禅僧と勇者とキノコとクマ
——これは、たまたま王城で道安と親平が鉢合わせ、二人で近場の山に入ったときの話——
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「道安さんってこっちに来てもベジタリアンなんですね。……徹底してるな~……」
「便利な故郷でもお店で買えるたいていの食品はアウトでしたからね。こっちにきてむしろ楽になったまであるかもしれません」
「そうなんですか……俺なんて、牛丼とかラーメンが恋しくてたまりませんよ。……また食べたいですね~……」
「……私の煩悩を煽るのはやめてください」
親平は小さく笑いながらスミマセン、と謝った。道安も笑いながら、いいんですよ、と返す。
今は山の中で道安さんが発見したという椎茸を探している最中だ。
道安さん曰く、精進料理は椎茸と昆布が味の要で、個人的に坐禅の次の次の次くらいに大切なものらしい。……想像よりだいぶ重要だった。
ちなみに、王城は海から遠いため、道安さんが海に近い村に行ったとき、ゴミ同然に扱われていた海藻を大量にもらって干したらしい。
乾燥して紙みたいになった海藻を荷物の間という間に詰め込んでいて奇妙だったと護衛騎士さんが言っていた。
「……ありました。私が以前食べたものと同じです」
道安さんは見つけたキノコの端を噛んでから太鼓判を押した。
「苦くないだけで判断するのは危険ですが、この国中に生えている同じものを食べてきたので、問題ないでしょう」
道安さんは手製の手編み籠にポイポイと椎茸(仮)を入れていく。登山用に持ってきたと思しき杖とあいまって、ずいぶん手慣れているように見える。
「俺でも見分けがつきますかね……」
「食べられそうなキノコを見つけたら声をかけてください。今回の調理には使いませんが、もし食用だったら採取しましょう」
各々の作業に戻る。道安さんはいつもと変わらない様子で黙々と椎茸を集めていた。
今回、このように二人で一緒に山に入ったのは、道安さんが自らの精進料理を王に披露することになったからだ。なんでも、道安さんが普段自炊して食べているものを王も食べてみたくなったらしい。
いくら勇者とはいえ、最高権力の口に入るものを作らせるなんて信用しすぎじゃないか? と思わないでもないが、どうやら王がお忍びで頼んだらしい。あの王、威厳のわりにお茶目なところがあるからな……。
とりあえず、たまたま同時に王城へ帰還していた俺は護衛役として道安さんに同行していた。
「……そろそろ、お互いの籠いっぱいになったようですね」
「俺のは他のキノコも混じっていますが」
「私の目に狂いがなければ、そのキノコは……」
道安さんが珍しく舞い上がるかのような様子で話している最中。二人して、背後の影を見つけて、固まる。
「……」
「……」
熊だ。
異世界では違う呼び方をするのかもしれないが、故郷を同じくする二人にとって、それはまさしく熊だった。




