怪僧
道安は無意識に護衛騎士から習った受けの型を取る。身体の中心を相手に晒すな。半身で相対しろ――
魔王の剣筋は鋭いものではなく、小太刀は胸でなく、半身の構えにより肩に刺さった。
「……ッ!!」
この世界に来て、間違いなく最大の痛み。
しかも、状況は好転したとは言えず、パージュンは小太刀を抜き、再び道安へ向かって振り下ろす構えを取った。
「……あなたが私を拒否するなら、殺して、産みなおしてあげる……!」
道安は、死を覚悟した。
彼女の言う通りなら、記憶を引き継いでこの世界に生まれ直すことになるのだろう。
しかし、そんな保証はどこにもない。死んだあとのことなど、誰にも分からない。
トラックに跳ねられたときのことを思いだす。
さんざん死の恐怖におびえて出家したのに、死を意識しないままあっけない最期だった。
理想的だったかもしれないが、若くして継がざるを得なかった寺のことが気がかりだ。
……あの、女神らしからぬ女神に会った時から、今日までの間。これも全て走馬灯だったのかもしれない。
最期は坐禅を組んで逝けたらという望みをまたも挫かれた。これは純粋に悔しい。
でも……
「このよくわからない異世界であっても、数えきれないほど坐らせてもらったことだけは……良かった」
迫るパージュンの小太刀が、今度は正確に自分の首を狙っているのを見て、道安は目を瞑った。
……
……
……
…………
……??
目を開くと、荒い造りだが、見事な和室。
目の前には、西洋人風だが見事に剃髪された頭で法衣をまとった男性が座っていた。
彼は自信満々に叫ぶ。
「女神に仏性は……これが答えだ! くらえ師匠!」
彼の飛び蹴りで道安は吹き飛ぶ。痛いことは痛いが、小太刀よりは遥かにマシだった。
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一方、パージュンの小太刀が空を切った瞬間。
「魔王様! 落ち着いてください! 道安! おい道安!?」
ケラクは慌てて道安に駆け寄ったが、すぐに違和感に気が付いた。確かにハゲ頭ではあるが、この後ろ姿は……?
よく見ると、彼がまとっている妙な布も微妙に違う。
ここ最近見慣れた、妙な布を纏ったハゲとは微妙に違う、見たことのないハゲ。
「……?」
そのハゲは不思議そうにあたりを見まわしていた。
数秒の沈黙の後、謎のハゲが謎の鈴を鳴らす。
チリリン。
チリリン。
チリリン。
「な、……な、な」
二の句が継げないパージュン。代わりにケラクが叫ぶ。
「お……お前は何者だ! 道安はどこに消えた!」
謎のハゲがこちらを向く。静かな道安より、だいぶ獰猛な表情をしたハゲ。
彼はたっぷり3秒溜めてから、とんでもない声量で叫んだ。
「喝ァツ!!」




