臘八大攝心、開催決定
「欲しいとは、何を欲するのだ」
「道安が欲しい! 一緒にいたいの!」
「道安の何が欲しい。身体か。心か。それとも彼が了承したという事実か。髪の毛一本だけでいいのか? 話さえできれば手足は不要か? 心が欲しいならば、奴がお前のモノになったと嘘を付いたらどうする」
「全部だよ! 全部全部!」
「全部? 抜け落ちた髪は? 奴の着ている法衣は道安か? 吐いた言葉は。奴の思考は。奴も覚えていない昨日見た夢は? 奴の中に居るおまえは?」
「道安は道安だよ! 意味わかんない!」
「喝ァツ!! 分からないまま逃げるな!!」
「うるさい!!」
チリリン。
チリリン。
チリリン。
烈火のような表情で、心の中は驚くほど澄んでいる白真は、パージュンに向かって鈴を鳴らした。
「なにその鈴!! ムカつく!!」
「怒りに飲まれるな、感情に振り回されるな! そんなもの焼ききってしまえ! よし、坐るぞ!」
「ここから坐るの!? 道安はもっと優しかった! 落ち着いて坐らせてくれた!!」
「やり方が違うだけだ! とりあえず坐れ! ……そうだ、坐れ。なんだ。坐相は驚くほどまともじゃないか」
しかし、壁に向かって坐っているのは落ち着かん。パージュンにジェスチャーで、道安とは逆に壁を背にして坐らせる。
型が、パージュンの激情を流し始めた。そうだ、それでいい。
「心は、奴から教わったままでいい。感じるのはいいが、考えるな」
「……無心で坐っていれば、道安は認めてくれるかな。私、道安のこともっと理解できるかな」
「忘れろ。考えれば考えるほど奴は遠ざかっていくぞ。目的を持って坐ると、分かるもんも分からなくなるぞ……」
先ほどの火のような表情はどこへやら。パージュンは人形のような表情で坐り始めた。
どんな跳ねっ返りかと思ったが、こいつは誘導に素直に従う。あまりにも「素直」すぎる。
(最初から人や魔族ではなく、「法」に近い……だからこそ、簡単に「魔境」になる)
初代勇者は事情をほとんど知らない。知らないが、本質は既に見抜いていた。
今、ぽっと出の私が僧侶としてできること。
それは、この哀れな少女の頭を、全身全霊で「空」にしてやることだ。
「とりあえず、坐れるだけ坐ってから問答に戻るぞ……この世界の日付なんて知ったこっちゃない。魔王よ。寝れると思うなよ。今日から臘八大攝心だ」




