一生真似したなら
「……それは慰めか?」
理想的だと言われたが、俺には信じられない表現だ。ゆえに、俺はそれは慰めだと解釈した。
「いいえ、本当にそう思っています。たまに眺めていましたが、あなたは毎日毎日、同じ動きで修練をされている。私の坐禅を見ているなら分かると思いますが、わが宗派では坐禅の出来不出来より、続けることを重視しています。あなたが日々行っている修練も、私には尊いものに思えます」
「俺にはそう思えないな。確かにこれは幾度も俺を救ってきたし、軍にだって貢献した。しかし、何の評価もされない、ただ父の真似をしているだけだ」
「私がお世話になっているのは事実ですが。でも、他人の評価なんて、それは手放せるものではないですか」
三代目勇者は、優しいほほえみを浮かべながら、俺の言葉を否定した。
「『一日真似をしたら一日の真似や。それで済んでしまったら二日真似して、それであと真似をせなんだら、それは二日の真似。 ところが一生真似しておったら、真似がホンマもんや』」
「……」
「私が尊敬する師の一人の言葉です。あなたはかつて、父は本物と教えてくれましたね。しかし、それを一日も欠かさず真似し続ける、あなただって本物です」
「……それは勇者殿だって一緒だろう」
毎日毎日、同じように坐禅を続ける三代目勇者も、同じように本物だと言えるのではないか?
「実は私だって……実は坐禅したくない日もあります。長距離歩いて疲れた日、ろくに眠れなくて眠い日、捕まって連れられて行く盗賊の後ろ姿が頭から離れない日……でも坐るのです。ただ、ひたすら……」
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「……」
三代目勇者は、俺の知っている限り、坐っていることで誰かから褒められることはなかった。一緒に坐ることでありがたがられていることはあっても、その行為を賞賛されてはいなかった。
「私はほとんどの人に坐ることを勧めます。坐って欲しいというのは執着なので慎むべきですが……しかし、それは評価されたいからではありません。ただ、ひたすら坐るのです」
「……よく、分からないな」
「分からなくても、体が勝手に始めます。きっと、あなたの修練もそうなのでしょう?」
「……そうなのかもしれないな」
頭で分かった気はしなかった。しかし、修練をし続けている身体が、それを肯定している気がした。
勇者は苦笑いしながら、答える。
「最近喋りすぎな気がするのですが、私は言葉を尽くすのは苦手なのです。ここから先は、とりあえず坐りましょう」
「……いや、たまには、勇者殿が、俺と一緒に修練してみないか? 命を奪う技としてではなく、身を守るための術として」
「……」
三代目勇者は、しばらく考え込んでいたが、やがて、うなずいた。
「……槍術ですか。怪我はしませんか。……まあ、いいかもしれません。ただ、一緒に後で坐りましょうね」




