お隣の宗派は「話すこと」が得意
「勇者召喚ではなく、勇者交換?」
『そうです! この前みたいに、私の所にあなたを呼び出す勇者召喚は、信仰の残りが足りなくて使えなかったんです!』
気が付いたのと別の和室で、道安は女神と念話? ごしに会話していた。
どうにも、この瞬間移動はいつもの女神による召喚とは似て非なるものらしい。
「信仰の残り……?」
『はい、私が行使できる奇跡はあまりないのですが、普段あなたを呼び出している奇跡は女神教信徒の方々による信仰を源泉に行使されます。つまり、無限にできるわけじゃなくて有限なのですが、実はいつもの勇者召喚を行うには微妙に足りなく……』
「……私が捕まってばかりだからですか?」
『そうですよ! ピンチになりすぎなんですあなたは!』
実はほうじ茶が飲みたいから呼び出しているのでは? あまりに失礼すぎる考えが頭をよぎったので、いつものように雑念を受け流す。折角緊急事態だからと、苦渋の決断をして、私の命を救ってくれたというのに。
さっきまで死の覚悟を決めていたというのに、いきなり気が抜けてしまった。ついでに肩も急に痛く感じるようになってしまった。
『ですから、より少ない信仰で行使できる代替の奇跡を行使したんです。より少ない信仰で、二人の勇者の位置を入れ替えるというものなんですが……』
「……ですが?」
『だいたいの窮地は切り抜けられるシンペーくんじゃなくて、間違えて初代さんを送っちゃったんです!! 焦っていたとはいえ、道安さんと大差ないほど弱いあの人に!!』
どうしよ~!! と念話ごしに慌てている女神。
焦らせた原因は間違いなく自分にあるので、いつものように坐りましょうとは言わない道安。
しかし、決して慰めではなく、確信を持って道安は言った。先ほど飛び蹴りを食らわせてきた修行僧。彼から聞いた話が事実だとすれば、初代勇者は「信頼に値する同業者」だ。
「……安心してください。私の見立てが正しければ、大丈夫です」
『これのどこが大丈夫なんですか! 彼はあなたと同じでまったく武力を持っていないんですよ!』
「武力は持っていないでしょうが……彼の宗派は私より『話すこと』が得意です。同じ禅宗として信頼ができます」
『……やっぱり同類なんだ』
小声で無礼なことを口走られた気がするが、道安は珍しくニヤリと笑いながら、女神に答える。
「もしかしたら、私なんかよりも早く、確実に彼女を導けるかも」




