まるで、見習い修道士のような
過激な手段をとるべきだ。結論は変わっていないが、私は賭けに負けたことが分かるまで、彼をそのままにしておいたほうがいいのではないのか? と考えるようになっていた。
自分が救われるためだけの賭け。
「……教皇。して、あの勇者はどうします?」
そして、そんな自己中心的な感情によって選ばれる、決して正解ではないはずのカード。
「……放置でいい。少なくとも今は」
「……承知しました」
直近の大仕事がなくなった騎士修道会の長が下がっていく。
とどのつまり、私は彼そのものに賭けているのかもしれない。本当に女神がいたとして、その女神を縋る先である、「坐ること」へ導く彼に。
(……私もヤキが回ったかもしれません)
教皇に就いてからたいした年月も経っていないもこの言いぐさ。我ながら恥ずかしいものである。
しかし、本当はヤキが回ったのではなく、あの異教徒ごときに影響されて、またみずみずしい信仰心を取り戻せたのだとしたら……いや、それはないか。
やることは変わらない。一切変えさせない。百歩譲って変化があるとして、それは私個人の問題だ。私の情けない、私だけの苦しみだけの問題だ。
「とりあえず坐りましょう……ですか」
様々な彼なりの「法話」が頭にこびりついているが、特に記憶に残ったのは、結局この言葉だった。
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「お久しぶり……ではないですね。女神様。あなたがあんなに慕われる存在だとは知りませんでした。しかしだからこそ溜まる気苦労もあるかと推察します。とりあえず坐りましょう」
「あなたはまたそーやって坐らせるー……でもその様子だと、女神教の接触は問題なかったみたいですね」
「いえ、めちゃくちゃ王に怒られました。どんだけ逆なでしてくれてんの? と。あと、言われた通り女神教の教義は歪んでいるようですが、なんにも矯正できませんでした」
「何やってんの!?!? いやむしろ何したの!?!?!?!? どうせ坐っているだけじゃなかったの!?!?!?!?!?!?!?!?」
「できれば、坐るだけにしたかったのですが、言葉を尽くさないと坐らないタイプだったので。まだまだ私も修行が足りませんね」
「黙るべきところはいつも通り黙っとけこのハゲ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「いつか言おうと思っていましたが、これは意図的に剃り上げているだけですし、人の見た目を揶揄するのは神以前に人としてどうかと思います」
「黙れ!!!!!!!!!!!!!!!! 勝手に坐ってろ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「用があって呼び出したのではないですか……。まぁでも、坐りましょうか」
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二人して二炷を坐り終えた後、
「実は特に緊急の用事ではなかったのですが……実は教皇の祈りを受け取って、気になって呼んでみたのです」
「私は断頭台に送られるのでしょうか」
「いや、今回は絶対そう思っていないでしょ……そうではありません。祈りの内容は、いつもと変わらない、人類のために本日もまい進します的なものです」
「……そうですか。特に粗相をしたわけではないことが確定して一安心です。教皇に坐禅も指導できたことですし」
「ハイハイ。で、重要なのは、祈りの内容ではなく、祈りの質についてです。彼の祈りの質が、急に、まるで見習い修道士のような、まっすぐな祈りになった気がして……」




