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テンプレイヤーカエデ〜コドクノオウ〜  作者: いまむー
ジャポネ編
13/14

小鬼退治





「はい。ではこちらの内容で登録させていただきます。その水晶に手を触れて頂けますか?」


指定された受付のカウンターにある丸い水晶。それにカエデは手を開いて触れる。するとその水晶はかすかな光を放ってすぐに光を放つのをやめた。


「はい。これで登録は完了です。こちらがカエデさんの浪人カードです。無くされて再登録となるとその時は再発行手続きに費用がかかるので注意して下さいね。」


「わかりました。ところで今の水晶ってどんな意味があったんですか?」


「この水晶はカエデさんの手のひらの血流や魔流を読み取るものです。この2つの情報と浪人カードで本人確認しますのでカードをなくされないよう十分気をつけて下さいね。依頼の受注は引き続き手続きされますか?」


魔流とは血と同じように体に流れる魔力の道筋で基本は同じでも全く同じ道を流れる人というのは存在しない。その性質を利用した本人確認の魔道具という事だろう。


「お願いします。」


「はい。かしこまりました。カエデさんは登録されたばかりなのでFランクの依頼から受注していただくことができます。」


「おっとキョウコちゃん ワシがこやつとパーティーを組むからDランクかEランクの仕事をお願いしたいのじゃが。」


基本浪人組合などでは自分のランクより上のランクの仕事を受ける事は出来ないがパーティーメンバーにランクが高い人がいる際には多少の考慮が行われるのだ。ちなみに最低ランクのFランクだと依頼内容は街のゴミ掃除、排泄物処理場の清掃など、街の外の依頼内容でも薬草採取や薬草や鉱物の採取などでモンスターの討伐依頼などは受けられない。


「えっ!?ハオさんとパーティを組まれるんですか?でしたら確かにDかEランクの依頼を受注できますが…ハオさんが依頼を受けられるのであればもっと上のランクをどうせなら受けてほしいんですが…」


「いやいや。私は現役はとっくに引退しておるからの。あくまでこやつの修行の一環としての受注じゃからそこは勘弁してほしいところじゃ。」


「う〜ん…少々お待ちいただけますか。」



そう言って受付嬢は楓の資料を持ち階段を上って奥の部屋へと消えていった。



「…師匠ってもしかしてすごい人?」



受付嬢がハオに対してもっと上のランクの依頼を受けてほしいといった事に対してカエデがふと疑問に思う。



「 え?いまさら?」


「いやいや…確かに仙術と龍脈術を教えてもらってるけど人間性がね…」


「失礼な弟子じゃな…」




「久しぶりだねエロジジイ。」


ハオとカエデが互いに呆れあっているところに階段から降りて来た者から声が掛けられた。

声に反応して視線を上げたカエデの目に映ったのは金の刺繍が施された黒の着物を来た60歳程の女性だ。最低限の化粧に白髪混じりの髪はしっかりと整えられていて眼光は鋭い。

その女性が現れた途端組合の中にいた浪人達の緊張が増す。



「おいおい…姐さんだ…」


「ばかっ!聞こえるぞ!姐さんの前ではちゃんと()()()と呼べよ!」


周りの浪人達が階段から降りて来た女性を見ながらヒソヒソと声を交わす。


(組合長…ギルドマスターみたいな感じか…?)


「おー久しぶりじゃのう。元気にしとったか?シズカよ」


「ったく…「おー久しぶりじゃのう。」じゃないよ。時々組合に顔を出したかと思えば私の顔を見ずにさっさと仕事を済ませて帰るくせに。」


「それも仕方なかろう。ワシは婆さんには興味ないからの」


「ったく。相変わらずだね…そんでアンタが弟子を取るなんてどういう風の吹きまわしだい?少なくとも私と知り合ってから1度もアンタが弟子を取るなんてなかったはずだよ?その小僧はそんなに才能があるのかい?」



シズカがチラリとカエデに視線をやる。


「才能はまぁ…どうじゃろうな…とりあえずワシと同じようなスキルを持っておるからな。少なくとも教える価値がない とは思っておらんぞ」


「そうかい…私はこの街の浪人組合の組合長をさせてもらっているシズカだよ。よろしく。」


「カエデです。よろしくお願いします。」


「んー?なんだい?敬語使うなんてどこかの坊ちゃんかい?浪人ってのは基本みんな荒くれ者だ。敬語なんて使ってたら舐められちまうよ?」


「え?わかりまし…わかったよ。」


「くくっ…せっかくだ 私と一戦交えてみないかい?このジジイの弟子になる人物だ。力が付いたら仕事を沢山頼む事になるだろうから実力がどんな感じか見ておきたいしね」


やっぱり…ギルドマスターらしき存在が出てきた時点で予想してました。あ〜面倒くさい。


「あ〜 遠慮しとくよ」


「よしっ 裏に初心者向けの訓練場がある。そこで…え?」


「自分の実力はよくわかってるつもりだし、今組合長と手合わせしたところで失望させるだけだ。それなりに力をつけたらその時はこちらから是非お願いするよ。……?」


カエデが手合わせを回避しよう適当な言い訳をしているとシズカは腕を組みカエデを睨んでいることにカエデは気づいた。


「……そう言って仮に力を付けても声をかけないつもりだろ?」


「っ!??いやいやいや…なにを仰いますやら…本当に…まったく…あはは…」


「はぁ…のらりくらりと言い訳をして面倒事を避ける…ったく…まさにこの爺さんの弟子って感じだね。そっくりだよ。」


「師匠にそっくりって……あれ?もしかして喧嘩売られてる?」


「やっぱり失礼な弟子じゃ…」







カエデとハオは浪人組合で3つ程依頼を受注して現場の森まで来ていた。この森は街と街を繋ぐ街道の近くにある森で時々森から出て来たモンスターに商人や旅人が襲われる事がある。もちろん商人などは街道を行く際には浪人を護衛として雇ったりするのだが旅人やケチな商人は護衛を雇わない事がある。そんな時に襲われて死者が出ると街道が封鎖されて襲撃を行ったモンスターを特定した上で討伐、さらにはある程度の数のモンスターを間引かないと封鎖は解けないという決まりになっている。そうなると街は物や人の流通が止まるため打撃をうける。そんな状態を避ける為普段から商人ギルドなどの依頼で森のモンスターを間引く依頼が出ている。常に出ている依頼の為報酬は良いとは言えないがカエデ達にすれば報酬はオマケなのでこの依頼を受けたのだ。


少し森に入って街道に沿って歩く2人。物音を立てずに息を殺して慎重に歩く。これはハオの指示で 気配遮断 のスキルを得る為に行なっている。このように様々な行為の積み重ねがスキル取得に繋がるのだ。



「む…目標発見じゃ…」


先を行くハオが振り向いてジェスチャーで進行方向に注意を向けさせる。

しゃがみこんで植物の陰から進行方向を覗き込むとそこにはカエデの腰と胸の間くらいの身長の小鬼が3匹いて太めの木の棍棒を片手に人には聞き取れない言葉で何やら会話している。

この小鬼というのはジャポネに生息するモンスターで、ジャポネ以外の地域に生息するゴブリンの近種だといわれている。外観はゴブリンとほとんど同じなのだが皮膚の色が違い、ゴブリンが濃い緑色の皮膚に対して小鬼は濃い赤色の皮膚なのだ。


「さて、まずはワシが2匹仕留めて残り1匹をお主にまかせる。大丈夫かの?」


「…了解」


「…ふむ。まぁ、とりあえずやってみるかの。倒しか方はお主に任せる。叫び声を上げて仲間を呼ぶからワシが倒したら速やかに残りを倒すように。」


一瞬返事が怯んだカエデに対しハオは何か言おうとしたようだが言葉を飲み込んだ。ハオは振り向いて小鬼を見る。右手の手の平を上に向け小指と薬指を曲げて手首を地面方向へ曲げた後、軽く手首を跳ねあげた。

跳ねあげた手首と同時に小鬼2体の真下から鋭く尖った土が盛り上がり2体の小鬼の股間から脳天まで真っ直ぐ貫いた。それを見たカエデは茂みから飛び出して小鬼へと迫る。


「ぐぎっ!?ぐぎゃ!!」


一瞬の間に仲間を殺された小鬼は驚きの声を上げてたじろいだがカエデの姿を見て棍棒を構えてカエデに向かって走りだす。それに対しカエデは走りながら左手の人差し指と中指で札を挟み仙術を発動させ札が塵に変わると勢い良く右腕を振り上げる。ハオの洗練された仙術とは違い、先端が尖っていない(いびつ)な形の円錐型の土が小鬼の少し前方から小鬼に向かって伸びる。


「ぎぎっ!?」


盛り上がる土を見た小鬼は咄嗟(とっさ)に横へ跳びのき盛り上がる土から逃れようとするがカエデは右手を振って盛り上がる土の方向を修正してなんとか小鬼の腹部へと直撃させた。しかし修正に意識を取られた為、土の先端はさらに丸みを帯びていて小鬼の腹部を貫くことはなく衝撃を与えた程度の効果しかないようで小鬼は倒れる事なく足どりを少しふらつかせている。カエデはそのまま小鬼へと走り寄り小鬼の頭部を掴むと龍脈術で強化した膝蹴りを顔面へと放つ。その後も強化した蹴りや突きで攻撃するも小鬼の命を奪うには値していない。


「ぎ…ぎ…ーーーっ」


うめき声を微かに上げる小鬼が息を吸い込む。


「仲間を呼ぶ気じゃぞ!呼ばせるな!」


小鬼が息を吸い込む動作を見てハオが声をあげる。カエデは小鬼の腹部に前蹴りを放つ。腹部への衝撃から前のめりになり痛みに耐えている小鬼に対してカエデは首に腕を回し締め上げる。小鬼は巻きついたカエデを腕に爪を立てて逃れようとするがやがて力が抜けていきグッタリとしてきた。


「だいぶん弱ってきたようじゃな。あとはポキっとやって終わりじゃな。」


「っ!?…くっ!」


カエデがさらに力を加え嫌な音と感触と共に小鬼の首を折る。完全に力が抜けた小鬼の首から巻き付けていた腕を放し自分の手を見る。力を入れていたからか手が震えている。いや…今までに殺してきたモンスターは動物系や虫系のモンスターがメインで人に近い姿をしたモンスターの命を奪ったのは初めてだった。虫系に関してはあまり気になっていなかったが動物系のモンスターを倒す時は少なからずの罪悪感があったが今回は違う。これは命奪う事への恐怖だろう。改めて自分が命を奪った地面に横たわる小鬼を見る。大きく開けた口からは舌がだらりのこぼれ落ち、目は見開かれている。


「ゔっ…おえっ…」


カエデは口を押さえ吐き気を我慢したが食道からさかのぼってきた物を我慢する事は出来ずに吐瀉物を地面へと吐き出した。そこへアゴをさすりながらハオが近寄ってくる。


「ふむ…お主から元いた世界やワドニアで過ごしてきた話を聞いておって思っておったがやはり…というところじゃな。これからお主には命を奪う事に慣れてもらわねばならん。人の形に似たモンスターや妖魔だけではなくこの世界で冒険者として生きていくなら人と対峙することもあるじゃろう。遭遇した盗賊なんかはお主の命を狙ってくる。お主が殺したくなくてもな…そんな甘い考えでおると自分だけではなく共にいる者達さえ危険に晒す事になる。仮に相手が人でなく純粋なモンスターであっても依頼を共にしている冒険者が目の前で殺される事があるかもしれん。そんな時に咄嗟の判断を鈍らすような精神ではいかんからな。」


そう言ってハオはカエデの背中をさすりながら水筒を差し出した。




















常設の依頼を受けて1ヶ月…出来るだけ人の形に似た種類のモンスターの討伐を狙って討伐を行ってきたカエデはひとまずモンスターであれば躊躇する事なく殺す事が出来るようになったのだった。




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