団に向かって走った。
ダダンの走る音がヒカリの耳に届いた。
ヒカリが矢を構えた。「しゃがめ、ダン!」
ダダンが身をかがめる。
「シュウウウウ!」 矢が放たれ、その魔物の右足を捉えた。
「大丈夫か、ダン?」
ダダンが地面から起き上がった。「どうやら大丈夫みたいだ。」
ヒカリが再び警戒態勢に入る。「油断するな。まだ生きている。」
「ウオッ!」 何かが木から飛び降りた。
「どけ!」 「グサッ!」
槍がコモドの頭部を貫き、魔物は断末魔の叫びを上げた。
「ダン! 槍をもう一本くれ!」
それはプラデモスだった。
「デモス様?」 ダダンは驚いた。「なぜここに?」
「はは、言い忘れてたな。ハンターは戦場を縦横無尽に動くんだ。」 プラデモスはダダンから槍を受け取った。
「この森には数十人のハンターが潜んでいる。安心しろ。」 彼はいつものように温かい笑顔を見せた。
「助かりました、デモス様。」
「気にするな。」 プラデモスは顔をそらした。「覚えておけ、我々は敵を側面から叩く。だから、この場所は―」
突然、再び茂みからコモドが飛び出してきた!
プラデモスは即座に槍を投擲し、コモドの頭部を貫いた。槍は頭から背中まで突き抜けた。
「だから言っただろ、この場所は安全だ。覚えておけよ! はははは!」 プラデモスは笑い声を残し、森の中へと消えていった。
「はあ… 危うく食われるところだったな、ダン。」 ヒカリがダダンに近づいた。
「ええ、デモス様がいてくれて助かりました…」 ダダンは安堵の息を漏らした。
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一方その頃… 重装歩兵の前線
「耐えろ!!!」 ビンガーがコモドドラゴンの突撃を受け止めながら叫んだ。
コモドはビンガーの盾に激突し、その頭部は粉砕された。血しぶきが飛び散る。
「おい、右翼! 足元が甘いぞ!」
「ドオッ!」 右翼が別のコモドの強烈な一撃を受けた。コモドは倒れたが、数名がその衝撃で弾き飛ばされた。
アストンが飛び込み、盾で殴打し、連続で剣を振るった。
「斬ッ! 斬ッ! 斬ッ! 斬ッ!」
コモドはその場で絶命した。
「陣形に戻れ!」 アストンが指示を出す。
「了解!」 彼らは陣形に戻り、再びコモドの猛攻に耐えた。
数匹のコモドが重装歩兵の防御を突破した。中には味方の死体を足場にして飛び越える者もいた。
これを見た将軍は即座に戦士たちに攻撃を命じた。
「戦士部隊、アストンに続け!」
「おおっ!」 戦士たちの鬨の声が戦場に響き渡る。
アストンは叫んだ。「狙うは首だ!」
「了解!」
戦士たちの一太刀一太刀がコモドの群れを減らしていく。しかし、それでもまだ敵を撃退するには十分ではなかった。
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一方その頃… 後方部隊
「準備はいいか、ヒカリ?」 ダダンが心配そうに尋ねた。
「俺を侮っているのか?」 ヒカリが冷たく振り返った。
「そんなつもりは…」 ダダンは気まずそうに笑った。「ただ、心配でな。」
ヒカリはしばし沈黙した。
「俺のことを心配する必要はない。」 ヒカリは矢を上空に向けて放った。
「シャッ!」 矢は高く舞い上がり、そのままコモドの頭部を射抜いた。
ダダンはその精度の高さにただ驚くばかりだった。
その時、通常の常識を超えた大きさの弓を携えた人物が現れた。
「おい! 大丈夫か?」 その人物が突然声をかけてきた。
ダダンが振り返る。「大丈夫です。ところで、あなたは?」
「俺か?」 男は笑った。「はははは! 俺はトルヴィン・ヴェルミトラックス。ヴリコル族だ。」
ヒカリはトルヴィンの身長に驚いた—2メートルは超えている。体格も大きく、常軌を逸した弓を背負っている。
「ヒカリ、この人を知っているか?」 ダダンが尋ねた。
「知らない。」 ヒカリは首を振った。
トルヴィンはダダンに向かって身をかがめた。「知りたいか?」
ダダンは恐怖の表情でトルヴィンを見つめた。
「俺は弓の達人だ。人々は俺を『ドラゴン・スラスター』と呼ぶ。」 トルヴィンは微笑んだ。「気をつけろよ、若いの! ここは戦場だ。」
そう言ってトルヴィンは戦場へと向かっていった。
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主戦場
「アストン様! 戦士部隊に負傷者が出ています!」 兵士が慌てて報告した。
「ハンターを呼べ! 負傷者を後方へ運ばせろ!」
「了解!」
ハンターたちが呼び寄せられ、数名の負傷者が救助された。
「くそっ… まだだ。」
「ドオッ!」 巨大なコモドの攻撃で、重装歩兵の陣形が崩れた。
ビンガーの腕は血に染まっていた。「くそ… 力が持たない。」
アストンは驚愕した。「まさか… あれはヴェルミトラックスか!」
ヴェルミトラックスとは、この地におけるコモドの王の異名だ。体長は4メートル、体重は8トンに達する。
この緊迫した夜、軍の士気は低下し、戦況は絶望的になっていた。アストンもまた、小型のコモドとの長い戦いで疲弊していた。
「ははははは! アシュケランよ!」 ビーストテイマーが大声で叫んだ。「俺は復讐のために来た! この呪われた街を破壊しに!」
その憎悪は戦場にいる全軍に伝わった。
ビンガーは倒れ込んだ。「くそ… もう動けない。」
プラデモスがアストンのもとに跳んだ。「アストン! どうする?」
アストンは一瞬沈黙した。「後方の兵站部隊に伝えろ。救護物資を前線に送れ。そして、忘れるな…」 彼は痛みに耐えながら言葉を止めた。「うっ…」
プラデモスが近づいた。「なんだ、アストン? 言ってくれ。」
アストンは彼を見据えた。「ダダンに、馬車でそれを運ぶように伝えろ。」
「了解した!」 プラデモスは即座に兵站部隊の待つ後方へと走り去った。
「総員、後退!!!」 アストンが叫んだ。
命令を受けて全軍が後退を開始した。
「ビンガー、立て!」 仲間がビンガーを支えて後退させた。
重装歩兵はコモドに殴られた傷を引きずりながら、ゆっくりと後退した。
ヴェルミトラックスがアストンの前にゆっくりと歩み寄った。
「おや、これはアストンじゃないか。伝説の戦士様が… どうやらお疲れのようだな。」 ビーストテイマーは降り立ってアストンに近づいた。「この戦いに勝てると思ったのか?」 彼は満足げに笑った。
アストンは驚いた。「お前は… ヴァレリウス? なぜ生きている?」
「覚えていてくれたか? あはは… 実に気持ちの悪い再会だ。」 ヴァレリウスは即座に戦鎚をアストンに向けて振り下ろした。
アストンは高レベルの衝撃波で後方に吹き飛ばされた。
「はは、伝説の戦士がこんな雑魚攻撃で吹き飛ばされるとはな。」 ヴァレリウスは満足げに笑った。
アストンはプラデモスに受け止められた。「ぐっ… アストン、大丈夫か?」
「どうやら数本の骨が折れたようだ。」 アストンの声は痛みで震えていた。
「まずは退却だ。」
アストンはプラデモスの胸に手を触れた。「さっきの任務は終わったか?」
プラデモスはうなずいた。「ああ。すべて完璧だ。」
「ならば、よかった… 後は頼んだ。」 アストンはプラデモスの腕の中で気を失った。
プラデモスは光の速さで後方へと走り去った。
ヴァレリウスはただ笑うだけだった。「はははは!」 その笑声が響く。「伝説の戦士がこんなに弱いとはな。いや、俺が強くなったのか?」
彼はヴェルミトラックスに飛び乗った。「進め!」
ヴェルミトラックスが前進する。大地がさらに激しく震えた。
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プラデモスは後方部隊に到着し、将軍のもとへ走った。
「将軍! 敵はヴァレリウスです!」
将軍は衝撃を受けた。「ヴァレリウス? そんな… これはまずい。」 彼はプラデモスの両肩を掴んだ。「全軍に撤退を伝えろ。我々には勝ち目がない!」
プラデモスは最初は信じられなかったが、将軍が本気であることを悟った。
「承知しました、将軍。」 プラデモスは重い決意でその情報を伝達した。
ダダンが将軍に近づいた。「将軍、失礼を承知でお聞きします… ヴァレリウスとは何者ですか?」
「おや、知らないのか?」 将軍が振り返った。「彼は伝説の存在だ。『オールマスター』— 全ての階級を極めた男だ。そして今では、さらに凶悪なビーストテイマーの能力も身につけている。」
ダダンは唇を噛んだ。「狂戦士は助けになりますか?」
「誰のことだ?」 将軍は困惑した。
その時、闇の中から大柄な人影が現れた。
「やあ、遅れたかな? 羽毛トカゲが撤退を伝えてくれたけど。」
将軍は固まってしまった。「お前は…?」
「ああ、そうだ。俺はトルヴィン・ヴェルミトラックスだ。」
将軍は目を見開いた。「ドラゴン・スラスターか? 本当に?」
トルヴィンは小さく笑った。「そんな呼び方はやめてくれ。」
ダダンが将軍に尋ねた。「あなたはこの人をご存じなのですか?」
「ああ。」 将軍は目を閉じた。「彼はかつて、この街を鉄のドラゴン、ブルゲザリから救った男だ。一矢でその心臓を貫いた。」
ダダンは驚いた。「では、私たちにも勝ち目はあるのですか?」
トルヴィンはダダンを見た。「若いの、勝利を約束はできない。しかし、力になれるかもしれない。」
ヒカリが近づいた。「おや、助っ人が来たのか。」
トルヴィンが振り返った。「君も弓使いか? よろしく。」 彼は手を差し出した。
しかしヒカリは手を差し返さなかった。
「初めまして。私はヒカリ、F級の弓使いです。」 彼女の体は微動だにしなかった。
「ほお…」 トルヴィンは何かに気づいた。「女性が未婚の男性に触れてはいけないという慣習があると聞いたことがある。君もその一人か。」 彼は微笑んだ。「とにかく、今夜を無事に乗り切ろう。」
ヒカリはうつむき、恥ずかしそうにしていた。
ダダンが意気込んだ。「では、私にできることは何ですか?」
トルヴィンは顎に手を当てて考えた。「負傷者の手伝いをしてくれ。」
「了解しました!」 ダダンは後方へ向かった。
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「さて、行くか。」
トルヴィンはドラゴンボウと矢を構えた。渾身の力で弦を引き—放った。
矢は電光石火の速さで飛翔し、空気との摩擦で雷光を纏った。
ヴァレリウスは盾を構えた。「しまった。」
「ガンッ!」 金属の激しい衝突音が戦場に響き渡った。矢はヴァレリウスの防御を突破できなかったが、跳ね返って彼の後方の地面に突き刺さった。
「ドオオッ!」 地面が凄まじい爆発を起こし、溶岩が吹き出した。
「くそ… 危うくやられるところだった。あの狂戦士、まだ生きていたのか。」 ヴァレリウスは怒りに震えた。
トルヴィンは矢を古代龍の骨の矢に交換した。
戦場に静寂が訪れた。風が止み、全ての視線がトルヴィンに集まった。
ヴァレリウスは不吉な予感を感じ取った。「この予感は何だ?」 彼の体は震え、冷や汗が流れた。
彼は盾で防御を固めた。
トルヴィンは弦を引き絞る。「一… 二… 三…」
彼は矢を放った。先程の百倍もの威力。衝撃波、火炎、雷光、黒煙が一体となって龍の矢を包み込んだ。
矢は通過する現実を引き裂き—まるでブラックホールのように。
ヴァレリウスはただ一言、「しまった…」 とだけ言った。
「ガシャアアアアッ!」
矢はヴェルミトラックスの頭部を貫いた。コモドの顔は粉々に砕け、背骨も貫かれた。
ヴァレリウスは辛うじて回避したが、最愛のコモドは耐えきれなかった。
「くそ… くそっ! なぜお前はまだ生きている!」 彼はトルヴィンに向かって叫んだ。その憎悪はさらに強まった。
彼は後方部隊に向かって歩き出し、武器を構えた。「思い知らせてやる!」
ヴァレリウスは軍勢に向かって突進した。
プラデモスが左から飛びかかった。「ガンッ!」 激突は避けられなかった。
ヴァレリウスは微笑んだ。「ほお? ハンター風情がまだその程度の小細工を?」 彼はプラデモスの心臓目掛けて槍を投擲した。
槍は外れ—かすめて彼の手首を傷つけただけだった。
「ああっ!」 プラデモスが苦痛の叫びを上げた。
後方から馬が駆け寄り、プラデモスを救出した。
「将軍、すみません…」 プラデモスは痛みに震えていた。
「いいや、よくやった。奴は俺の手に負える相手じゃない。」 将軍は馬を駆り、ヴァレリウスを置き去りにした。
「はっ、臆病者め。」 ヴァレリウスは再び歩き始めた。
彼の前に、トルヴィンが立ちはだかった。身長差は歴然としているが、二人は共に伝説だ。
ヴァレリウス、人間の伝説。トルヴィン、狂戦士の伝説。
伝説たちが、その能力を解き放とうとしていた!
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— 第5話へ続く —




