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VERSE0.0-世界政府記録アーカイブ文書001  作者: 甘酒
エピソード4.5ー閑話
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緊急招集

「――緊急招集?」


休憩スペースで端末を眺めていたギンは、小さく眉をひそめた。


画面には簡潔な業務連絡が表示されている。


アメリカ支部よりエース隊員を含む戦闘部隊を派遣。


神奈川支部管轄区域における共同警戒任務を実施。


詳細はブリーフィングにて説明。


短い文章。


だが、その内容は軽くない。


海外支部の戦闘部隊が動くこと自体、滅多にない。


まして隊長格まで派遣されるとなれば、ただ事ではなかった。


アメリカ支部だと? 珍しい。


ギンは端末を閉じた。


理由はまだ書いていない。


少なくとも、遊びじゃないのは確かだ。


今日の非番は、この通知が届いた瞬間に消えた。


そんなことにはもう慣れている。


廊下の向こうから足音が近づいてきた。


「ギン」


ユズだった。


手には巫女装束を包んだ風呂敷。


いつもより少しだけ表情が硬い。


「お前も呼ばれたか」


「うん」


短く頷く。


「現場……うちの神社」


「神社?」


「今日、お祭りなの」


ギンは一瞬だけ目を丸くした。


「祭りの日に警戒任務?」


「厄年のお祭りだから」


ユズは静かに続ける。


「表では普通のお祭り。でも、私たちは裏を警戒する」


その言葉だけで十分だった。


一般客には何も知らせない。


だからこそ、自分たちが動く。


それが世界政府の仕事だ。


「祭り、見られるかな」


ギンがふと呟くと、ユズは少しだけ笑った。


「任務が落ち着けばね」


「少しだけ」


その一言に、仕事が最優先であることがよく表れていた。


そのとき。


「あ、失礼します」


控えめな声が聞こえる。


段ボール箱を抱えたクロが、壁際を歩いていた。


まだ神奈川支部へ来て間もない。


どこか遠慮がちな歩き方も変わらない。


「クロ」


ギンが声を掛ける。


「任務資料か?」


「あ……はい」


クロは箱を少し持ち直した。


「記録担当なので、資料室まで運ぶよう頼まれて」


「貸せ」


「え?」


「ついでだ」


ギンは箱をひょいと持ち上げる。


クロが慌てる。


「だ、大丈夫です! 僕が」


「俺のほうが早い」


そう言って歩き出してしまう。


クロは少し困ったように笑った。


「……ありがとうございます」


その笑顔は、以前より少しだけ自然だった。


「今日は長くなるぞ」


ギンは前を向いたまま言う。


「休めるときに休んどけ」


「はい」


「頑張ります、じゃない」


「休め」


その言葉にクロは一瞬きょとんとして、それから小さく笑う。


「……はい」


神奈川支部へ来てから。


こうして気軽に声を掛けられることが少しずつ増えてきた。


それがまだ少しくすぐったい。


ユズが時計を見る。


「時間」


「ああ」


「エースたちも、もう着いてる頃だね」


海外支部の精鋭。


その名前だけで、空気が少し引き締まる。


ギンはクロから預かった箱を担ぎ直した。


「行くか」


「うん」


「今日は仕事」


「お祭りは、見られますか」


クロが控えめに尋ねる。


「任務が終わったら」


ギンは笑って答えた。


「そのとき少しだけな」


三人は会議室へ向かって歩き出す。


まだ誰も知らない。


この任務が、ただの警戒では終わらないことを。

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