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VERSE0.0-世界政府記録アーカイブ文書001  作者: 甘酒
エピソード2
20/94

世界各地で



 休憩を終えようとした、その時だった。


 ピッ――。


 エースの端末が短く震える。


 定時連絡には少し早い。


「……?」


 画面を開く。


 最初の一行を読んだ瞬間、エースの表情から笑みが消えた。


 そのまま無言で文章を追っていく。


「どうした」


 ギンが覗き込む。


 エースは端末を少しだけ傾けた。


「本部から一斉通達」


「今回と類似した怪異事案が、世界各地で同時に確認されたらしい」


「同時に?」


「ああ」


 エースは画面をスクロールする。


「詳細は伏せられてる」


「ただ、どの支部にも応援要請が飛び始めてる」


 ギンは端末へ目を向ける。


 表示されているのは国名と支部名だけ。


 それでも十分だった。


 世界地図のあちこちで、火の手が上がっている。


「……そうか」


 反応は、それだけだった。


 エースは思わず聞き返す。


「驚かねぇのか?」


「別に」


 ギンは立ち上がり、装備を整える。


「世界のどこかじゃ、毎日何か起きてる」


「今回は、それが少し多いだけだろ」


 乾いた口調だった。


 感情を押し殺したような声音。


 そして、小さく笑う。


「むしろ都合がいい」


「都合?」


「怪異が増えるなら」


 一瞬だけ視線を落とす。


「……狩る相手が増える」


 笑っている。


 なのに、その目だけは少しも笑っていなかった。


 エースは何も返さない。


 返せなかった。


 Scene06で見せた、あの止まらなくなった刃。


 あれがまだ終わっていないことだけは分かった。


 だから、この話はここで終わりにする。


 代わりに、もう一度だけ端末へ目を落とした。


 表示されている発生地点。


 北米。


 南米。


 ヨーロッパ。


 アジア。


 互いに何の接点もないはずの場所へ、同じような報告が並んでいる。


(……偶然にしては)


 胸の奥が、小さくざわつく。


 怪異事件は珍しくない。


 だが。


 これほど離れた地域で。


 これほど似た事案が。


 ほぼ同じ時期に起きるものだろうか。


 答えは浮かばない。


 ただ、小さな違和感だけが残った。


 エースは端末を閉じる。


「……戻るぞ」


「回収班と合流する」


「了解」


 ギンは短く返事をする。


 二人は補給ポイントを後にした。


 この時はまだ。


 撤収できると、本気で思っていた。


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