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VERSE0.0-世界政府記録アーカイブ文書001  作者: 甘酒
エピソード6
67/94

つながる線

「――嘘、でしょ……」


震える声が、静まり返った情報解析局に落ちた。


ココアは伊達メガネの奥で目を見開いたまま、正面のモニターを凝視している。


部屋中のディスプレイには、世界各地から送られてくる情報が滝のように流れ続けていた。


警報。


現場映像。


座標。


被害報告。


どれも今この瞬間も更新され続けている。


キーボードを叩く指は止まらない。


「発生座標……時系列……裂け目の規模……」


一つずつでは見えない。


だから、全部重ねる。


画面の中で世界地図が何度も描き替えられ、無数のデータが一本の線として結び付いていく。


そして。


ココアは過去の事件データを呼び出した。


事件A――海外某国で発生したゾンビ大量発生事件。


事件B――超巨大怪獣ベヒモス出現事件。


事件C――孤島で発生した古代生物脱走事件。


事件D――円卓による世界政府への宣戦布告。


それぞれ無関係だと思われていた事件の記録が、次々と同じ画面へ重ねられていく。


「そんな……」


解析結果が表示される。


裂け目のエネルギー波形。


空間の歪み方。


発生前後の揺らぎ。


一致率――99.97%。


「全部……同じ……?」


思考が止まる。


いや、止められない。


今まで点だったものが、一本の線になっていく。


事件Aも。


事件Bも。


事件Cも。


そして円卓も。


全部。


最初から、同じ場所へ繋がっていた。


「向こう側……」


無意識にその言葉が漏れる。


これまで誰も正体を掴めなかった存在。


それが今、ようやく形を持ち始めていた。


だが。


ココアの思考はそこで終わらなかった。


「違う……まだ何かある」


彼女は現場から送られてきた別のデータを開く。


世界各地で同時に報告され始めた、理解不能の事件。


世界政府職員が突然仲間を襲った。


そんな報告が、何十件も届いている。


最初は内部スパイだと思った。


それしか考えられなかった。


ココアは顔認証データを開き、勤務履歴と照合する。


数秒後。


解析結果が表示された。


生体情報一致率 99.99%


「やっぱり本人……」


だが、その直後。


次の一文を見た瞬間、全身が凍りついた。


勤務記録・位置情報との整合性を確認できません。


ありえない。


同じ時間。


同じ人物が。


別々の場所に存在している。


「……そんなはず」


震える指で、さらに解析を進める。


通信履歴。


監視カメラ。


GPS。


行動ログ。


一つずつ照合するたび、否定したい仮説だけが補強されていく。


そして。


ココアは、小さく呟いた。


「スパイじゃ……ない」


世界政府の中に裏切り者がいたわけではない。


最初から。


"別の世界"に存在する同じ人物が、こちらへ侵入してきていただけだった。


「なりすまし……」


変装でもない。


洗脳でもない。


本人そのもの。


向こう側に存在する、もう一人の世界政府職員。


それがこちらへ侵入し、本物と入れ替わっていた。


「だから誰も気づけなかった……」


背筋を冷たいものが駆け上がる。


もし隣にいる同僚が。


毎日話していた仲間が。


昨日まで笑っていた友人が。


本物ではないとしたら。


誰が見抜けるというのだろう。


「っ……!」


ココアは勢いよく通信端末を掴む。


「全支部へ緊急共有!」


声が裏返る。


「敵は内部スパイじゃない! なりすましよ! 味方の姿をして潜入してる!」


送信。


世界中の支部へ一斉送信されていく。


その瞬間だった。


一人の顔が脳裏に浮かぶ。


「……ギンくん」


血の気が引く。


今この瞬間も。


彼の隣にいる人物が、本当に本人だと言い切れるのか。


「お願い……」


震える指が、通信端末を握り締める。


「間に合って……!」


警告は送られた。


だが。


神奈川支部へその情報が届くより早く。


運命は、すでに動き始めていた。

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