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VERSE0.0-世界政府記録アーカイブ文書001  作者: 甘酒
エピソード6
70/94

ニセモノ

殺気が弾けた。


次の瞬間。


"ギン"が腰の武器を抜き放ち、一直線にエースの喉元へ斬りかかる。


速い。


迷いもない。


だが。


「遅ぇよ」


エースは半歩だけ身体をずらす。


刃が首筋をかすめ、風を切った。


すれ違う、その一瞬。


迷わず引き金を引く。


乾いた銃声が響いた。


対怪異戦闘弾は狙い違わず、相手の右腕を撃ち抜く。


「っ……!」


剣が地面へ転がる。


その顔に初めて浮かんだのは、ギンなら決して見せない表情だった。


憎悪。


そして、計画を見破られた困惑。


「悪いな」


エースは一気に踏み込む。


体勢を崩した相手をそのまま地面へ押さえ込み、特殊拘束ワイヤーを両腕へ巻きつけた。


金属音とともに拘束具が締まり、"ギン"は完全に動きを封じられる。


「本物はもっと愛想悪いし、もっと人間くさい」


肩で息をしながら笑う。


「それに、お前みたいに大事なもんを忘れたりしねぇよ」


拘束された"ギン"は何も答えない。


ただ。


その目だけが、憎しみに染まっていた。


姿はギンのまま。


なのに、そこには欠片ほどの面影もない。


背筋を這うような嫌悪感を振り払い、エースは通信機へ手を伸ばした。


「こちらエース。偽装個体一体を確保。応援を――」


そこで言葉が止まる。


嫌な予感がした。


「……ギン?」


通信を切り替える。


「ギン、応答しろ」


返事はない。


ザーッというノイズだけが耳を刺す。


「ギン!」


もう一度呼ぶ。


「聞こえるなら返事しろ!」


沈黙。


エースの鼓動が速くなる。


頭の中で、一つの答えだけが浮かんだ。


俺の隣にいたギンが偽物だった。


なら。


ギンの隣にいる俺も――。


「……クソッ!」


その瞬間にはもう走り出していた。


拘束した偽ギンは、駆けつけてきた応援部隊へ引き渡す。


説明は最低限。


「そいつは絶対に逃がすな!」


それだけ叫ぶと、踵を返した。


ギンが向かった現場。


記憶だけを頼りに、全力で駆ける。


肺が焼ける。


足が悲鳴を上げる。


それでも速度は落とさない。


「間に合え……!」


祈るように呟く。


何度も。


何度も。


頭の中では最悪の光景ばかりが浮かぶ。


それを振り払うように、さらに足へ力を込めた。


ギンは、自分にとって守るべき後輩だ。


それだけじゃない。


失いたくない、大切な存在だった。


だから。


――頼む。


どうか、まだ間に合ってくれ。

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