護衛対象との出会い
真似することしかできない俺と、坐ることしかしない彼。
他者にああだこうだ言われるのにはうんざりしていたけど、彼はあまりにも静かだった。
付き合いが長くなるにつれ、彼が俺のことをどう思っているのか、少しずつ気になってきた。
ある日、いつもの坐禅を終えた彼に聞いてみた。
「知ってると思うが、俺は父の真似しかできない、いわば劣化コピーだ。そんな者があなたの護衛をしている。それを不満に思わないのか?」
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「はじめまして。坐ること以外なにもしていないのですが……三代目勇者と呼ばれている者です。とりあえず坐りましょう」
「……こちらこそ、よろしくお願いします。しかし、まもなく出発の時間なので、またの機会に」
「残念です。しかし、これから長い付き合いになると聞きました。一緒に坐るタイミングはいくらでもあるでしょう」
「ははは……では、行きますか」
「はい。あ、あと、私全然偉くないただの坊主なので、もし話しづらかったら敬語いりませんので」
「……そうか、では、そうさせてもらう」
三代目勇者は、聞いていた通り腰が低いようだった。勇者が敬語で、護衛がタメ口というのも変な話だが、本人がいいと言っているので言葉に甘えよう。
彼は前回の勇者とは違い、なんの武力も持っていないので、護衛が必要とのことだ。
そこで王は、様々な組織から「単独でそこそこの武力を持っているかつ、要職についていない人間」を選出し、勇者の護衛に当たらせることにした。
連合王国軍(の中の元ルンビーニ王国軍)から選ばれたのが、俺だった。
「……道中は護衛が必要なほど、危険なのですか?」
「盗賊も出るかもしれないし、可能性はほぼないが、魔族からの攻撃もあるかもしれない」
「そうですか……」
三代目勇者は、やや暗い顔で答えた。やはり、勇者といえど、危険な目に遭う可能性があるのは恐ろしいことなのだろう。
「だが、そのために我々がいる。安心してくれ、とは言えないが、任せてくれ」
「いえ、そうではなく……守ってもらう身分で、おこがましいのですが」
「なにか希望でもあるのか?」
「……私のために殺生が起こる、それが、一僧侶としては、耐え難いことなのです。これをあなたに言っても、困らせるだけなのですが」
三代目勇者は伏し目がちにそんなことを言った。三代目勇者が宗教者であることはあらかじめ聞かされていたが、敵対する者の命をも憐れむとは、信心深くないとはいえ女神協の常識で育った自分としては意外だった。
「……つまり、三代目勇者殿の危険が増しても、殺人が避けられるならそのほうがいいと?」
「はい。そんなことが可能ならですが」
俺は腕組をして考える。そして、さほど時間をおかずに、彼に返した。
「分かった。では、できるだけそのようにする」




