# 第3話 ## 「猫耳少女、お弁当を守るために戦う」
# 第3話
## 「猫耳少女、お弁当を守るために戦う」
ゴブリン討伐の依頼を受けた修司とエルナは、森の中を歩いていた。
「本当に行くの?」
エルナが何度目か分からない質問をする。
「行く」
修司は即答した。
「ゴブリンよ?」
「ゴブリンだな」
「危険なのよ?」
「危険だな」
「じゃあ帰ろう!」
「行こう」
「話聞いてる!?」
---
修司は笑った。
異世界に来てから、不思議と毎日が楽しい。
疲れていても足が軽かった。
挑戦することがこんなに面白いなんて、昔は知らなかった。
---
その時だった。
ガサガサッ!!
茂みが揺れた。
「敵!?」
エルナが杖を構える。
修司も木の棒を握った。
すると――
飛び出してきたのは。
猫耳だった。
しかも女の子。
さらに。
なぜかパンを抱えていた。
---
「近づくなーっ!!」
少女は叫んだ。
「このパンは私のだーっ!!」
---
沈黙。
---
「……え?」
修司が固まる。
---
少女は震えていた。
だがパンだけは絶対に離さない。
まるで命より大切な宝物みたいに抱きしめている。
---
「取らないぞ?」
修司が言う。
---
「嘘だ!」
---
「取らない」
---
「本当に?」
---
「本当に」
---
少女は少しだけ安心した。
だが次の瞬間。
---
ぐぅぅぅぅぅぅ……
---
お腹が鳴った。
森中に響くくらい大きな音だった。
---
エルナが吹き出す。
「ぷっ!」
---
少女の顔が真っ赤になる。
「わ、笑うな!」
---
「ごめん!」
「笑ってる!」
---
修司はカバンを開いた。
途中で買った干し肉を取り出す。
「食べるか?」
---
少女の目が輝いた。
---
「いいの?」
---
「もちろん」
---
次の瞬間だった。
---
バクッ!!
---
早かった。
信じられないくらい早かった。
---
「おいしいーっ!!」
---
尻尾がぶんぶん振れている。
耳もぴこぴこ動いている。
分かりやすすぎた。
---
「名前は?」
修司が聞く。
---
少女は元気よく答えた。
---
「ミーナ!」
---
そして。
---
「お腹すいたー!」
---
「今食べたばっかりだろ!」
エルナがツッコむ。
---
ミーナは胸を張った。
「別腹!」
---
「早すぎる!」
---
修司は思わず笑った。
---
その時だった。
遠くから不気味な声が聞こえた。
---
「ギギギ……」
---
空気が変わる。
---
エルナの顔が真剣になる。
「来た」
---
木々の間から現れた。
緑色の肌。
汚れた棍棒。
赤い目。
---
ゴブリンだった。
---
一匹。
二匹。
三匹。
---
いや。
もっといる。
---
十匹近くいた。
---
「多いな」
修司が呟く。
---
「多いじゃない!」
エルナが叫ぶ。
「普通に危険よ!」
---
ゴブリンたちはニヤニヤ笑っている。
完全に獲物を見る目だった。
---
ミーナが震える。
「ど、どうするの……」
---
修司は木の棒を握り直した。
怖い。
正直、ものすごく怖い。
だが。
逃げたくなかった。
---
【勇気 Lv2→Lv3】
---
文字が浮かぶ。
---
修司は前へ出た。
---
「俺が時間を稼ぐ」
---
「無茶よ!」
エルナが叫ぶ。
---
「無茶でもやる」
---
そして。
修司は静かに笑った。
---
「まだ伸びる」
---
ゴブリンたちが一斉に襲いかかる。
---
だが。
修司の目は以前より少しだけ速く動いていた。
少しだけ体も動く。
少しだけ強くなっている。
---
小さな成長。
けれど確かな成長。
---
人生も同じだ。
昨日より一歩。
今日より一歩。
---
その積み重ねが未来を変える。
---
修司は棍棒を避ける。
横へ。
さらに前へ。
---
【回避 Lv8→Lv9】
【戦闘経験 Lv1→Lv2】
---
「おおっ!?」
---
能力が上がる。
戦いながら。
どんどん。
---
しかし。
その時だった。
---
森の奥から。
巨大な影が現れた。
---
ゴブリンたちが慌て始める。
---
「ギャ!?」
「ギギギ!」
---
エルナの顔が青くなった。
---
「嘘でしょ……」
---
修司も見上げる。
---
そこにいたのは。
普通のゴブリンの三倍はある巨体。
巨大な斧。
燃えるような赤い目。
---
ゴブリンキングだった。
---
「……でかいな」
修司が呟く。
---
エルナは叫んだ。
---
「いや! それどころじゃないから!!」
---
最初の依頼。
最初の大ピンチ。
そして修司の成長は、ここからさらに加速することになる――。
---
## 次回予告
### 第4話
**「五十歳、初めて本気で戦う」**
ゴブリンキング襲来!
逃げるか、戦うか。
修司が選んだ答えとは――?
そしてミーナの意外な能力が明らかに!
「お腹すいたー!」
「今そのタイミングじゃない!」
最初の大ボス戦、開幕!




