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プレゼント選び、熟睡

 グロンドから出て、次はクロムの家族に会うためのプレゼント選びをすることに。

クロムは遠慮していたが、キュコリルが絶対に必要だと言うので、クロムも真剣に決めようと意気込んだ。


 2人はプレゼントを真剣に考えて、話し合いながら決めていく。

なにせ、クロムは2人の好みをまったく知らないのだ。唯一分かることと言えば、リゼルはお気に入りの煙管があること。クリスはお茶が好きなことくらいだ。


「なら、そうしよう」

「いいのだろうか」

「好きなもの、持っている物を送ってもいいと思う」

「そうか」

「ん、あとはその人に似合いそうなものを選ぶ。適当じゃなくて、気持ちを込めて選ぶのが大事」

「分かった」


 ということで、2人は早速プレゼント選びに入る。

クロムが真剣に物を選んでいる横で、キュコリルもまたクロムから聞いたリゼルたちの印象でプレゼントを決めていく。


 かれこれ悩んだ末に、2人はプレゼントを決めて満足気だ。


「お腹も満たされた。プレゼントも決まった。買い物してから、あとはお金貰いに行く」

「そうだな」


 2人はクロムの家族に会うための服と、日用品の買い物を済ませた後、ギルドまで手を繋いで向かう。

クロムはキュコリルに会話を振るが、キュコリルの反応が鈍くなっていることに気付く。


「大丈夫か?」

「眠い……」

「背中、乗っていいぞ」

「んう……」


 久しぶりの仕事、風呂、散歩、お腹いっぱい食べてからの、プレゼント選びに、それから買い物。

気付けば夕方で、キュコリルは眠気と戦っていた。本来であれば、眠っている時間なので眠気が襲ってきたようだ。クロムはキュコリルが眠たそうにしていることに気付いて、キュコリルを背負った。


 数分もしないうちに、背中から静かな寝息が聞こえてきて、クロムは本能のまま生きているキュコリルを微笑ましく思いながら、ギルドへ足を運んだ。


 クロムがギルドに着くと、ミルフィが対応に入った。


「クロム様、ギルドマスターがお待ちです」

「……厄介事か? キュコリルが寝ているから、早くベッドで寝かしてやりたいんだが」

「申し訳ありません。すぐに終わると思いますので」

「……分かった。手短に頼む」

「もちろんです。キー様は私が」

「頼む」


 クロムはキュコリルを降ろして、ミルフィに預けようとするが、寝ているはずのキュコリルはなぜかびくともせず、クロムの背中から張り付いて取れない。


 ならばと、クロムはキュコリルを起こそうとしたが、まったく起きないキュコリル。

ミルフィとクロムは互いに顔を合わせて頷く。ミルフィは、キュコリルを背負ったままのクロムを、ギルドマスターのもとへ連れていくのであった。


「ギルドマスター、キー様をお連れしました」

「あー、はい。入ってください」


 ミルフィに扉を開けてもらい、クロムはギルドマスターの前に立つ。


 丸々太った体に、頭部が寂しい姿で、人の良さそうな顔をしている男は、失礼だがまるでギルドマスターには見えないなとクロムは思う。


 そんなギルドマスターは寝ているキュコリルを見て呆気に取られるも、事情を説明して納得してもらう。クロムがソファーに座って、キュコリルを降ろそうとすると、キュコリルはいとも簡単にソファーに寝転んだ。


「いやー、お恥ずかしい話、私はギルドマスターの代理でして。本当は副ギルドマスターなんですよ。最近は裏方ばかりで運動も碌にしていないのでこの有様です」


 あははと苦笑しながらも汗を拭く姿に、クロムは色々とあるんだなと思いながらも、呼ばれた理由を聞き出す。


「苦労してるんだな。それで、要件は?」

「おっと、失礼。いえ、実は折り入ってご相談がありまして」


 人の好さそうな苦労人のギルドマスターのキッツイは、真剣な表情を見せる。

そこでようやく、クロムは腕の立つやつなんだと肌で感じ取った。


「なんだ」

「クロム君、これはキー君にも関わる案件です。真剣に聞いていただきたい」

「分かった」


 ギルドマスターからキュコリルの名前を出されたことで、クロムは厄介事から必要な情報だと切り替えた。キュコリルのことになると、クロムは顔つきがまったくの別人へと変化する。キュコリルが起きていれば、かっこいいと顔を赤く染めて煌めいた瞳でクロムを見つめているだろう。


「実は……」


 ギルドマスターのハードの話しを聞いて、クロムは顔を顰める。

ちらりと横を見れば、幸せそうに眠るキュコリル。そっと髪を撫でると、むにゃむにゃと口を動かしてから小さく微笑んだ。キュコリルには、常にこの表情でいてほしいと思っているクロムは、一人静かに覚悟を決めた。


 クロムと、ハードは話し合いを進めると、冒険者の証であるブレスレットが必要だという話に。


「もう一度、再登録が必要だな……」


 クロムが顔を顰めた理由を、ハードは再登録の件だと思い込んだ。


 再登録はどのギルドでも可能で、過去の記録から一つ下のランクからスタートとなる。

ランクを上げるには、それなりに労力が必要なため、中途半端に抜け出した冒険者に対しての罰とされてるのだ。


 しかし、クロムを苦しませているのは、過去の自分の行いである。


 リゼルに叩きつけて置いてきた冒険者の証であるブレスレット。

登録を解除しろと一方的に言いつけた過去の自分を思い出して、羞恥心と苛立ちが同時に襲ってきたのであった。

 

 「ああ、そのことですが、クロム様の冒険者登録は解除されてませんよ。冒険者の証であるブレスレットはお持ちで?」


 それを聞いた時、クロムはリゼルとクリスの顔が思い浮かぶ。

自分がしてしまった事に対する後悔、それでもきっと帰ってきてくれると信じて待っている家族。


 クロムは、自身の最低な恩返しを思い出すと同時に、それでも自分の帰りを待つ家族がいることに感謝するという、複雑な感情を抱く。


 ただ、待っている人がいると思うと、顔が緩んでしまうのであった。


「そうか。……なら、取りに行かなくてはな」

「あるのならよかったです。……彼らがいつこちらに攻め込んでくるか分かりません。出立の準備は早ければ早いほどいいかと。うちのギルドマスターがどうにか抑え込んでくれていますが、そろそろ限界だそうです。一刻も早くキー様が来ることを望んでおられます」

「キュコリルを連れてどうにかなるのか」


 クロムがキュコリルの名を口に出した途端、ハードは真剣な表情から、なぜか安心した表情を見せた。


「お二人ならきっと大丈夫です」


 緊張した空気から、一気に和やかな雰囲気に変わったことで、クロムの表情も少しだけ柔らかくなる。


 お二人ならという言葉が、クロムの心にスッと入ってきた。

クロムにとってキュコリルは大切な人で、キュコリルとってもクロムは大切な人だ。

大切な人がピンチの時、自分が助けに入ることができる。


 復讐のためではなく、誰かを守るための力。


 そう思うと、過去の自分の行いを少しだけ褒められるような気がしたのだ。

 

「だな。伝えてくれて感謝する」

「いえ、私は仕事をしただけです。キー君のこと、お願いします」

「ああ、もちろんだ」


 クロムはキュコリルを再度おぶり、ハードに頭を下げて出ていく。

ミルフィに声をかけられて、クロムは魔結晶と魔獣の素材を売った分のお金を手渡しで受け取る。金貨の入った重い麻袋をいくつか受け取り、そのまま亜空間へと放り投げた。


 軽く挨拶をしてから、クロムはキュコリルを背負い、ゆっくりと帰る。


 家に帰っても、キュコリルが起きそうになかったので、クロムはベッドにそっと移してから、部屋に戻ろうとする。だが、キュコリルがクロムの服を掴んで離さないため、クロムはその場で服を脱いで、シャワーを浴びに浴室に向かう。


 シャワーを浴び終わってから、クロムはキュコリルに布団をかけなおして、キュコリルの髪を撫でる。


「俺は、キュコリルのことを何も知らない。

でも、俺がキュコリルを好きなのは本心だ」


 クロムはそう呟いたあと、キュコリルの頬にキスを落としてから、同じベッドで眠るのであった。


(んあ、くろむ)


 キュコリルは目の前にクロムがいないことに気付き、クロムを探そうとして、隣で寝息が聞こえ振りむいた。寝ぼけながらもキュコリルはベッドの上をゴロゴロ移動して抱き着きながら一緒に眠りにつく。


 クロムもさすがに疲れたらしく、キュコリルが抱き着いたことに気付かずに熟睡している。


 クロムに抱き着きながら眠るキュコリルと、抱き着かれながら寝ているクロムの表情は、安心しきった寝顔。お互いに見れない見せあいっこで、2人は幸せを詰め込んだ夢をみたそうな。

 


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