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テンプレイヤーカエデ〜コドクノオウ〜  作者: いまむー
ジャポネ編
14/14

夏といえば



常設の依頼をこなし、さらには近場の村で畑仕事を仙術で手伝う。そんな生活に慣れてきた頃にはジャポネは夏になっていた。しかし夏になったからと言ってカエデは暑さをあまり感じていない。というのも仙術で自分の上空に雲を作って日陰を作り出し、常に自分に向けてそよ風が吹くようにしている。もちろんMPは使うが仙術スキルのレベル上げとMPの底上げを目的としたもので決して自分が楽に過ごしたいから…という訳ではなくハオから指示されている事なのだ。




一仕事終えてハオの家まで戻って来たカエデは引き戸を開ける。


「ただいま帰りましたー。」


以前声をかけずに家に入りハオの元まで行った際にハオの自家発電を目撃して以降カエデはちゃんと帰って来たことを大声でハオに聞こえるようにしている。カエデが居間に入るとハオは縁側でお茶を飲みながら外を眺めていた。どうやら今日は自家発電は行っていなかったようだ。



「ふむ…戻ったか…すっかり夏になったのぉ…」


カエデはハオの視線の先を見る。その先には夕日に照らされた森が青々と茂りを見せ、鳴く虫が夏を感じさせる。


「そうですねぇ…」


「…………暑くなったのぉ」


「…?…暑くなりましたねぇ」


「…………蒸し蒸しするのぉ」


「…?…蒸し蒸ししますねぇ」


「こんな時には目の保養をしたいのぉ…」


「…?目の保養…ですか…」


「………………かぁーっ!分からず屋が!夏!暑い!蒸し蒸しする!目の保養!となれば!?さぁ!」


「「さぁ!」って………あぁ、そういう事ですか…暑いですし海にでもいきませんか?」


「……ふむ。お主そこまで言うなら行ってやらん事もない」



このジジィ…



「いや、別に俺は


「いやぁ〜弟子にそんな風に土下座までされて頼まれたなら無碍にするのは可哀想じゃからのう…仕方ないのぉ〜」



土下座してねぇ〜幻覚でも見てんのかこの爺さんは…



「はぁ…それで…いつどこの海に行きます?」


「明日!オストのサンセトに行くぞい!」


「オストって…海水浴行くのにわざわざ海と国を越える気ですか!?」



カエデはハオの言葉に驚く。なぜならオストというのはジャポネから船で南方へ5日ほど行った所にある国だからだ。


「…当然じゃ。この国の女子(おなご)達の良さは恥じらいにある…時々見える着物の隙間からの生足…少しはだけた胸元の襟を恥ずかしそうに正す様…素晴らしい!素晴らしいがっ!ワシがっ!夏にっ!求めるのはっ!解放的っ!そして健康的なエロスっ!この国の女子(おなご)達は夏になると海へ行ったとしても肌を見せる事なく色付きの筒袖半襦袢(つつそではんじゅばん)にステテコという出で立ち…まさに邪道!!ナンセンスっ!!そんな姿を見たところで目の保養は出来ん!!」



こいつマジか…



「なぁに。わざわざ船には乗らん。龍泉を使えばあっという間じゃ。」


大地の中を巡るエネルギー 龍脈…地上にポッカリと穴を穿(うが)ち、その姿を見せる。一見その姿はただの泉であるが龍脈術を扱う者であれば側によるだけで龍脈の力を受けて力を増す事が出来る。龍泉の中には他の地方の龍泉に繋がるものもあり龍泉に身を投じれば大地を巡るエネルギーに乗ってあっという間に移動する事が出来る。ただしどの龍泉もが他の龍泉に繋がっている訳ではない上に地中の中で細かく枝分かれしている龍脈に流されて目的とは違う場所、下手すれば龍泉に出る事なく龍脈に流され続ける事さえある。カエデがワドニア王国の迷宮の下層にあった龍泉からジャポネの龍泉に流れ出たのも運が良かったのだ。それなのにハオが気軽に龍泉を使おうとしている理由は龍脈術と仙術にある。

龍脈術で龍脈のエネルギーを感じ取り目的地への流れを把握、仙術スキルで地中の岩や土を動かして枝分かれしたエネルギーをスムーズに目的地へ向かえるように調整。移動した後は龍脈を元に戻す。


龍脈術と仙術の2つのスキルを持つ者の特権という訳だ。つまりカエデもスキルレベルが上がれば同じ事をする事が可能となるのだがまだその域までは至っていない。

中には元々安定して移動出来る龍泉もあり、そんな龍泉の周りには貿易都市が出来上がっている事が多く、国によっては龍泉の事を ゲート などと呼んでいる。








翌日カエデがワドニア王国からジャポネに流れ着いた龍泉のエネルギーの流れを調整したハオとカエデはオストにあるサンセトの街に1番近い龍泉へと移動した後サンセトの街に来ていた。


「じゃぁまずは宿を取りに行こうかのぉ。」


スムーズに街の関所を超える事が出来たハオとカエデはオストの宿屋へ向かう。過去に何度も来ていることがあるハオは迷いなく歩いていく。ハオについていくカエデは街の様子を見てあることを思っていた。


人が少ない…


夏のシーズンが到来したマリンビーチであるオストのサンセトの街であるはずなのに人が少ない。道を歩く人も少なくちらほらと歩いている人は観光客と言うより地元の人のようで、地元向けのお店は客がいる様だが観光客向けのお店の店員は暇なようで店先で椅子に座り頬杖をついて通りを眺めている。


宿の扉を開けると通りにあるお店と同じように頬杖をついてぼーっとしていたカエデと同じ歳の頃の少女がはっとした表情で2人を見つめている。

少女は座っていた椅子から勢いよく立ち上がり受付の台に両手をついて声を上げた。


「もしかしてお客さんですか!?」


「そうじゃ2人1週間の宿泊を頼むぞい」


「かしこまりました!!お母さーん!宿泊のお客さんだよーーー!」


少女は受付の奥の扉の向こうにいるであろう母親に声をかける


「まぁまぁ!ハオさんよくいらっしゃいました!」


扉の向こうから恰幅の良い女性が顔を出して2人に声をかけた。やけにうれしそうな表情をしている。

カエデは宿の中を見渡してみたが自分たち以外に人はいない。


「ハオさんが男の人を連れてくるなんて珍しいですね!お部屋は2人部屋になさいますか?」


「いやいや!1人部屋2つで頼むぞぃ!1つはいつも通りベットが大きめでな!」


「1人部屋2つで1つがベットが大きめの部屋ですね。お食事はいかがなさいますか?」


「食事はナシでよいぞ。必要な時はこちらから声をかけさせてもらうつもりじゃ。」


「かしこまりました。普通の1人部屋食事なしが7日間で52.500ジル、ベッドが大きめの1人部屋食事なしが7日間で70.000ジルで合計122.500ジルです。」


「ほいほい。」


ハオは懐から小銀貨を適当に取り出し受付に置いた。女将がその小銀貨を秤にかけ計算の後釣り銭をハオへと返す。振り返って受付の後ろの棚から鍵を2本取り出しハオに手渡す。


「こんな時に来ていだだけるなんて有り難いです!しっかりと掃除などのサービスはさせて頂きますのでごゆっくりなさりくださいませ。」


「…?ふむ。世話になるぞい。」


ハオは振り返りカエデに鍵を渡す。鍵には部屋番号が彫刻されていた。ハオの鍵はカエデのものより少し凝った作りとなっている。どうやら部屋のランクにより鍵の作りも違うようだ。


「よしっ!では10分後に着替えて宿の入り口に集合じゃ!」


そう言うとハオは急ぎ足で宿の階段を上っていった。


マジで元気な爺さんだな…


ハオがベッドの大きめの部屋を頼んだ理由…おそらく海で女性をナンパし部屋に連れ込む気なのだろう。龍脈術で老化を抑えているハオは実年齢100歳を超えているのに見た目は40〜50代に見えるし外見はカエデがいた世界から考えればかなり整っている。狙った女性の前では普段のエロ仙人のなりを潜めて接するため騙される女性もいることだろう。


カエデが青色のサーフ型の水着に白の薄手のシャツを羽織り麦わら帽子をかぶってサンダルで宿の入り口に待機しているとハオは上下一体型の赤と白の太いボーダー柄の水着に腰には黄色の浮き輪、竹で作ったシュノーケルと一眼タイプのゴーグルを額に当てて笑顔でサンダルでペタペタと足音を鳴らしながら階段から降りて来た。


カエデがハオの格好を意外に思っているとハオはカエデの考えを見抜いたのかニヤリと笑みを見せた。


「まずは水中から女子(おなご)の体を観察することを楽しむ…ムフフ。ナンパはそのリサーチの後からじゃ。」


「はぁ〜…」


こんな人に師事を仰いでいる自分が情けない…

















「ど…ど…どどどどどういう事じゃ!これはぁぁぁぁぁぁ!!!」


驚愕の声を上げ、口をパクパクとさせるハオの眼前には

突き刺す太陽の光!焼ける砂浜!潮の香り!そして!


「人っ子一人いませんねぇ…」


誰もいない砂浜だった。






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