表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

# 第20話(後編) ## 「黒塔の王」

# 第20話(後編)


## 「黒塔の王」


現在の修司は息を呑んだ。


---


そこにいた男は。


---


自分だった。


---


いや。


---


自分ではない。


---


もっと冷たい。


---


もっと悲しい。


---


もっと孤独な顔。


---


世界中の絶望を背負ったような男。


---


《黒塔の王》


---


未来の坂本修司。


---


その瞳には光がなかった。


---


生きているのに。


---


まるで全てを失った人間の目だった。


---


「……俺か」


---


現在の修司が呟く。


---


黒塔の王は静かに見つめ返した。


---


そして。


---


小さく笑う。


---


「久しぶりだな」


---


その声。


---


どこか懐かしい。


---


だが。


---


あまりにも悲しかった。


---


未来の勇者が前へ出る。


---


「出てくるなと言ったはずだ」


---


黒塔の王は肩をすくめた。


---


「暇だった」


---


「嘘をつけ」


---


「そうかもしれんな」


---


まるで昔の友人同士の会話だった。


---


だが。


---


修司は分かった。


---


この二人。


---


かつて同じ未来を歩いていた。


---


そして。


---


途中で別れたのだ。


---


黒塔の王が現在の修司を見る。


---


真っ直ぐに。


---


じっと。


---


長い時間。


---


見つめる。


---


「若いな」


---


「五十歳だぞ」


---


「俺から見れば若い」


---


王の間に小さな笑いが生まれる。


---


ミーナがぽつりと言う。


---


「未来のおじさんもおじさんだった」


---


「当たり前だ」


---


だが。


---


その笑いはすぐ消えた。


---


黒塔の王の瞳が変わったからだ。


---


冷たい。


---


あまりにも冷たい。


---


「今のお前はまだ知らない」


---


「何をだ」


---


「失う痛みを」


---


静寂。


---


黒塔の王は続ける。


---


「エルナが死ぬ」


---


エルナが固まる。


---


「セシリアが死ぬ」


---


セシリアも動けない。


---


「ミーナも死ぬ」


---


ミーナが修司の服を掴む。


---


「セリアも」


---


「ルナも」


---


誰も言葉を発せない。


---


黒塔の王の声だけが響く。


---


「守れない」


---


「何をしても」


---


「どれだけ強くなっても」


---


「どれだけ足掻いても」


---


その瞳から。


---


一筋の涙が流れた。


---


「守れなかった」


---


誰も知らなかった。


---


黒塔の王が泣く姿など。


---


未来の勇者は拳を握る。


---


「だから世界を壊したのか」


---


黒塔の王は首を振る。


---


「違う」


---


「?」


---


「壊したかったわけじゃない」


---


小さく笑う。


---


悲しそうに。


---


苦しそうに。


---


「もう誰も失いたくなかっただけだ」


---


修司の胸が痛む。


---


分かってしまった。


---


もし。


---


本当に仲間を失ったら。


---


自分も同じことを考えるかもしれない。


---


だから否定できない。


---


だから苦しい。


---


その時だった。


---


ルナが前へ出る。


---


涙を流しながら。


---


「違います」


---


黒塔の王が見る。


---


ルナは震えていた。


---


怖いのだ。


---


それでも。


---


逃げない。


---


「あなたは間違っています」


---


王の瞳が揺れた。


---


ほんの少しだけ。


---


「みんな死んだかもしれません」


---


「でも」


---


「だからって」


---


「今を諦める理由にはなりません!」


---


王の表情が固まる。


---


ルナは泣きながら叫ぶ。


---


「修司さんはそんな人じゃない!」


---


「未来のあなたも!」


---


「本当は救いたかっただけなんでしょう!?」


---


沈黙。


---


長い沈黙。


---


黒塔の王は何も言わなかった。


---


そして。


---


ゆっくり目を閉じた。


---


その顔は。


---


どこか苦しそうだった。


---


まるで。


---


心の奥を見透かされたように。


---


その時。


---


突然。


---


黒い塔の向こう側から轟音が響く。


---


ドォォォォォォォォン!!!


---


空間が激しく揺れる。


---


黒塔の王の表情が変わった。


---


初めて。


---


焦りが見えた。


---


未来の勇者が叫ぶ。


---


「来たか!」


---


修司が聞く。


---


「何が来た!?」


---


未来の勇者の顔は青ざめていた。


---


「最悪の存在だ」


---


「?」


---


黒塔の王ですら。


---


険しい顔になる。


---


そして。


---


黒い空間の奥。


---


さらに巨大な何かが目を開いた。


---


世界が震える。


---


時間が軋む。


---


空間が悲鳴を上げる。


---


その存在は。


---


黒塔の王を見下ろしていた。


---


まるで。


---


創造主が創造物を見るように。


---


そして低い声が響く。


---


「見つけたぞ」


---


全員の背筋が凍る。


---


黒塔の王が初めて恐怖を見せた。


---


「ありえない……」


---


未来の勇者も震える。


---


「なぜ今の時代に……」


---


修司が叫ぶ。


---


「何なんだ!」


---


未来の勇者は答えた。


---


絶望に満ちた声で。


---


「黒塔の王を生み出した存在だ」


---


静寂。


---


そして。


---


「全ての元凶――」


---


巨大な影が笑った。


---


「ようやく会えたな」


---


その視線は。


---


現在の修司へ向けられていた。


---


## 次回


# 第21話


## 「世界最初の敵」


黒塔の王すら恐れる存在。


全ての悲劇の始まり。


そして明かされる異世界最大の秘密――。


なぜ修司はこの世界に召喚されたのか。


なぜ無限成長を持っているのか。


全てが繋がる時が来る――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ