第11話 — 「ヘドレンへの旅」
朝日が馬車を照らしていた。馬車は夜明け前から準備されていた。アストンがプラデモスとダダンのヘドレンへの旅のためにすべてを整えていた。
ダダンは馬車の周りを確認した。「準備はすべて整いましたか?」と尋ねながら、すべてがきちんとしているか確かめた。
プラデモスは御者席に寄りかかっていた。「おい、若いの。落ち着けよ。全部アストンが準備してくれたんだ。」
「ああ、すみません…ちょっとした癖でね。」ダダンは気まずそうに笑った。
アストンが近づいてきた。「よし、どうやら旅の準備はできたようだな。」
ダダンは頭をかいた。「この旅は少し怖いんです…護衛はついてくれるんですか?」
アストンはダダンの指にはまったままの指輪に気づいた。彼は心の中で、ダダンの安全はすでにヴァレリウスによって保証されていると考えた。「護衛は必要ないと思う。何せ、今は警備員の料金が高騰している。需要が多くてな。」
「昨夜の襲撃のせいですか?」ダダンが尋ねた。
アストンは小さく笑った。「はは、ああ。そのせいだろうな。」それは部分的には真実だったが、本当の理由は、ダダンが道中でヴァレリウス自身に見守られる可能性があるからだった。
プラデモスはすでに御者席に座っていた。「もういいだろう、ダン!行くぞ!」彼は隣の席を叩いた。「乗るのか?乗らないのか?」
「ああ、もちろんです。待ってください、デモス様!」ダダンは馬車の後部に飛び乗った。
ヒカリが店から走り出てきた。彼女はダダンの旅のために弓と矢を持っていた。
「ダン、これを持っていけ。」彼女は弓と矢を手渡した。
プラデモスはそれを見て微笑んだ。「おや、恋人とお別れか?」とからかうように言った。
ヒカリはプラデモスを鋭く睨みつけた。彼女は怒りを抑え、代わりに握り飯の包みをプラデモスに投げつけた。「それはお前のだ。私の国の伝統的な食べ物だ。」
プラデモスは器用にそれを受け止めた。「このイケメンなトカゲに優しいんだな。」
ヒカリはむっとして言った。「好きにしろ。」彼女は店の中に戻っていった。
アストンは首を振った。「もういいだろう、デモス。彼女をからかいすぎるな。」
プラデモスは笑った。「ははは、すまんすまん…怒らせるつもりはなかったんだ。」彼は握り飯を一口食べた。
「まあ、仲良くやってるならそれでいいさ。」アストンはポケットから袋を取り出した。「ああ、そうだ。もう一つ…これは旅費だ。余ったら好きなものを買うのに使っていい。」
プラデモスは袋を受け取った。「ほお、そうか…ありがたく受け取っておく。」彼はそれをしまった。「さて、それじゃあ行ってくる。店を頼むぞ。」
アストンは微笑みながら手を振った。「それはこっちのセリフだ。心配するな、俺の店だからな。」
「そう言うと思ったよ。」プラデモスは手綱を鳴らした。「ヒヤッ!」彼らはヘドレンへ向けて出発した。
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道中、ダダンが尋ねた。「ところで、デモス様、この旅はどのくらいかかりますか?」
「早くても四日だな。」プラデモスが答えた。
「え?四日?それは長すぎませんか?」ダダンは驚いた。
プラデモスは笑った。「現代だと思ってるのか?はは。」
「そういう意味じゃなくて…」ダダンは首を振った。「この旅は大丈夫なんですか?」
「大丈夫かって?ああ…でも、ちょうど交易の季節だから、道は結構混んでいるだろうな。」
「ああ、商人たちと一緒の旅か。」ダダンは馬車の中に寄りかかった。
「途中の村々にも立ち寄る予定だ。ついでにデータも集められる。」
「ああ、さすがベテランですね。」
プラデモスは誇らしげに微笑んだ。「もちろんさ。何年もやってるんだ。」
彼らは半日ほど旅をした。日差しは強く、馬たちは疲れ始めていた。
「よし、馬たち、ちょっと休憩だ。」プラデモスは大きな木の下に馬車を止めた。木陰は二人を十分に覆っていた。
うたた寝をしていたダダンが突然目を覚ました。「はっ?!」驚いて叫んだ。「もう着いたんですか?」
プラデモスは淡々と彼を見た。「いや、まだ着いていない。」
「じゃあ、何かあったんですか?車輪が壊れたとか?」ダダンはまだ半分寝ぼけていた。
プラデモスはため息をついた。「木の車輪がパンクするわけないだろう。」彼は馬を指さした。「ちょっと休憩してるだけだ。」馬たちは彼らと大量の荷物を運んでへとへとになっていた。
彼らは木の下で止まった。目の前には広い湖が広がっていた。美しい青い水が太陽の光を反射し、周囲には花咲く茂みや木々があった。その景色は疲れた体を癒すのに十分だった。
プラデモスは湖の方を指さした。「ダン、もし水が飲みたかったらあそこに行ってもいいぞ。でもワニには気をつけろ…伝説のワニがいるらしい。」
ダダンは一瞬沈黙し、そして慌てた。「え?ワニ?!ここにいるのは危険じゃないですか?」
「おい、若いの、落ち着け。湖からは遠い。それに、本当に喉が渇いた時だけだ。」
「湖、か。」ダダンはきらめく水面を見つめた。
「ああ、ここはレヴィタン湖だ。水は澄んでいて、そのまま飲めるくらいだ…」プラデモスが説明した。「いくつかの会社がこの水を瓶詰めにして、大都市に売っているんだ。」
ダダンはそれを想像して理解した。「ああ…ペットボトルの水か。」彼は微笑んだ。
プラデモスは首をかしげた。「何をニヤニヤしてるんだ?」ダダンの突然の笑顔に少し不気味なものを感じた。
「ああ、いや、何でもない…この水を売ったらどれだけ儲かるか考えてただけだ。」
「ほお、なかなか頭が回るじゃないか。」
ダダンは慌てて首を振った。「いいえ、ただの妄想です。」
彼らは大きな木の下で横になった。しばらくして、プラデモスが立ち上がった。「そうだ、ダン…馬の番を頼む。湖のそばで草を刈ってくる。」
ダダンは困惑して彼を見た。「草?何のために?」
「何のためって?馬の餌だよ!」プラデモスは馬車の横から鎌と大きな袋を数枚取った。
ダダンはすぐに理解した。「ああ、草刈りか。」彼は地球の習慣がこの世界にも伝わっているのだと思った。
「これ知ってるのか?」プラデモスが尋ねた。
「ああ、もちろん。いくつかの村では、家畜の餌として草を刈るんだ。」
「賢いな…よし、草を刈ってくる。」プラデモスは湖に向かって歩いていった。
ダダンは座ってプラデモスを見守りながら、弓を手に取り調べていた。「この弓、結構強いな。」
突然、頭上から葉っぱの擦れる音が聞こえた。ダダンは驚いて後退した。「なんだ?」彼は見上げて枝の間を探したが、何も見えなかった。
「何だったんだ…?何か上にいるみたいだ。」
「ドサッ!」突然、子供が木から落ちてきた。髪は暗い緑色で、ぼさぼさだった。体は小さく、小学生くらいの大きさで、野生じみた表情をしていた。
その子はうなるような声を発した。「グルル…」そして森の中へ走り去り、茂みの間に消えた。
ダダンは驚いて見つめた。「あの子はどうしたんだ?」彼は再び木に近づき、その子の影が暗い森の中へ消えていくのを見つめた。
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プラデモスが草の入った袋を抱えて戻ってきて、木の下に立ち尽くすダダンに近づいた。
「おい、どうしたんだ、ダン?」プラデモスは袋の一つを馬の前に置いた。
ダダンはまだ森を見つめていた。「植物でできた服を着た子供を見たんだ…それで逃げていった。」
プラデモスは近づき、ダダンの視線を追った。「人間だと確信できるのか?」
「人間だと思う。」
プラデモスは眉をひそめた。「ここに長居はできないな。」彼はダダンの背中を叩き、出発の準備をするよう合図した。「行くぞ、ダン。ここを離れるんだ。」
「はい。」それでもダダンの目は暗く深い森から離れなかった。何かが森の中から彼を見つめているかのように、鋭く見つめていた。
プラデモスが再び呼んだ。「さあ、ダン。準備はできた。」
ダダンは馬車に駆け寄り飛び乗った。「準備できました、デモス様!乗りました!」
プラデモスは後ろを振り返って確認した。「よし、ヒヤッ!」彼らはすぐにその場所を離れた。馬と木製の車輪がぶつかり合う音で旅は少し揺れたが、彼らはさっきの出来事について話し合った。
「大丈夫か、ダン?」プラデモスが尋ねた。
「大丈夫です。何ともありません。」
「よかった。」プラデモスはしばらく沈黙した。「この地の『捨てられた人間』の噂を知っているか?」
ダダンは眉をひそめた。「捨てられた人間?」
「ほお、アストンはまだその話をしていないのか?」
「一度も。さっき見た子供と何か関係があるんですか?」
「ああ…まあ、そんなところだ。」
ダダンは身を乗り出した。「この地で彼らに何が起きたんですか?」
プラデモスはまず水を一口飲み、それから頭をかいた。「ああ、それは…長い話だ…それに歴史は結構退屈だ。」
「そんなに長いんですか?」
「ああ、全部話したら何日もかかるだろうな。」プラデモスは笑った。「目的地に着くまでにちょうどいいくらいの長さだ。」
「じゃあ、なぜ今話してくれないんですか?」
プラデモスはダダンの方を向いた。異様な気配を感じて、ダダンは不安になった。「何かありましたか、デモス様?」
プラデモスは微笑んだ。「すまん、すまん…怖がらせたか?」彼はダダンを見つめた。「本当に聞きたいのか?」
「はい、デモス様。」
「わかった…だが、これを聞いたらこの世界に対する君の見方が少し変わるかもしれないぞ。」
ダダンは沈黙した。
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プラデモスは語り始めた。「この世界は『エーテルガルド』と呼ばれている。多くの種族で満ちている。」
「昔、エーテルガルドには多くの種族が住んでいたが、人間はまだこの世界に存在していなかった。トカゲ族、鳥族、ドワーフ、ヴリコル、そしてそれ以外の多くの種族。彼らは力を使って権力を争っていた。」
「すべての種族はヴリコルの狩りから逃れていた…しかし、ドワーフたちは常に彼らの前に立ちはだかった。彼らは平和を愛する種族だったからだ。しかしヴリコルは、そんな弱い種族に指図されるのを好まなかった。」
「当時のヴリコルの王はアグナスタンという名だった。アシュケランの地に生きた伝説のヴリコルだ。」
プラデモスはアグナスタンの声を真似た。「おい、ドワーフ!我々の獲物を狩るのを邪魔するな!」
「彼らは他の知性を持つ種族を狩り食う者たちだった。だからドワーフたちは決してそれを許さなかった。しかし彼らの力への欲求が行動を理不尽にさせた。」
「ドワーフの王、ギノヴァは彼らの行為に強く反対した。彼は他の種族の盾となった。他の種族がまだ戦っていても、彼はすべての種族の平和を唱えた者だった。」
「ギノヴァは最前線に立ち、アグナスタンと向き合い、平和と協定について話し合おうとした。」
プラデモスは厳しい表情でその場面を再現した。「アグナスタン、もしこのまま続けるなら…お前とお前の民の安全は保証できないぞ!」彼の声は晴天の霹靂のように響いた。
「アグナスタンは欲望と力と権力に取り憑かれていた。彼は軽く対応した。」プラデモスは嘲笑った。「お前のような小さな生き物が私を止められると思っているのか?ははは…笑わせるな。」
「そしてアグナスタンはギノヴァのハンマーを掴もうとしたが、持ち上げることさえできなかった。彼の手はギノヴァの巨大なハンマーによって地面に押し付けられた。」
「ギノヴァは激しい怒りでアグナスタンを見つめた。彼の鋭い視線は、彼が死ぬ覚悟で、目の前の誰をも殺すつもりであることを示していた。自分を弱いと思っているのか?」その瞬間、彼らの力の差は明らかだった。
「ギノヴァは石のように冷たい顔で、アグナスタンが決して忘れられない言葉を発した。」
プラデモスはギノヴァの冷たい声を真似た。「お前は私の全軍を壊滅させられるかもしれない。しかし、私に匹敵するには千年かかるだろう。」
「冷たくも轟くような声は、アグナスタンの後ろにいたヴリコル部隊を震え上がらせた。恐怖が彼らに忍び寄り始めた。」
「しかしアグナスタンのプライドは傷つけられた。彼は激怒した。彼の感情は抑えきれずに爆発した。」プラデモスは燃えるような赤い目で実演した。「貴様!」
「ギノヴァは冷たく返しただけだ。何が望みだ?」
「アグナスタンはギノヴァに向けてパンチを放った。そのパンチの音はまるで十個のTNT爆弾が同時に爆発するかのようだった。粉塵が辺り一面に広がり、戦場全体を覆った。」
「しかしギノヴァは単にアグナスタンの手を掴み、邪魔なハエのように払いのけた。」
プラデモスはギノヴァを真似た。「そんな弱いパンチで私を倒せると思っているのか?」
「アグナスタンは驚き、ショックを受けた。彼の顔は青ざめた。お、お前…怪物だ。彼はそのような力で簡単に世界を征服できると思っていたが、その力は今や正しい側にあった。」
「ギノヴァは地面からハンマーを持ち上げた。」プラデモスはその動作を真似た。「だから言っただろう。私に匹敵するには千年かかると。」
「そしてギノヴァはアグナスタンに向けてハンマーを振り下ろす準備をした。」プラデモスは力強い口調で言った。「誰かを殴るなら、殴り返される覚悟をしろ。」
「ギノヴァは高速でハンマーを振り抜き、アグナスタンの胸に直撃させた。」
「アグナスタンは懇願する暇しかなかった。」プラデモスは哀れな声に変えた。「お願—」
「バキッ!」プラデモスは衝撃音を再現した。「彼の胸はハンマーで粉砕された。アグナスタンは空高く吹き飛ばされ、遠くの山に激突し、ヴリコル部隊を震え上がらせた。」
「血に染まったハンマーは、アグナスタンが完全に破壊されたことを示していた。その衝撃で血や歯の破片が飛び散った。」
「ギノヴァはハンマーを地面に叩きつけ、地震のような震動を引き起こし、ヴリコルたちをさらに恐怖させた。」
プラデモスはギノヴァのこだまする声を真似た。「よし、お前たち…死にたい者は一人ずつ前に出ろ!」
「しかし彼らはただ沈黙し、後退し、熊に追われる鹿のように森の中へ逃げ去った。」
「ギノヴァは安堵のため息をついた。ようやく終わった。」プラデモスは安堵の表情に変えた。「そして彼は後ろの部隊に向き直った。我々の勝ちだ。」
「兵士たちの歓声が森に響き渡った。勝利の雄叫びは森の隅々まで聞こえた。」
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ダダンは眉をひそめた。「ちょっと待ってください…捨てられた人間の話をするんじゃなかったんですか?」
「おい、言っただろう…この話は本当に長いんだ。」プラデモスは肩をすくめた。
「でも、なぜ人間と関係のない二つの種族の話をしているんですか?」
プラデモスは首を振った。「我慢しろ、若いの…この話は、異種交配によって新しい種族が誕生するという重要な話につながるんだ。」
ダダンは興味津々で身を乗り出した。「異種交配?それはどういうことですか?」
プラデモスは少しイライラし始めた。「とにかく聞け、若いの!」
ダダンは黙った。「はい、デモス様…」
プラデモスは話を続けた。
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— 第12話へ続く —




