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異世界禅僧はとりあえず坐る  作者: ホゲファイブ
魔王城編 ― 第二の矢
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王、サボり散らかす

(今度はわざと捕まりにいくとは……あいつは正気なのか?)


王は一人坐禅を組みながら、道安の発言を思い出していた。


一家の、いや国家の大黒柱として無限に尽きないタスクをこなす王にとって、坐禅は貴重な癒しタイムとなっていた。


国のことなんかより最近流行りの演劇のこととか娘が学業で優秀な成績を収めたとか、そんなことだけ考えていたいと思ったものだが。


王は思いの外深い「何も考えない」ことによる快感を確かに噛み締めていた。持続するのは一時間ほどとはいえ、明らかに頭が「掃除された」感じがする。


(国のケツを拭くのはいつだって私。そう思っていたのだが、自分の頭の中がこんな散らかっていたとは。いや、きっと誰もが忙しいこの世の中。多くの民が「頭の中を片付ける」ということを思いつきもしないのだろう)


坐禅の形をとりつつもついつい物思いに耽ってしまうのは、ある意味王という職業病なのかもしれない。しかし、仏法は理解できなくとも、王は王なりの理屈と期待で坐禅を続けていた。


(独りで坐っていたらマジで隣に現れたのは流石にビビった……)


王がこのように坐るのはたいてい女神廟の中だった。


王は毎日わずかな時間を「秘密の公務」として取っている。


これは本当に秘密にしなくてはならない仕事をこなすのはもちろん、「王がどのような切り札をもっているのか」ということを潜在的敵勢力に疑わせるブラフとしても機能する。


もちろん民衆向けには嘘の行動スケジュールを公開しているのだが、あえて王政内ではこの「秘密の公務」の存在を隠していない。


こうすることで、今は息を潜めている反体制派の貴族たちや、もしかしたら紛れているかもしれないスパイが勝手に混乱するのだ。王は我々に何を隠しているのか、と。


しかし、ぶっちゃけここ最近の「秘密の公務」とはただのサボり時間だった。僅かな時間とはいえ、王は女神廟で思う存分サボり散らかしていた。


「きっと私の知らないところで、新しい愛人とでもよろしくやっているんだわ」とは王妃の弁だが、これ以上考えることを増やすなんてまっぴらごめんだというのが率直なところである。


人間、禅堂だろうが王室だろうが、ガチガチのスケジュールに縛られると性欲なぞに構っている暇がなくなるのである。


というわけで、この女神廟という、最も誰かと遭遇する確率の低い空間を王は完全に私物化していた。ここにいちいち許可を取らずとも入れるのは教皇くらいのものだろう。


当の教皇は「まぁ……………………別に問題はないですが」と複雑そうだったが。君も偉いおじさんなら分かるだろう。我々には信仰と同じく安息の時間が必要だ。

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