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異世界禅僧はとりあえず坐る  作者: ホゲファイブ
魔王城編 ― 第二の矢
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54/94

洗脳条件:不明

ケラクは執務室で激しく思考を巡らせていた。


脱獄に成功した勇者がなぜか丸腰で戻ってきた。しかも、脱獄の理由が「魔族も坐らせるため」という意味不明なものだった。


魔族も坐らせる、というのは、彼なりの宣戦布告、いや、魔族など既に我が術中にあり、という意味か。


(……まさか、個々が坐らずとも、条件を満たせばヤツの術は発動する……? いや、それならもったいぶらず術を実行するはずだ。まだ満たすべき条件があるはずだ)


自らの身柄・命というリスクを払ってでも、敵の本拠地に捕まりに行くことで得られるリターンとはなにか。


しかも今回はたまたまではなく、連合王国軍が認めた形で捕まりにきているはずだ。つまり、国レベルで勇者を差し出すに足るリターン。


(……しかし、まるで分からん……目的も意図も、なにもかも……)


ケラクは頭を抱えた。そもそもの情報が乏しすぎて、いくら考えたところで答えが出ないことは分かっているのだが、それもで考えることがやめられない。


考えることで身を立ててきたケラクにとって、考えることをやめることは敗北を意味するのだ。


(結局は、見に回るしかあるまい……)


今回は何が起きてもいいように、前線の支城に勇者を収監した。もともと人類に奪われることを想定した城だ。


仮にこの周囲の魔族全員が洗脳されようと、本城の魔王軍がすぐに制圧できる。人員も前回と同じ者を充てている。


ケラクとて、情がないわけではない。むしろ、武闘派の多い魔王軍の中では集団の力を重視し、他人の心情に思考を割くほうである。


しかし、だからこそ集団の利のためには個々を頻繁に犠牲にする必要があることを心得ている。


「彼らと勇者のやり取りから、勇者が何を仕掛けるのかを見極めるとしよう」


既に片付けた書類を直属の文官に渡し、ケラクは席を立った。


武にばかり戦力を割きがちな魔王軍だがらこそ、武ではない何かを持つこの勇者は、このケラクが対処する。


場合によっては、うまく使えるかもしれない。


彼は既に連合国の主要な人物に深い影響を与えているのに、自身は一切連合国に染まっていない。もしかしたら、こちらに引き入れることもできるかもしれない。


(我々の目的は、人間を滅ぼすのではなく、人間すらも魔王様の作り出す天界へ抱き込むこと。……まっててください、パージュン様)


奪い傷つけることのない、永遠の快楽。あの男も宗教家なら、きっとこの理念を気に入ってくれるだろう。

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