表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界禅僧はとりあえず坐る  作者: ホゲファイブ
幕間 — 本物と真似
PR
45/94

一生真似したなら

「……それは慰めか?」


理想的だと言われたが、俺には信じられない表現だ。ゆえに、俺はそれは慰めだと解釈した。


「いいえ、本当にそう思っています。たまに眺めていましたが、あなたは毎日毎日、同じ動きで修練をされている。私の坐禅を見ているなら分かると思いますが、わが宗派では坐禅の出来不出来より、続けることを重視しています。あなたが日々行っている修練も、私には尊いものに思えます」


「俺にはそう思えないな。確かにこれは幾度も俺を救ってきたし、軍にだって貢献した。しかし、何の評価もされない、ただ父の真似をしているだけだ」


「私がお世話になっているのは事実ですが。でも、他人の評価なんて、それは手放せるものではないですか」


三代目勇者は、優しいほほえみを浮かべながら、俺の言葉を否定した。


「『一日真似をしたら一日の真似や。それで済んでしまったら二日真似して、それであと真似をせなんだら、それは二日の真似。 ところが一生真似しておったら、真似がホンマもんや』」


「……」


「私が尊敬する師の一人の言葉です。あなたはかつて、父は本物と教えてくれましたね。しかし、それを一日も欠かさず真似し続ける、あなただって本物です」


「……それは勇者殿だって一緒だろう」


毎日毎日、同じように坐禅を続ける三代目勇者も、同じように本物だと言えるのではないか?


「実は私だって……実は坐禅したくない日もあります。長距離歩いて疲れた日、ろくに眠れなくて眠い日、捕まって連れられて行く盗賊の後ろ姿が頭から離れない日……でも坐るのです。ただ、ひたすら……」


----


「……」


三代目勇者は、俺の知っている限り、坐っていることで誰かから褒められることはなかった。一緒に坐ることでありがたがられていることはあっても、その行為を賞賛されてはいなかった。


「私はほとんどの人に坐ることを勧めます。坐って欲しいというのは執着なので慎むべきですが……しかし、それは評価されたいからではありません。ただ、ひたすら坐るのです」


「……よく、分からないな」


「分からなくても、体が勝手に始めます。きっと、あなたの修練もそうなのでしょう?」


「……そうなのかもしれないな」


頭で分かった気はしなかった。しかし、修練をし続けている身体が、それを肯定している気がした。


勇者は苦笑いしながら、答える。


「最近喋りすぎな気がするのですが、私は言葉を尽くすのは苦手なのです。ここから先は、とりあえず坐りましょう」


「……いや、たまには、勇者殿が、俺と一緒に修練してみないか? 命を奪う技としてではなく、身を守るための術として」


「……」


三代目勇者は、しばらく考え込んでいたが、やがて、うなずいた。


「……槍術ですか。怪我はしませんか。……まあ、いいかもしれません。ただ、一緒に後で坐りましょうね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ